翻訳横丁の裏路地

We can do anything we want to do if we stick to it long enough.


翻訳通訳業界調査ご協力のお願い(9/15まで)

日本翻訳連盟が、第5回目となる翻訳通訳業界調査を実施します。

2013年の第4回調査から従来の法人対象の調査だけではなく、個人翻訳者を対象とした調査も追加になり、初めて個人翻訳者の受注実態が分かるようになりました。今回の第5回調査では、2016年4月にJTFの定款に「通訳」が追加されたのを受け、通訳に関する設問も追加になっています。

我々の働く翻訳通訳業界の実態をより正確に把握できるよう、是非、業界調査アンケートにご協力をお願いいたします。

日本翻訳連盟通訳翻訳業界調査アンケート

http://www.jtf.jp/jp/useful/report.html

業界調査結果は、翻訳業界のみならず、広く産業界でも参照される「白書」としてまとめられます。業界調査アンケートにご協力いただいた方(メールアドレスをご登録いただいた方)には無償で(PDF版が)配布がされますので、是非、ご協力ください。


「翻訳品質評価方法に関する業界アンケート」を読む

日本翻訳連盟の標準スタイルガイド検討委員会にJTF翻訳品質評価ガイドライン検討部会というサブグループがあり、「翻訳品質評価方法に関する業界アンケート」を実施されました。その結果が日本翻訳連盟のホームページに公開されています。

2016JTF翻訳品質評価方法に関する業界アンケート結果報告書

ありがたいことに、無料で公開されていますので、是非、ダウンロードしてお読みいただきたいと思います。

ちなみに私もこっそり回答しています(別にこっそりで無くてもいい)。質問への回答方法は、概ね準備された回答からの選択式でした。早速ダウンロードして印刷をして、土曜の午後のまったりとした時間にキンキンに冷えたノンアルコールビールを飲みながら読ませていただきました。データを眺めているといろいろと面白いことが分かってきます。ここでは、私の勝手な解釈を書き連ねたいと思います(はい、私の個人的な見解です)

5.御社では「翻訳品質」とは何であるとしていますか。

この質問に対する回答を眺めていると、「納品物の完成度」が一番多いのですが、誰基準の完成度かは分かりません。他の回答を見ると「最終読者による評価の高さ」というものがあるものの、それを除外した回答から推測すると、回答者の意識の中ではほぼ「発注者に品質の主導権がある」という考えに基づいた回答に読めます。

6.訳文の品質評価をしていますか
7.質問6で「はい」の場合、何の目的でしていますか

訳文の品質評価をしていないのが10%あることに素直に驚きましたが、回答者の1/4であるクライアント企業の回答であろうと推測します。翻訳会社で訳文の品質評価をしないということはないと信じたい。(品質保証体系→品質保証工程がないということですから)

目的は、翻訳の各課程での品質評価のようです。「新規市場/顧客の開拓」については、私にはどう関連付くのかが良く分かりません。「品質評価しています」ということが宣伝文句として営業に有効であるということだろうかと想像しています(そういう営業トークには良く遭遇しました)。翻訳の工程評価のためという回答がないのは選択肢になかったからかもしれません。

8.どれくらいの頻度で品質評価をしていますか

この質問には、ハタと困りました。多分、「品質評価」の言葉の定義が質問者と回答者で違い、また個人個人によってバラバラなんだろうと思います。品質評価すべてをひっくるめるならば、「案件ごとに毎回」という回答ばかりになったのではないかと推測します。実際のところ、品質評価も対象により分類されており、それぞれがそれぞれの頻度で実施されているので、一概に答えづらいところもありますね。

9.どのような方法で翻訳の品質を評価していますか
11.質問9で「会社独自の手法」または「その他の手法」の場合、差し支えない範囲で内容を記入してください。

会社独自の手法」が圧倒的でしたね。「業界の手法」の認知度が低いのか、もしくは、それだけでは翻訳の品質評価を満足できないということだと思います。質問11の回答は、とても面白い内容になっています。手法としながらも手段が多いは、言葉の定義の違いが影響しているのでしょう。

回答内容を眺めていると、「翻訳」と「それに付随する作業」を「翻訳の品質評価の対象」として書かれているように思います。一般的に「翻訳の品質」とはそういう認識であるということだと思います。私は、そういう捉え方をしておらず、「翻訳」「それに付随する作業」という2つに切り分けて考えています。

16.訳文中の問題点(エラー)を分類して、項目ごとに評価をしていますか。
17.質問16で「はい」の場合、回答者が主に担当している分野では何を項目にしていますか。

質問17の回答は「その他」を除くと4項目です。スコアだけを見て判断すると「流暢さ」は一番優先順位が低いということになります。この結果は「あぁ、やっぱりね」という感じです。誤訳無く意味正しく反映されている「正確さ」、そして用語集やスタイルガイドの適用具合が重要視されているということだと思います。この事は、質問18の「どの項目をどの程度重視していますか」の回答でも現れていますね。(5:最も重要〜1:重要ではない)

流暢さ:3〜4
正確さ:5
用語集:5
スタイルガイド:4〜5

この辺り、回答者の翻訳分野が影響しているのではないかと推測いたします。

23.現在の品質評価方法を改善する必要性を感じていますか。
24.品質評価方法を部分的または全面的に改善したい場合、どのように改善したいと思っていますか。

部分的にせよ全面的にせよ、改善したいと考えているのは90%。現状の方法では不十分であるという認識の表れだと思います。「新しい品質評価方法を導入したい」「…十分に機能しないので…」「評価方法がバラバラなので…」など、いろいろと悩みがあるようです。現状、決定打といわれる方法が業界になく、独自に検討しているのが実情だと思うので、新しい方法があるならすがりたいというのが本心でしょうか。

25.クライアントと翻訳会社との間で、納品物の品質を巡るトラブルやクレームはありますか

この回答は「100回の納品で」何回程度トラブルやクレームがあるかという選択式のものでしたが、1%以上あるケースが6割も占めているのには驚きました(1回がどこに含まれるのかは不明だが(笑))。ましてや、6%以上が1割もある。私の感覚からするとこの6%のレベルは緊急事態です。会社を挙げて早急に何か対策を取らなくてはならないレベルに思います。

 

29.業界共通の品質評価ガイドラインがあると、翻訳会社とクライアント間で品質に関する合意形成に役立つと思いますか。

場合分けを含め、9割程度が役立つと考えておられます。

どのような内容で品質評価ガイドラインが表現されるかにもよりますが、私も業界共通の品質評価ガイドラインができるのなら、欲しいと考えています。

私は「翻訳」と「それに付随する作業」という切り分けで考えていると上述しましたが、この切り分けでの「翻訳」の部分にガイドラインが欲しいのです。後者の作業の部分は、単純で明確なので基準化しやすく、数値化して管理をすることも比較的容易です。翻訳業界の「業界の手法」といわれるものも適用できるでしょうし、それ以外の製造業で使われている品質評価手法も適用できそうです。
私が長年悩んでいるのは、前者の「翻訳」のガイドラインです。アンケートで「会社独自の手法」として回答されているものを見ても、この翻訳部分は「人依存」ですので、これを明確で数値化可能な評価基準と評価手法を業界標準としてガイドライン化できるなら、画期的なことだと思います。

そういう部分で、とても期待している活動です。


テリラジ拡大版放送決定「翻訳者の真実」

JTF日本翻訳ジャーナル279号特集記事「翻訳者の真実」のフォローアップ企画です。

誌面の関係で紹介できなかった翻訳者の声、私が伝えきれなかったことをテリラジ拡大版として放送いたします。

視聴される前に、ジャーナル誌面の特別記事を一読しておいていただけると、放送内容が理解しやすいと思います。

かつてはこういうコンテンツは USTREAM を使って放送をしておりましたが、今回は TwitCasting を使用してテリラジ枠で放送します。当番組は、なるべく多くの翻訳関係者の皆さんにライブで聴いていただき、その場のタイムラインで議論や意見交換をしていただけることを期待していますので、スマホさえあればお聴きいただけるラジオ放送にする予定です。(電車の中でも聴けます。)
それから、いつものことですが、番組中における私の発言は、あくまでもひとつの考え方、切り口ですので、多くの方の突っ込みやご意見をタイムラインに流していただけると嬉しいです。

では、皆さんのご視聴とタイムラインへの参加を楽しみにしております。


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JTF翻訳ジャーナル No.279 2015年 9月/10月号公開

  JTF翻訳ジャーナルWeb  

日本翻訳連盟の「JTF翻訳ジャーナル」9/10月号が公開されました。今号の私のコーナー「翻訳横丁の表通り」はお休みです。

今号の読みどころ:

特集記事「翻訳者の真実」

7月にTwitter/Facebook を通してフリーランス翻訳者さんにお願いしたアンケート結果のまとめ記事です。

無料でお読み頂けますので、皆さん、是非、お気軽にアクセスしてお読み下さい。


単価という数字の意味

翻訳者が仕事を請ける際、翻訳会社やクライアントから提示される単価の意味を考えているのだろうか?

先日行ったフリーランス翻訳者アンケートの回答を眺めながら、そんな疑問が頭に浮かびました。(アンケートのまとめは、来週公開されるJTF翻訳ジャーナル第279号に掲載予定)

報酬として支払われる金額は、何に対する対価なのか?を明確にしないで仕事を請けているように感じる回答が散見されました。「翻訳作業の対価」と捉えている方が(そう考える根拠は別として)ほとんどですが、その確認がされておらず、後になって翻訳会社/クライアントとの認識にズレが生じ、不満を感じる結果となっているようです。

単価の話はSNS上でも良く話題になりますが、その数字の意味する基準が違えば、単純な比較はできません。単価10円と言っても、例えば「翻訳作業のみ」なのか「翻訳作業と用語集作成と編集作業」なのかで、意味が全く違ってきます。

報酬額が何の作業に対するものなのかを、受注時に合意しておくことが大切だと思います(もっと言えば、責任の範囲をハッキリさせる)。長年の取引があり信頼関係ができている取引先なら、そういった確認プロセスも不要ですが、取引を始めたばかりの新しい取引先や担当者が変わったばかりの取引先は、受注時の条件をはっきりさせて合意形成してから仕事に着手するという姿勢が大切だと思います。

そのためには躊躇せず、数字(報酬額)の意味をハッキリさせること。不明な点は取引先に確認すること。単価に含まれない作業があるなら、その作業の取り扱いや単価を確認すること。納品仕様を確認すること。受注時にしっかりと仕様と条件を合意しておけば、納品後に仕様を逸脱する要求を取引先がしても、追加作業として費用請求したり、断るなどの対処ができるでしょう。