翻訳横丁の裏路地

We can do anything we want to do if we stick to it long enough.

【過去ログ】エセ翻訳者

私の昔のブログから:

2009/1/20

最近手掛けた仕事で、本当に

<(;^ -^) マイッタ…

と感じてしまった案件があった。

いつも仕事を戴くお得意先の課長さんから、「ある技術マニュアルの英訳を内製していたのだけど、納期に間に合わなさそうなので、日本語で残っているところの英訳をお願いしたい」…と依頼を受けた。

それに加えて…「既に英訳されているところのチェックもして欲しい」と…

ほぇ!?ネイティブチェック?

…と勇んだものの、話をよーく聞いてみれば…

決してネイティブチェックなんて重いものではなく、ちょいと英語の出来を見てくれる?ってノリのようす。

今までそんな事を頼まれた事がなかったので、どこまでチェックすればいいのか?と悩んだのだけど、日頃お世話になっている課長さんからの依頼なので、結局、引き受ける事にした。

つまりは、私がいつもやってるチェッカーとしての仕事をそのままやれば良い様子。

でね…

納期が非常に短かったので、取り敢えず、英訳が必要な箇所を「既に英訳されてるところを参考にしてね」と翻訳者に依頼を掛けてから、英訳済の部分をチェックし始めたわけ…

ん!?なに言ってんだかわかんない…
(日本語原文を見る)
あぁ…そういう意味か…これ、解釈間違ってるし、冗長な英語だなあ…
げ…これ、口語だよ…
うわぁ…これ、完全な誤訳だっ!…
ふぅ…直訳だわ

2頁程チェックしたところで文面は赤、赤、赤…

( -o-)=з はぁ…

こりゃ、偉いものをしょい込んでしまったかも…と考えているところに、英訳を依頼した翻訳者の方からメールが入り、既に英訳された部分の英語が酷く、「参考にするのは危険」と連絡が入る。

うちの長老に見せると「なんじゃ?こりゃ…断ったら?」…と冷たい言葉を頂戴する。翻訳者さんと電話連絡を取って対処を決め、今度は依頼元の課長さんと相談。修正まで入れると時間がかなり掛かりそうなので、納期の延長と費用負担を了解戴く。

さて、私がこの記事でお伝えしたかったのはここからのお話。

勝手知ったる他人の台所事情に探りを入れてみれば、この英訳を担当したのは、依頼元の部署で働く「翻訳派遣社員」。少々年齢をお召しの男性で、海外勤務の経験を持っていて、英語にかなりの自信をお持ちの方とか…。何しろ、その職場で開催する国際会議の通訳者の英語を、傍でチクチク指摘して、通訳者を怒らせたというツワモノらしい…。そんな方なので、依頼元の人達は彼の仕事に文句も言えない状況のようで、持て余している様子が垣間見られる。

そういう背景情報を頭に入れた後に、彼の訳文を読むと色々な事が見えてくる

海外駐在員が社内文書で使うにはOKな英語だけど、口語だろうが文語だろうが、どんな文体がいいかなど無視して、とにかく「英語になっていれば良い」という「意識」が見えてくる。まぁ、表現悪く言えば、彼は「英語を知ってるだけで翻訳を知らない」翻訳者だと思われると言うこと。

私の中では、こういう方は「エセ翻訳者」もしくは「なんちゃって翻訳者」と呼んでいる(笑)

世間一般の意識が「英語が出来れば翻訳が出来る」という考えで大勢を占めているところは、致し方ないが、翻訳者を派遣する派遣会社がそういう意識しか持っていないところに大きな問題がある。翻訳会社は人材の職務経歴と英語力で判断して派遣先に「翻訳者」を派遣して来ているようだが、これではハッキリ言って、不十分だと私は思う。

世間的に認められ、客観的に翻訳の実力を計るものが未だないのも問題だが、せめて翻訳の実力を把握した上で、翻訳派遣社員登録すべきだろう。

こういう質の低い翻訳者の供給が、翻訳というものへの世間的な認識を低くしているし、翻訳コストの低迷に繋がっているのではないだろうか?

作成者: Terry Saito

某社翻訳部門の中の人です。 詳細は、以下のURLよりどうぞ。 https://terrysaito.com/about/

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