翻訳横丁の裏路地

We can do anything we want to do if we stick to it long enough.


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企業内で Microsoft Wordの教育を

日々受領する翻訳案件。原稿のファイル形式にはいろいろなものがありますね。マイクロソフトオフィス製品がメインになりますが、ワード、エクセル、パワーポイント、そしてときどきPDFやHTMLなども原稿ファイルとして提供されることがあります。

そういった原稿を眺めていると、ワードで作成した方が遙かに効率的で、その後の文書管理や改訂もやりやすいだろうと思うものに出会います。例えば、翻訳者さんの間でときどき話題になるのは、エクセルシートを方眼紙のようにレイアウトして作成された文書や、パワーポイントを使って作成された文書などです。エクセルを使って規程書や仕様書を作成したものをよく見ますが、1頁が1シートになっていて、おまけに1文章が数セルにボキボキ折られて入力されている。文章の修正や追加が入れば、そのセル内の文字列を修正して行の長さを目視で合わせながら、セル間で文字をカットアンドペースト。さらに、章でも移動になるものなら、その章を他のシートへ移動して1頁の長さを揃えるために他の部分をさらに移動して、そしてさらに…といった具合に複数シートが修正の対象となったりします。また、画像を入れたいからと、わざわざパワーポイントを使って文書作成されているクライアントもいます。すべての文章がテキストボックスに入っているわけで、これも改訂が入ると大変更が必要となり、どちらも作成や改訂に「やたらと工数の掛かる」文書になります。

ワードで作成した方が効率的であるにも関わらず、エクセルやパワーポイントを使用して文書作成してしまう理由には以下のようなものがあるのでしょう。

  1. 昔のワープロ世代はワードが使いづらく感じていて、つい、エクセルやパワーポイントを使ってしまう。(最初から学ぶ気持ちがない。もう歳だし、新しいことが頭に入らないもん)
  2. ワードの使い方を知らない。学ばない。(学ぶべきものという意識もない。)
  3. スペースやタブ、そして文字を打ち込めば、とりあえず見た目は文書になるから、他の機能を知る必要がない。だから、ワードを学ぼうという気持ちにならない。(取りあえず使えてるからいいぢゃん)
  4. ワードを学ぶ機会が無い。(学ぶ必要性は認識してるけど、その機会がない。)
  5. 文書作成にルールがない。(何をやったって自由だ。好きなやり方でやる。)
  6. ライティングの教育がない。(別に行の途中で改行したってOKでしょ?)

もし、ワードの基本的な機能を知っていれば、こういった「やたら工数の掛かる」ファイル形式を選んで文書作成することもなく、ワードで作成されるのではないかと思うのです。

あるお客さんとこの件で議論をしたことがあります。将来、文書改訂があることを分かっている文書や、翻訳が必要となる文書ならば、目的に合わないエクセルやパワーポイントの使用は避けて、ワードによる文書作成がされるよう社内教育された方が良いですよとアドバイスしました。しかし、お話を伺ってみれば、企業内にマイクロソフト製品の研修制度を持っていても、エクセルやパワーポイントの研修はあってもワードの研修は無いのだそうです。このことは逆に捉えれば、企業内で文書作成や文書管理に掛かる工数(費用)を認識しておらず、また、そのことの重要性を認識していないということになります。結構、根の深い問題なのかもしれないと感じました。

企業内で文書を作成・管理する部門の方にお願いしたい。文書作成する全社員にワードの研修も是非受けさせて欲しい。もしくは受講できるワード研修を提供して欲しい。文書作成の工数が削減されるだろうし、改訂などによる管理工数も削減することでしょう。さらに翻訳に掛かる費用も安くなるはずです。是非、ご検討を。

 

[関連記事] エクセルを文書作成に使うな


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ディスカウントしてください

翻訳者さんへ仕事を依頼する際、毎回、ディスカウントを要求する翻訳会社があるそうだ。

これ、どういう意味に捉えるべきでしょうね?

双方の合意に基づいて設定された単価があるにも関わらず、毎回値下げを要求するというのは、実質的な単価下げと同じです。

慢性的にディスカウントを要求する翻訳会社は、翻訳者の仕事の質などまったく無視だということでしょう。「あなたの仕事を評価なんかしません」ということではないでしょうか?どんなに良い品質の翻訳を納めようとも、フットワークよく対応しようとも、それらの仕事は価値が無く、値引きに値すると言ってるのでしょう。

そういう翻訳会社の頭の中は「あわよくば安く仕入れてやろう」という考えで一杯なのでしょう。頼まれると断れない、気の弱い翻訳者を食いものにしようという魂胆なのかもしれません。もし、翻訳会社の経営者が部下に対して、毎回のディスカウント要求を指示しているとしたら、なんともお粗末な理念を持った経営者だろう?ということになります。そんな会社と継続的に取引するのは、避けた方がいいでしょう。

昔、以下のような記事を書きました。

相手との関係やプロジェクトによって対応が変わることもありますが、そういうったものが無いのであれば、むやみやたらに値引きするものではありません。値引き要求に対して妥当性のある説明もなく、頻繁にディスカウントを要求する翻訳会社は、何かがおかしいのです。そういう値引き要求に安易に乗らず、きっぱりと拒否しましょう。その対応によっては、継続した取引は考え直した方がいいでしょう。


ミニマムチャージを知っていますか?

先日、Twitterでミニマムチャージが話題になりました。そして驚いたことに、ミニマムチャージという言葉を聞いたことがないという翻訳者さんがいるという事実を知り、私自身、衝撃を受けました。

ミニマムチャージとは、いろいろなやり方がありますが、例えば文字数やワード数、金額で決めた最低受注単位のことです。

私は、翻訳者にもミニマムチャージが設定されていることを当たり前と思っていたし、市場でもそういう対応がされているのだろうと思い込んでいました。しかし、実態はそうではなさそうです。いったい、どうなっているんだろう?と思い、Google Formを使い、Twitterでアンケートを採ってみました。その結果は以下の通りです。母数は少ないですが、いただいた意見は参考になるものばかりです。

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「ミニマムチャージの設定がない」が全体の2/3を占めていることに驚きです。

その他、コメントに寄せられた意見:

  • 請求額が3000円以下のときは時給計算としてくださるエージェントあります(実質上のミニマムジャージが2時間分の5000円)
  • 打診を断る自由があるような関係なら、ミニマムチャージはなくても実害はない。強引にお願いされて引き受けざるを得ないような関係なら、絶対設けるべき。ただ、翻訳会社側の姿勢としては、翻訳者を尊重する観点から設けておくのがビジネスマナーだと思います。
  • 少量案件はお断りしているので、特にミニマムチャージの設定の必要性を感じたことはありません。
  • ほんの1行や数単語で頼まれることが少なくなく、結局前後を読まないと適切な翻訳ができないのでなんだかなーと思います(英語の論文に含まれる1行だけを頼まれ、論文の要旨とその段落すべて読んだ)。前後の文脈なしで1行や数単語を渡されるのも困ります。
  • 設定するのが当然だということを初めて知りました。みなさんどれぐらいの設定なのか興味あります。
  • 数日前にどなたかのブログでミニマムチャージの話が書いてあり驚きました。そんなものがあるのですね。
  • 翻訳会社側の設定はありませんが、通常のビジネス文書中心の翻訳会社から料金を尋ねられ、こちらで設定したことはあります。
  • ミニマムチャージの設定がないままに、例えば英日60ワードとか、日英10文字なんていう仕事もあります。しかし、常に仕事が来ていて1カ月トータルすると(ある程度の金額になるので)ミニマムチャージ設定はいらないと思っていました。しかし、今月はすごく少ないので、この話を聞いてちょっと真剣に考えるほうが良いと思い始めました。

翻訳というお仕事の対価計算は、概ね原稿か訳文の文字数やワード数に単価を乗じて行われることが多いですが、翻訳の作業に費やす工数に完全に比例している訳ではありません。

翻訳に絡む作業はいろいろありますが、例えば(1)事務処理工数は案件毎に一定して発生するものですし、(2)調べものや検証に掛かる工数も初期に大幅に工数が掛かり、そして分量に緩く比例して上昇するのではないかと思います。仮に20文字程度の案件だったとすると、(1)(2)の工数が全体工数のほとんどを占め、時間当たりの売り上げが非常に低いものになってしまうでしょう。

分量少:[事務][調べ物][翻訳]
売上額:--------

分量多:[事務][-調べ物-][—翻訳—]
売上額:----------------

こんなイメージではないかと思います。分量が少ない案件ばかりを受けていると、投資する時間の割に売上が上がらないということになります。また逆に見れば、ミニマムチャージ無しに少量案件ばかりを発注する翻訳会社は、実質的には「単価下げ」を行っているのと同じ意味になります。(そして翻訳会社はクライアントに対してミニマムチャージで販売してれば、かなりの粗利を稼いでいることになります。)

本来は翻訳会社側が考慮して、翻訳者に対するミニマムチャージを設定すべきと考えますが、そういった相手の判断に依存するのではなく、翻訳者が自己防衛策として考えておくことも大切ですね。

対応方法はいろいろあるでしょう。ミニマムチャージを設定して仕事を請ける方法もあれば、ある基準以下の案件は請けないという方法もあるでしょう。上述のアンケートにある意見も参考になります。

  • 翻訳分量で決める。例えば原稿200文字をミニマムチャージとする。(それ以下の分量は全て200文字として支払いされる)
  • もしくは、その基準を満たさない物は受注しない。
  • 最低受注金額を決める。例えば、2,000円(税別)などに設定して、それ未満の案件は請けない。

当然、四角四面に適用するというわけではなく、例えば定期案件をいつも安定した分量で依頼いただいていて、その関連件で小さな物が依頼されるようなケースなら、普通に請けてあげるなどフレキシブルな対応が必要ですね。

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翻訳祭終了報告 #2016JTF

今さらの報告になりますが、JTF翻訳祭が終了しました。

今年は、企画実行委員として翻訳祭に関わり、気心の知れた仲間達と作り上げてきました。また、SNSをはじめ多くの翻訳者の仲間が盛り上げてくれました。

昨年、私が感じた「もはやJTF翻訳祭は法人のもの」という危機感を、多くの個人翻訳者の仲間の協力によって、元に、いや、それ以上に戻せたと思います。個人翻訳者の参加数倍増、初参加の方が多くいたと聞いています。本当にありがたいことだと思います。ご参加いただいた皆さん、ありがとうございました。

一方で、頑張り過ぎて欲張り過ぎてやり過ぎ!という印象もあり(笑)、予測を超える参加者の数と見たいセッションの重複。参加いただいた皆様には、とても窮屈な思いと、不便をお掛けいたしました。ここにお詫びいたします。

このモメンタムを来年へ引き継いでいきたいと思います。運営的にマズかったことも、皆さんからいただいたご指摘も、次回の翻訳祭に生かしていきたいと思います。今年の翻訳祭に懲りず、来年も是非ご参加いただけたら嬉しいです。

さて…私が登壇したセッション「誰も教えてくれない翻訳チェック ~翻訳者にとっての翻訳チェックを考える~」ですが、内容は別として、前代未聞のセッションとなってしまいました。

座席定員の二倍以上の方々に入室いただき、会場は、壁側はもちろん、通路も登壇席の前のスペースもすべて人で埋め尽くされ、立ち見や体育座りで聴講いただいた方が多数。300部用意していただいた資料も不足する事態で、聴講いただいた皆様には、本当にご不便をお掛けしました。申し訳ありませんでした。(私のセッションの配布資料は、参加者の皆様にはダウンロードサービスで入手可能になる予定です。)

登壇席から眺める会場は、今までに経験の無い凄い状況で、流石の私も緊張しました。まだ翻訳祭のアンケート結果を受け取っていないので、私のセッションをどう受け取っていただいたのか分からないのですが、参加いただいた方の中には、すでにブログ記事にまとめて公開していただいている方もいて、それらの記事を読む限り、お伝えしたかったことが伝わっていると感じました。

ですので、私があれこれ書かず、これらのブログ記事へリンクを張らせていただきます。

今年は、本当に異例尽くしの翻訳祭となりました。来年も良い翻訳祭にするぞ!

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翻訳というおしごと

著者の実川元子さんがご自身のブログ「Glamorous Life」で紹介されましたので、私のブログでもご紹介させていただきます。

翻訳というおしごと」 実川元子著

どういう本なのか?は実川さんのブログ記事を読んでいただくのが一番宜しいと思います。その記事に書かれているとおり、私もインタビューしていただいたひとりでして、その時の話の内容をこの本でいくつか取り上げていただいています。

有名な翻訳者さん達の名前の中に私の名前を見るのは、どうも心が落ち着きませんが、本当に光栄なことだなぁと感じています。もし店頭で見掛けましたら、手にとって見てみてくださいね。

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マッチ率による価格は破綻

最近ときどき耳にするのは、本来、翻訳支援ツール(CAT)の使用が許容できると言われているマニュアルなどの文書種類を逸脱して、プレゼン資料やコピーライティングといった、同じ原文でも表現の仕方により訳文の幅が大きく違ってくる文書種類にまで、CAT適用を要求してくる翻訳会社やクライアントが増えてきているらしい。(翻訳支援ツールの誤使用)

これは、CAT使用が可能だと判断する立場である翻訳会社の翻訳的無知が原因ですが、中の人間の入れ替わりとともに、本来の考え方が忘れ去られているのだと思います。

マッチ率とレートには前提となる文書種類があるはず

私は以前から疑問に思っているのは、「訳文の再利用」という考えがあるからこそのマッチ率による価格設定だと思うのですが、「果たして本当に再利用できているのか?」ということ。商品名称や部品名称といった固有名詞が違うだけであれば、概ね、その単語を置き換え、必要に応じて冠詞と単複を合わせ込めばオリジナルの訳文を「再利用」できる(のか?ほんとに?)のでしょうが、それを超えると「再利用」ではなく「再翻訳」に等しいのではないか?と感じています。もちろん、マッチ率はそういったものの登場頻度を鑑み、平均化された数値だと想像していますが、その平均値の前提となるのが適用する原稿の文書種類だと考えるわけです。

つまり、マッチ率による価格設定自体も、適用する文書種類によって違ったものが設定されていて然るべきで、前述のプレゼン資料などのケースなら、「マッチ率は何%だろうが100%の支払い」という価格設定をせざるを得ないでしょう。

無管理TM故にマッチ率は破綻。再利用可能率で考えるべき?

どうも、言葉に惑わされている気がします。「マッチ率」は「再利用可能率」と頭の中で置き換えて考えた方が良いのかもしれません。マッチ率というとTMと原文のデータ的に合致した割合を意味しますが、再利用可能率として考えると、合致したTMの訳文が再利用可能かどうかの率ですから、全く意味が変わってきます。そもそもTMの訳文が100%マッチしようとも再利用できるかどうかは不明です。ましてや、TMの管理がされていなければ、訳文が再利用できる可能性はかなり低いだろうと思うのです。(これ、クラウド系CATだと野生の王国なんぢゃ!?)

翻訳会社自身がマッチ率によるレートを破綻させている

翻訳会社がCAT使用の前提条件を忘れ、あらゆる文書種類へ適用することを始めた時点で、マッチ率レートがひとつでは破綻する状況を作り出しています。今後、マッチ率レートはひとつではないという認識に切り換えて、翻訳者さんは交渉してみるのも良いと思います。

プレゼン資料のCAT使用案件がきたら、「このマッチ率レートは、どういう文書種類を対象としていますか?」と聞いてみると面白いかもしれませんね。「統一レートです」と言われたら、「それ、おかしいでしょう?」という話になる。私だったら、マッチ率関係なく翻訳料は100%お支払いするね。過去訳の再利用など全く目的とせず、訳後のレイアウト調整を簡略化するとか用語集適用という利を取る意味でのCAT使用になるだろう。

 

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3件のコメント

【報告】福岡翻訳勉強会、無事に終了

一昨日の9月24日に、ももちパレスで開催された福岡翻訳勉強会の「博多で翻訳勉強会」が無事に終了しました。

関係者のTwitter発言がきっかけになって、あれよあれよと講師陣が決定し、福岡翻訳勉強会メンバーの意気込みによって一気に今回のような大きなイベント開催へと繋がりました。本当に素晴らしいイベントに関わらせていただいたことに感謝いたします。(その辺りのいきさつは、こちらの記事を参照してください)

企画段階では、福岡、山口、大阪、東京に点在する関係者をFacebookのグループを使って繋ぎ、イベントについてあれこれと検討しました。SNSが発達した「いま」だからこそ出来たイベントかもしれません。私の中では、エポックメイキング的なイベントだったと感じています。

参加いただいた方は四十数名。途中からは質問が活発に出るなど、皆さんの意気込みを感じることができました。懇親会でお話させていただいた方々の勉強会評価は、とても良かったようです。「この3セッションでこの参加費は安い」と仰ってくださった方もいました。

私を含めた講師陣3名は、特に事前打ち合わせをしたわけでもなく、お互いにタイトル程度の理解でセミナーに臨んだわけですが、トップバッターの小林さんのセミナーを聞くに従い、深井さんも私もそれぞれのセミナー内容が相互に符号していることに気づきました。3つのセッションとも根底に流れる考え方は同じで、あたかも1つのテーマを3つの切口でセミナーにしたような、なんだか3つのセミナーが1つの組曲を成しているような、そんな感じでした。聴講者の方々にも同じ印象を持たれた方がおられたようです。今回はいろいろな意味で、本当に奇跡的な勉強会だったと言えるかもしれません。(東京で開催されている勉強会でも、こんなことはあまり経験ないです)

私自身にとって、福岡は初めて。街並みも素敵で食べ物も美味しく、時間が許されるならもっと滞在したかったですね。機会があれば、また来たいと思います。私のセミナーに関しては、懇親会でいろいろな方から感想をいただき、とても勉強になりました。私の自己評価以上に、お役に立っているようだと言うことが分かりました。11月29日のJTF翻訳祭に向け、自信をいただいたような気持ちです。内容をブラッシュアップする方向性が見えましたので、この気づきを上手くJTF翻訳祭の私のセッションへ反映したいと考えています。(セミナー途中、マシントラブルで泡を吹きましたが(笑))

今回のイベントは、福岡翻訳勉強会メンバーの周到な準備のお陰で、とても楽しい勉強会と懇親会になったと思います。今後もこの勉強会が地元に根付いて継続されていくことを祈っております。この場を借りまして、今回のイベントを企画/運営してくださいました福岡翻訳勉強会メンバーの皆さん、そして会へ参加してくださったすべての方にお礼を申し上げます。
ありがとうございました。

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JTF翻訳祭 詳細プログラム決まる

2016年11月29日(火)にアルカディア市ヶ谷で開催される日本翻訳連盟主催「JTF翻訳祭」の詳細プログラムが発表になりました。

今年は、企画実行委員として参画させていただいていますが、クライアントや翻訳会社、それに翻訳者にとっても興味深いセッションばかりだと自負しています。また、今年から通訳に関するセッションも登場し、多くの方の参加をお待ちしています。

さて、私事ではありますが、今回の翻訳祭では5年ぶりに単独で登壇させていただきます。

誰も教えてくれない翻訳チェック
~翻訳者にとっての翻訳チェックを考える~

というタイトルでお話をさせていただきます。

是非、JTF翻訳祭への参加をご検討ください。 

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翻訳にTOEICは関係ない

翻訳関係者の方は「何をいまさら当たり前のことを」と仰ることでしょう。過去記事を探してみたら書いていないようなので、記事にしておきます。

「TOEIC XXX以上の翻訳者を…云々」を翻訳品質の高さの代名詞に使っている翻訳サービスを見掛けるたびに、「それ?相関取ってないだろ?」とツッコミを入れています。ただ、一般の人には「TOEIC=語学力=翻訳の質の良さ」という大きな誤解があるので、そう捉えられるのを狙っての宣伝文句ですよね。

昔、社内翻訳者を束ねていた頃、新規採用に応募してくる翻訳者のTOEICスコアとトライアル翻訳評価の相関データを採ったことがあります。サンプル数は25名程度だったと思いますが、それでも相関関係は充分に判断できるデータでした。そのデータから(当時)判断したことは以下の通り。

  • TOEIC 760以上は、TOEICスコアと翻訳の質に相関関係は無い。

散布図にするとはっきりと分かるのですが、全く相関が見えません。それ以降、TOEICスコアはまったく重要視しなくなりました。

翻訳を発注するクライアント企業の方は、この点を知っておいて欲しいものです。

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「翻訳品質評価方法に関する業界アンケート」を読む

日本翻訳連盟の標準スタイルガイド検討委員会にJTF翻訳品質評価ガイドライン検討部会というサブグループがあり、「翻訳品質評価方法に関する業界アンケート」を実施されました。その結果が日本翻訳連盟のホームページに公開されています。

2016JTF翻訳品質評価方法に関する業界アンケート結果報告書

ありがたいことに、無料で公開されていますので、是非、ダウンロードしてお読みいただきたいと思います。

ちなみに私もこっそり回答しています(別にこっそりで無くてもいい)。質問への回答方法は、概ね準備された回答からの選択式でした。早速ダウンロードして印刷をして、土曜の午後のまったりとした時間にキンキンに冷えたノンアルコールビールを飲みながら読ませていただきました。データを眺めているといろいろと面白いことが分かってきます。ここでは、私の勝手な解釈を書き連ねたいと思います(はい、私の個人的な見解です)

5.御社では「翻訳品質」とは何であるとしていますか。

この質問に対する回答を眺めていると、「納品物の完成度」が一番多いのですが、誰基準の完成度かは分かりません。他の回答を見ると「最終読者による評価の高さ」というものがあるものの、それを除外した回答から推測すると、回答者の意識の中ではほぼ「発注者に品質の主導権がある」という考えに基づいた回答に読めます。

6.訳文の品質評価をしていますか
7.質問6で「はい」の場合、何の目的でしていますか

訳文の品質評価をしていないのが10%あることに素直に驚きましたが、回答者の1/4であるクライアント企業の回答であろうと推測します。翻訳会社で訳文の品質評価をしないということはないと信じたい。(品質保証体系→品質保証工程がないということですから)

目的は、翻訳の各課程での品質評価のようです。「新規市場/顧客の開拓」については、私にはどう関連付くのかが良く分かりません。「品質評価しています」ということが宣伝文句として営業に有効であるということだろうかと想像しています(そういう営業トークには良く遭遇しました)。翻訳の工程評価のためという回答がないのは選択肢になかったからかもしれません。

8.どれくらいの頻度で品質評価をしていますか

この質問には、ハタと困りました。多分、「品質評価」の言葉の定義が質問者と回答者で違い、また個人個人によってバラバラなんだろうと思います。品質評価すべてをひっくるめるならば、「案件ごとに毎回」という回答ばかりになったのではないかと推測します。実際のところ、品質評価も対象により分類されており、それぞれがそれぞれの頻度で実施されているので、一概に答えづらいところもありますね。

9.どのような方法で翻訳の品質を評価していますか
11.質問9で「会社独自の手法」または「その他の手法」の場合、差し支えない範囲で内容を記入してください。

会社独自の手法」が圧倒的でしたね。「業界の手法」の認知度が低いのか、もしくは、それだけでは翻訳の品質評価を満足できないということだと思います。質問11の回答は、とても面白い内容になっています。手法としながらも手段が多いは、言葉の定義の違いが影響しているのでしょう。

回答内容を眺めていると、「翻訳」と「それに付随する作業」を「翻訳の品質評価の対象」として書かれているように思います。一般的に「翻訳の品質」とはそういう認識であるということだと思います。私は、そういう捉え方をしておらず、「翻訳」「それに付随する作業」という2つに切り分けて考えています。

16.訳文中の問題点(エラー)を分類して、項目ごとに評価をしていますか。
17.質問16で「はい」の場合、回答者が主に担当している分野では何を項目にしていますか。

質問17の回答は「その他」を除くと4項目です。スコアだけを見て判断すると「流暢さ」は一番優先順位が低いということになります。この結果は「あぁ、やっぱりね」という感じです。誤訳無く意味正しく反映されている「正確さ」、そして用語集やスタイルガイドの適用具合が重要視されているということだと思います。この事は、質問18の「どの項目をどの程度重視していますか」の回答でも現れていますね。(5:最も重要〜1:重要ではない)

流暢さ:3〜4
正確さ:5
用語集:5
スタイルガイド:4〜5

この辺り、回答者の翻訳分野が影響しているのではないかと推測いたします。

23.現在の品質評価方法を改善する必要性を感じていますか。
24.品質評価方法を部分的または全面的に改善したい場合、どのように改善したいと思っていますか。

部分的にせよ全面的にせよ、改善したいと考えているのは90%。現状の方法では不十分であるという認識の表れだと思います。「新しい品質評価方法を導入したい」「…十分に機能しないので…」「評価方法がバラバラなので…」など、いろいろと悩みがあるようです。現状、決定打といわれる方法が業界になく、独自に検討しているのが実情だと思うので、新しい方法があるならすがりたいというのが本心でしょうか。

25.クライアントと翻訳会社との間で、納品物の品質を巡るトラブルやクレームはありますか

この回答は「100回の納品で」何回程度トラブルやクレームがあるかという選択式のものでしたが、1%以上あるケースが6割も占めているのには驚きました(1回がどこに含まれるのかは不明だが(笑))。ましてや、6%以上が1割もある。私の感覚からするとこの6%のレベルは緊急事態です。会社を挙げて早急に何か対策を取らなくてはならないレベルに思います。

 

29.業界共通の品質評価ガイドラインがあると、翻訳会社とクライアント間で品質に関する合意形成に役立つと思いますか。

場合分けを含め、9割程度が役立つと考えておられます。

どのような内容で品質評価ガイドラインが表現されるかにもよりますが、私も業界共通の品質評価ガイドラインができるのなら、欲しいと考えています。

私は「翻訳」と「それに付随する作業」という切り分けで考えていると上述しましたが、この切り分けでの「翻訳」の部分にガイドラインが欲しいのです。後者の作業の部分は、単純で明確なので基準化しやすく、数値化して管理をすることも比較的容易です。翻訳業界の「業界の手法」といわれるものも適用できるでしょうし、それ以外の製造業で使われている品質評価手法も適用できそうです。
私が長年悩んでいるのは、前者の「翻訳」のガイドラインです。アンケートで「会社独自の手法」として回答されているものを見ても、この翻訳部分は「人依存」ですので、これを明確で数値化可能な評価基準と評価手法を業界標準としてガイドライン化できるなら、画期的なことだと思います。

そういう部分で、とても期待している活動です。