翻訳横丁の裏路地

We can do anything we want to do if we stick to it long enough.


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第27回JTF翻訳祭プログラム、そしてミニ講演会

日本翻訳連盟主催 第27回JTF翻訳祭のプログラムと各セッションの時間帯が発表になっています。詳細は、JTFウェブサイトでご確認ください。

27JTF翻訳祭

昨年に引き続き、今年もJTF翻訳祭企画実行委員を担当させていただいています。昨年同様、魅力的なセッションばかりで、どのセッションを聞こうか悩みますね。今年は法人向けコンテンツも充実しています。皆さんのご参加をお待ちしております。

参加セッション決めの参考になればと、身内のために作ったリストがありますので、一般公開します。これはあくまでも「非公式」リストですので、内容に間違いがありましても、JTFへクレームなどされませんようにお願いいたします。

非公式セッション一覧表

さて、私の講演ですが、今年、初めての試みであるミニ講演会のひと枠をいただいて登壇いたします。10分間という限られた時間でどこまでお話しできるか、チャレンジングで面白い。昨年お話した「翻訳チェック」の上位概念の部分を話題にしようと考えています。ご興味がありましたら、聞いていただけたらと思います。


海外経験を持つ社内人材の罪

昨年来のセミナーで、顧客には極論、ふたつのタイプしかいないとお話ししています。翻訳のわかる顧客と、翻訳のわからない(言語知識のない)顧客ですが、実際には「この間に翻訳は知らないが中途半端に言語知識のある顧客がいますよね、これが厄介ですよね?」とお話しすると、会場から必ず笑いが起こります。皆さんも同様に苦労されているだなぁというのがよくわかります。

海外赴任を経験したとか、海外を相手にする部署で長年仕事をしていたとか、その背景は様々ですが、業務上のコミュニケーションに困らない程度の言語能力を持っておられる。そんな方々が、海外へ配信する翻訳文書の確認作業や翻訳作業を任されたりする。最近多いのは、定年後の再雇用で言語経験を買われ、そういった仕事に従事されている方です。

こういう方々の一部に見られる傾向は、以下のようなものでしょうか?

  • 外国語に妙な自信を持っておられる。
  • その割にその言語の書物に触れていない。(つまり常識的スタイルを知らない)
  • 文法理解が乏しい。
  • 自分の持つ専門知識(企業方言含む)を翻訳者も当然持っている前提で判断する。
  • 日本文の考え方とスタイルで解釈する。
  • 2言語間で、単語が1対1で対応すると本気で思ってる。
  • 動詞さえも統一されるべきと考えている。
  • 自分の言語センスは絶対だという自負があり、我々の説明を心から理解しようとはしない。
  • 上から目線で命令的かつ断定的。

こういう方々が、プロ翻訳者の翻訳した翻訳物に赤を入れ、(間違った)修正を加えて利用しているのです。勿論、それがその会社の社内で閉じているならば、我々の知ったことではないので結構なのですが、時として「あの翻訳会社の翻訳は酷い」とか「あの翻訳者の翻訳は酷い」という謂われない悪評となってその会社の中に広まり、最悪、依頼止めされるといった事態になることもあります。

これは、依頼する側、依頼される側の双方にとって不幸の何ものでもありません。

問題のひとつは、その企業の判断基準が(素人の)「言語を知っている人」になっていることです。その担当者の上司も、自分で判断できないため、担当者の判断に依存せざるを得ないことも原因のひとつでしょう。また、以前役職にあった年上の再雇用者が担当者だったりすると、物申しづらいという背景が、上司の判断を狂わせているのかもしれません。どちらにしても、いち企業の判断としては、お粗末としかいえません。

ここでクライアント企業に理解しておいていただきたいのは、以下のことです。

  • 言語を知ってる程度の知識では、翻訳の善し悪しを判断できないこと。翻訳できないこと。
  • 翻訳の善し悪しは、翻訳知識のある人、もしくはターゲット言語で該当する文書に精通した人に行わせること。
  • 翻訳は言葉のプロ、文書のプロの仕事であるということ。
  • 故に訳文の不明点は翻訳者(翻訳会社)に問い合わせること。相談すること。

理解しやすい例を挙げるならば、例えばあなたの部下達が提出する報告書の文章を思い浮かべて欲しいのです。その文章は意図通りの表現になっていますか?意味は正しく通じていますか?日本語を間違っていませんか?回りくどくて分かりづらかったりしませんか?

我々のネイティブ言語である日本語でさえ、文章品質にバラツキが生まれるのです。もし、これをプロのライターに依頼したらどうでしょうか?きっと意図通りで簡潔明瞭な文章となるでしょう。

言語知識を有する(だけの)人間とプロの翻訳者が行う翻訳の違いは、この例のような違いが生まれると考えていただければ良いと思います。

※ ここまで書いたことを逆にすれば、翻訳会社や翻訳者は、何ができなくてはならないのか?を問うていますね。

さて、この辺りの話。結局は「翻訳に対する一般的認識」の問題に帰結するのでしょう。翻訳に携わる我々は、プロの矜持を持ち、それに恥じぬ仕事をし、顧客に説明していくことを心掛けないといけませんね。その努力が我々の翻訳という仕事の価値を一般に認めていただくことになるのだと思います。


翻訳通訳業界調査ご協力のお願い(9/15まで)

日本翻訳連盟が、第5回目となる翻訳通訳業界調査を実施します。

2013年の第4回調査から従来の法人対象の調査だけではなく、個人翻訳者を対象とした調査も追加になり、初めて個人翻訳者の受注実態が分かるようになりました。今回の第5回調査では、2016年4月にJTFの定款に「通訳」が追加されたのを受け、通訳に関する設問も追加になっています。

我々の働く翻訳通訳業界の実態をより正確に把握できるよう、是非、業界調査アンケートにご協力をお願いいたします。

日本翻訳連盟通訳翻訳業界調査アンケート

http://www.jtf.jp/jp/useful/report.html

業界調査結果は、翻訳業界のみならず、広く産業界でも参照される「白書」としてまとめられます。業界調査アンケートにご協力いただいた方(メールアドレスをご登録いただいた方)には無償で(PDF版が)配布がされますので、是非、ご協力ください。


2件のコメント

翻訳したら勝手に対訳表

翻訳チェックに関するセミナーやWildLightセミナーでお伝えしていますが、私は必ず「対訳表」を作成して翻訳チェックを行っています。翻訳チェックでは、原稿文書と翻訳文書への視野を変化させてチェックを行いますが、対訳表のように原文と訳文を表にすることで細部のミスが認識しやすくなるからです。ただ、その効果を理解しながらも、対訳表作成は時間の掛かる作業という認識が強く、敬遠される方も多いようです。

以前、とあるセミナーの休憩時間に高橋聡さんと雑談をしていて、翻訳作業後に簡単に対訳表作成できてしまうワザを教えてもらったことがあります。既に記憶の彼方にあったこのワザですが、昨日、大阪ほんまかいのWildLight中級セミナーの休憩時間に、ある参加者の方と立ち話をしていて対訳表作成の話になり、ふとこのワザのことを思い出してお話ししたら非常に興味を示されたので、ブログ記事にしておくことにしました。

この方法は、どんな翻訳スタイルでも使えるものではなく、ワード上で原文パラグラフの下に訳文を打ち込んでいくような翻訳スタイルでのみ使えます。

方法は至極簡単で、原文パラグラフのお尻に何かマーク(セパレーター)になるものを入力し、それに続いて訳文を入力します(原文と訳文の間で改行してはいけない)。つまり、[原文]マーク[訳文]という組合せのパラグラフをどんどん作っていき、翻訳が完了したところでセパレーターをTABに置換して、最後にワードの表作成の「文字列を表にする」機能を使って対訳表にします。作業フロー例を書くと、以下のようになります。

  1. 原文パラグラフの最後の文字の後(改行の前)に「●●●●●」を入力し、続いて訳文を入力する。
    • こんな感じ…原文原文原文原文原文原文原文原文原文原文原文原文原文原文●●●●●訳文訳文訳文訳文訳文訳文訳文訳文訳文訳文訳文訳文訳文訳文
  2. すべての翻訳が完了したら、ワードの置換機能を使い「検索する文字列」に「●●●●●」を入力、「置換後の文字列」に「^t」を入力して、「すべて置換」を押す。すると「●●●●●」がTABに置換される。
  3. Ctrl+Aを押して文書全体を範囲指定し、[挿入]→[表]→[文字列を表にする]を選択する。(もしくは、WildLightの機能を使用する。その場合は、[アドイン]→[WildLight]→[辞書管理]→[TAB区切りテキストを表にする]を選択すると一発で対訳表になります。次のステップ4を行う必要はありません。)
  4. 列数を2、文字列区切りにタブを選択して、[OK]を押す。文字列を表にする

以上の手順で、原文と訳文が左右に並んだ対訳表が作成できます。

ほんまかいで質問された方は、原文と訳文の間に改行がないから見辛くなると仰ってましたが、そういう方は、上記手順1で「●●●●●」を入れた後、Shift + Enter を押してソフトリターンしてください。そして手順2の置換では、「あいまい検索(日)」のレ点を外し、「検索する文字列」には「●●●●●^l」を指定してください。

※この記事を公開後、Twitterで翻訳茶さんから以下の指摘を頂きました。

ソフトリターンではなく、通常の改行(ハードリターン)でも良いのでは?

その通りですね。その場合はこうなります。上記手順1で「●●●●●」を入れて改行してください。そして手順2の置換では、「あいまい検索(日)」のレ点を外し、「検索する文字列」には「●●●●●^p」を指定してください。

対訳表作成で一番時間の掛かるアライメントが省けることと、作成の手間も然程掛からないので、翻訳スタイルが合うなら試してみる価値はありますよ。

 


JTFジャーナルにセミナー報告が載りました。

2017年5月22日に開催された第一回JTF翻訳品質セミナーの報告が、JTFジャーナル最新号に掲載されました。

JTFジャーナルNo.290:
2017年度第1回JTF翻訳品質セミナー報告
「誰も教えてくれない翻訳チェック ~翻訳者にとっての翻訳チェックを考える~」

報告者の三浦さんが、非常にうまく要点を押さえた報告にまとめてくださいました。
(三浦さん、ありがとうございました。)

このテーマによる関東地区での講演は、先日のJAT総会基調講演が最後となりました。なお、関西地区では、来年頭にお話しする機会ができそうです。正式な発表がありましたら、当ブログでもアナウンスいたしますね。