翻訳横丁の裏路地

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昨日の会議通訳を経て

4件のコメント

昨日、突然依頼された米国企業との電話会議に通訳のサポートと言う立場で立ち会ってきた。

担当された通訳者さんは、他のある特定依頼元の通訳のみを担当されていて、技術分野も違うのだが、技術的な話には及ばないと言う前提でお願いした。

私としても、通訳者さんの通訳業務を初めから最後まで見るのは初めてだったので、とても興味深かった。

その通訳を通し、私の経験則と照らし合わせて感じた、こうすべきだな、こうした方がいいな?と思った事をまとめておく。

通訳は、人の語る言葉を、単に別言語に変換すると言う単純なものではない。

スピーチなり、プレゼンなり、会議なり、何がしかのイベントのコミュニケーションの一部として、そのイベントの機能を失わず、むしろそれを高めるべく通訳は機能する必要があると思う。

昨日感じた失敗例も上げ、羅列してみたい。

・会議前に会議に関する打合せがあるが(なければ要求する)、その場で会議に関する情報入手は勿論だが、どういうタイミングで通訳に入るかを確認しておく。
・またそれを会議出席者に事前通知して貰う。
・会議進行は誰がするのかを確認する。

概ね電話会議での通訳は逐次通訳となるが、どういうタイミングで通訳するかが、会議の進行に大きく影響する。

通訳慣れしているクライアントなら、彼らから通訳の入るタイミングを指定してくる事があるが、概ね、そう言う事を余りご存知ないクライアントが多いので、通訳側から積極的に確認した方がいいと思う。

昨日のケースでは、同通の勢いで、語り手が話している途中から通訳をされていたので、語り手の思考を遮断してしまっている事と、話の途中で相手側が話に食いつき、不要な質疑応答が発生し、会議の進行が行ったり来たりして、クライアントの思惑に沿わない進行に陥ってしまっていた。

会議における語り手の話す長さは、スピーチのような特別なコメント出しを行っている場合を除き、さほど長いものはないので、全てを話して貰い、意図確認して通訳しても遅くはない。
また、その語り手が話している途中で、他の会議出席者と議論になり、相手方に伝える内容が変わる事があるので、この通訳する間合いが会議進行にとって大切になる。

ただ、会議相手によってこの辺のアプローチは変わってくるので、やはり事前確認が欠かせない。

交渉戦略を気にしなくてはならない相手なのか、ざっくばらんに話せる相手なのかで遣り方は変わる。

・ミュートはされますか?どなたがされますか?

これは会議の開催元が気にすべき事で通訳者の責任範疇ではないと思うが、敢えて確認をしてあげる事は、プラスαの付加価値となるだろう。

昨日は全くミュートなし。こちらの話は相手に筒抜け。おまけに相手にはカタコトながら日本語を話してる方もいると言うのに、なんて自由なんだ!と感じた。

通訳は完璧なる言語変換機に徹すればいいと言う考え方もあるのかもしれない。ただ、人の介在するコミュニケーションの場に立つ通訳であるがこそ、担える役割もある筈。

言語変換を超えたコミュニケーションの通訳者、各種イベントの引き立て役と言う一歩踏み込んだ意識で、通訳と言う仕事を捉え、精進する事が大切なのではないか?と昨日の経験から思いました。それがまた、自身の差別化にも繋がるでしょう。

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作成者: Terry Saito

某社翻訳部門の中の人です。 詳細は、以下のURLよりどうぞ。 https://terrysaito.com/about/

昨日の会議通訳を経て」への4件のフィードバック

  1. >同通の勢いで、語り手が話している途中から通訳をされていたので…

    逐次通訳と聞いていたのであれば、これは反則かな?と思います。ついつい長く喋られる場合は往々にしてありますが、その場合でも勝手に喋り始めることはせず、苦しくても発言が追えるとこまで我慢する、或いは他の出席者が完全置いてけぼりになるほどに論点がシフトしそうになったら「止まっていただいてよいですか?」とお聞きしてから通訳を始めます。

    なので、

    >通訳慣れしているクライアントなら、彼らから通訳の入るタイミングを指定してくる事があるが…通訳側から積極的に確認した方がいいと思う。

    ということですが「逐次通訳」と指定を受けている場合に、「通訳が入るタイミングを確認」したことは私は無いです。
    向こうの方から勝手が分らず「どのくらい長く喋っていいですか?」と聞いて下さることはありますが。

    技術的なトピックには及ばないから…と念押しされて入った会議で、通訳さんが緊張なさっていたのかも知れませんね…。
    通訳の付加価値の下りについては、完全Agreeです。

    • コメントをありがとうございました。
      私の知る領域はとても狭いものなので、通訳の第一線で活躍されている方からコメントを頂き、本当に助かります。

      実は、クライアントからは同時か逐次かを聞かされていなかったのが実情です。聞かされた会議内容と電話会議と言う形態から、私が経験則から逐次であると判断しただけの事でした。

      > 「逐次通訳」と指定を受けている場合に、「通訳が入るタイミングを確認」したことは私は無いです。
      そうですね。仰るとおりです。私もありません。
      「通訳が入るタイミングを確認」は「同時か逐次かの確認」の間違いだと気付きました。

      通訳者さんは確かに緊張されていたのかもしれません。お話になっている英語が少々とっちらかっている印象でした。会議後に「緊張されていましたか?」と伺いましたが、ご本人は然程でもないという感じでしたので、はっきりとはしませんが。

      頂いたコメントで、少し考えさせられた事があります。お恥ずかしい話ではありますが、私はクライアントへ通訳をサービスする立場にある訳ですが、実のところ、通訳者の実力というものを正確に把握できていないという事です。今回、立ち会ったが故にその実力を知る事が出来ましたが、他の通訳者の方は分かりません。これも翻訳と同じで、英語ができれば良いという世界ではなく、通訳者としての能力の判断と言う観点でです。翻訳のようにトライアルをする訳でもないです。英語力と実務経験等から判断しているのみ。他はどうされているのだろう?

  2. 電話会議だったんですね!(同時通訳用の設備機器を使わない限り)電話会議では同時通訳は不可能です。電話会議は逐次通訳で、通訳の声がスピーカーとかぶらないようにしないと、とても聞きづらくなります。それとミュートは必須ですね。私は自分がミュートボタンを操作していました。そうしないと、こちらの会話が相手に筒抜けになりますね。電話会議では通訳が会議を仕切っていく役割もある程度必要です。

    電話会議も、商談や交渉だけではなく、ブレインストーミングのように自由に会話が飛び交うもの、プレゼンスピーチのように誰かが話し続けるものなどいろいろあります。参加人数によっても、通訳のアプローチは変わってきますので、臨機応変に対応することが求められます。電話の向こうの雰囲気が見えないので、顔が見える対面の通訳より難しいと思います。

    通訳のスキルチェックですが、難しいですよね。私が過去に社内通訳として勤務した会社や、登録したエージェントでは通訳のスキルチェックがありました。その場で準備なしに、10分ほど日本語と英語の会話をされて、それを逐次通訳しました。

    偉そうなことを長々と書きましたが、通訳の経験のあるエージェントさんは、通訳の最強の味方です。シェアありがとうございました。

    • chizukoさん、コメントありがとうございます。

      通訳者に求められるものという点では、chizukoさんのコメントは非常に参考になります。

      基本的にTV会議や電話会議など、通信設備を経由して会議をする場合で、同時通訳は有り得ないと思いますね。
      私も過去に社内通訳者としてTV会議や電話会議を数え切れないほどこなしてきましたが、やはり状況によりアプローチを変えていました。
      普通の会議で、多少の技術的な内容が入るくらいなら、通常の逐次通訳のアプローチで問題なかったですが、設計者と相手側技術者がガチの技術打合せをするのに通訳を依頼された時は、会話の内容自体を私自身が理解できないので、双方にワンセンテンス毎に区切って話して貰い、逐次型同時通訳で対応した事もありました。意外とこれが双方の技術理解をする上でスムーズな通訳手段だったのを覚えています。

      通訳者のスキルチェックってやっているところがあるんですね。遅ればせながら、何かしなくちゃと考えています。

      実際にどんなことが市場でされているのか、それを教えて頂けるだけで、本当に助かりました。

      ありがとうございます