翻訳横丁の裏路地

We can do anything we want to do if we stick to it long enough.


JTFジャーナルにセミナー報告が載りました。

2017年5月22日に開催された第一回JTF翻訳品質セミナーの報告が、JTFジャーナル最新号に掲載されました。

JTFジャーナルNo.290:
2017年度第1回JTF翻訳品質セミナー報告
「誰も教えてくれない翻訳チェック ~翻訳者にとっての翻訳チェックを考える~」

報告者の三浦さんが、非常にうまく要点を押さえた報告にまとめてくださいました。
(三浦さん、ありがとうございました。)

このテーマによる関東地区での講演は、先日のJAT総会基調講演が最後となりました。なお、関西地区では、来年頭にお話しする機会ができそうです。正式な発表がありましたら、当ブログでもアナウンスいたしますね。


顧客の勝手な判断

翻訳会社から納品される翻訳物のチェックをするのに「チェックしやすいから」「訳抜けが見つかるから」というチェックする側の視点のみで、対訳表のような原稿を作り、空欄の訳文列に翻訳文を入力せよという作業指示で翻訳発注するクライアント企業があるそうです。

翻訳する側の都合は、まったく無視されています。

昨年の翻訳祭で講演した際、同様の質問をいただいた記憶があります。「チェックするときに対訳表にするのであれば、翻訳する前に対訳表形式にして、そこに翻訳すれば効率的ではないか?」という趣旨の質問だったと記憶していますが、翻訳の質に影響するから避けるべきという回答をいたしました。

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翻訳品質保証マトリックス

昨年の翻訳祭、および一昨日開催された第1回JTF翻訳品質セミナーで配布した資料「翻訳者の翻訳品質保証マトリックス」ですが、当ブログで少し補足説明をしておきます。

翻訳会社でやっているであろう「翻訳品質保証計画」や「翻訳品質保証体系」の作成、および「翻訳品質保証工程」の設定で必要となる品質管理項目(品質保証項目)を抽出するために、私は「翻訳品質保証マトリックス」をひとつのツールとして使っています。マトリックスには、翻訳に関わるすべてのものを抽出し、それぞれをどう品質保証するかを定義して記入していきます。その際、項目抽出や保証条件定義のキーとして利用しているのが、5Mや5W2Hです。

翻訳フローの初めから終わりまで、例えば「問い合わせ」を受けてから「納品」「検収」に至るまでに関わるすべてものを、5M(Man, Machine, Material, Method, Measurement)の視点で抽出し、それらが翻訳品質に影響を与えるかの検討と、与える場合は、それらをどのように保証するかを5W2H(What, Who, Where, When, Why, How, How many)を使って定義します。マトリックスを埋めていくことで、翻訳品質へ影響を与えるすべての因子が明らかになり、それらを保証する方向性が見えてきます。 続きを読む


JTF翻訳祭 T4S2 へ登壇します #jtf_t4s2

11月29日に開催される日本翻訳連盟主催「JTF翻訳祭」の申込締切(11/22)まで、あと一週間を切りました。

今年は企画実行委員として参画しておりますが、同時に、以下のセッションで登壇させていただきます。

トラック4セッション2
誰も教えてくれない翻訳チェック
~翻訳者にとっての翻訳チェックを考える~

毎度毎度、タイトルの付け方にセンスの無さを感じます(笑)。

今年は久し振りに単独での講演となります。内容はタイトルから想像いただけるように、翻訳チェックについてです。私が社内翻訳者として翻訳に携わるようになり、その後、翻訳会社の中で翻訳を扱うようになって、いつも持つ悩みは「翻訳チェックはどうあるべきか?」ということです(翻訳会社的視点でいえば、どう翻訳品質を保証するかということ)。周りを見渡しても、あれこれ調べてみても、何か共通したガイドラインのようなものがあるわけでもなく、各人各様の考えで翻訳チェックを行っているようす。

そうなると、自分で考えざるを得ない訳で、製造業で培った知識と経験をベースに、自分なりの翻訳チェックを考えて実践しています。

この我流の翻訳チェックの考え方は、拙作のワードマクロ「WildLight」のセミナーの中で何度か触れてきました(WildLightが誕生した背景であるから)。私の中では至極当たり前な考え方であるが故に、他の方の役に立つものではないと思っていたのですが、私の話を聞いて何かを掴み取っていただいた方からは「過去に聞いたことがない」「過去の疑問が解消された」「感銘を受けた」などのポジティブな反応をいただき、今年の翻訳祭では、この翻訳チェックだけを題材にセミナーをさせていただこうという決心に至りました。

今回のセッションは、私の我流の翻訳チェックをひとつの例として、チェックの考え方や考慮すべき点、フローを組む上で考えること、そう考えるに至った背景などをお話しする予定です。

ご興味をある方は聴講いただけますと有難く思います。

なお、私のセッション会場が、以下の通り変更になります。(このセッションのみの変更です。)

旧会場:5階 穂高の間
新会場:4階 鳳凰の間

JTFから公式に会場変更のアナウンスがされると思いますので(当日会場でもご案内します)、お間違えのないようにご注意ください。
(この変更に伴い「パネルディスカッション 使われないツールの使い方 ― 十人十色のツール論」の会場が「5階 穂高の間」へ変更となります。)

お蔭様で、参加者事前アンケートから、私のセッションの聴講希望者数が昨年の戸田奈津子さんの講演の希望者数を超える勢いらしく(笑)、かなりの数になると予想されるため、異例の会場変更となりました。参加いただく皆様にはご迷惑をお掛けしますが、ご了承のほどお願いいたします。


翻訳にTOEICは関係ない

翻訳関係者の方は「何をいまさら当たり前のことを」と仰ることでしょう。過去記事を探してみたら書いていないようなので、記事にしておきます。

「TOEIC XXX以上の翻訳者を…云々」を翻訳品質の高さの代名詞に使っている翻訳サービスを見掛けるたびに、「それ?相関取ってないだろ?」とツッコミを入れています。ただ、一般の人には「TOEIC=語学力=翻訳の質の良さ」という大きな誤解があるので、そう捉えられるのを狙っての宣伝文句ですよね。

昔、社内翻訳者を束ねていた頃、新規採用に応募してくる翻訳者のTOEICスコアとトライアル翻訳評価の相関データを採ったことがあります。サンプル数は25名程度だったと思いますが、それでも相関関係は充分に判断できるデータでした。そのデータから(当時)判断したことは以下の通り。

  • TOEIC 760以上は、TOEICスコアと翻訳の質に相関関係は無い。

散布図にするとはっきりと分かるのですが、全く相関が見えません。それ以降、TOEICスコアはまったく重要視しなくなりました。

翻訳を発注するクライアント企業の方は、この点を知っておいて欲しいものです。