翻訳者が仕事を請ける際、翻訳会社やクライアントから提示される単価の意味を考えているのだろうか?
先日行ったフリーランス翻訳者アンケートの回答を眺めながら、そんな疑問が頭に浮かびました。(アンケートのまとめは、来週公開されるJTF翻訳ジャーナル第279号に掲載予定)
報酬として支払われる金額は、何に対する対価なのか?を明確にしないで仕事を請けているように感じる回答が散見されました。「翻訳作業の対価」と捉えている方が(そう考える根拠は別として)ほとんどですが、その確認がされておらず、後になって翻訳会社/クライアントとの認識にズレが生じ、不満を感じる結果となっているようです。
単価の話はSNS上でも良く話題になりますが、その数字の意味する基準が違えば、単純な比較はできません。単価10円と言っても、例えば「翻訳作業のみ」なのか「翻訳作業と用語集作成と編集作業」なのかで、意味が全く違ってきます。
報酬額が何の作業に対するものなのかを、受注時に合意しておくことが大切だと思います(もっと言えば、責任の範囲をハッキリさせる)。長年の取引があり信頼関係ができている取引先なら、そういった確認プロセスも不要ですが、取引を始めたばかりの新しい取引先や担当者が変わったばかりの取引先は、受注時の条件をはっきりさせて合意形成してから仕事に着手するという姿勢が大切だと思います。
そのためには躊躇せず、数字(報酬額)の意味をハッキリさせること。不明な点は取引先に確認すること。単価に含まれない作業があるなら、その作業の取り扱いや単価を確認すること。納品仕様を確認すること。受注時にしっかりと仕様と条件を合意しておけば、納品後に仕様を逸脱する要求を取引先がしても、追加作業として費用請求したり、断るなどの対処ができるでしょう。