翻訳横丁の裏路地

We can do anything we want to do if we stick to it long enough.


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翻訳のカスタマーエデュケーションを考える

年が明けた2019年の最初のJTFセミナーに登壇いたします。

翻訳のカスタマーエデュケーションを考える
日時:2019年1月23日(水) 14:00〜16:40
詳細は、日本翻訳連盟(JTF)のホームページを参照ください。

カスタマーエデュケーションとは、マーケティング分野で使われている言葉ですが、ここでは、より良い翻訳サービスを提供するために、顧客とどのような関係であるべきか、そんなことを議論するものになりそうです。

登壇者が翻訳会社とソースクライアントで構成されており、その辺りの議論がどう展開していくのか、今から楽しみです。ちなみに私はソークラ側の立場で登壇を依頼されたのですが、前打合せをする中で、ソークラ、翻訳会社、翻訳者と、議論によって立ち位置を変えながら発言するという不思議な立場で参加します(笑)

前打合せの感じからすると、相当面白い議論が展開されると思いますので、興味のある方は是非参加をご検討ください。


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翻訳会社は質の高い翻訳者を使うと損するのか?

確か先月の事だが、ある方のブログを拝読していて標題のようなコメントを読んだ。

質の高い翻訳者へ支払う翻訳料は高額であり、クライアントへの売価が固定されている条件下では、そういった質の高い翻訳者へ仕事を委託すると利益を圧迫するため、自ずと単価の低い、質の低い翻訳者へ依頼する事になる…と言うのが、そのコメント趣旨だったように思う。多分、一般的にはこういう認識の方が多いのだろうと思うので、それは少し違うよ…という事をお話ししたい。

上記のコメントは「翻訳料+利益=売価」という非常に単純な認識で言及されていると思う。

最終的な翻訳売価には、オーバーヘッドなど色々なコストが乗っかっているのはご存知の通り。ただ、ここでは翻訳の質と翻訳売価の関連性が主題なので、翻訳の質で影響を受けるであろうコストだけを考えてみたい。まともな翻訳会社であれば翻訳工程として、翻訳者が行う一次翻訳の後に、チェック、リライトの工程を持っていると思う。チェッカーや校正者によって行われるこれら作業は、概ね掛ける時間によってコストが決まる。また、その時間の長さは一次翻訳の質によって大きく違う事になる。

翻訳料+後工程コスト+利益=売価

こういう単純化した式で考えると良いと思う。つまり、良い品質の翻訳品であれば後工程コストが小さくなり、質の悪い翻訳品であれば後工程コストが大きくなる。レートの高いインハウスのチェッカーや校正者を使っている場合では、(質の高い)高額翻訳者と(質の低い)低額翻訳者の一次翻訳コスト差を、後工程コストが簡単に逆転する事になるだろう。

つまり、単価の高い翻訳者に頼まないで単価の低い翻訳者へ頼めば利益が増えるので、単価の低い翻訳者ばかりへ依頼する…なんて事にはならない。まともな翻訳会社はそんな事を考えないし、やらない。チェックもリライトも「修正・訂正」作業であり、一次翻訳の基本的な質を覆せない。そこまで酷ければ訳し直しとなり、一次翻訳のコストだけで倍掛かってしまう。一次翻訳の質が非常に大切なので、品質のいい翻訳者さんへ依頼する方が総合的に見ても「得」。

「質」の話しは以前から何度も言及しているように、判断する「基準」が大切で、そこに認識の違いがあるから問題となる。「酷い質の翻訳が納品された」のであれば、翻訳会社と基準の確認と調整をするべきだと思う。その上で継続して質の悪い翻訳品が納品されるようであれば、その翻訳会社との取引は止めるべき。世の中の翻訳会社が全て同じであり、同じ質のものを提供していると考えているようであれば、それは明らかに「幻想」だと思う。自分達の求める質やコストで翻訳サービスを提供する翻訳会社を探し出す事が大切だ。

 


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翻訳会社を選別するという意識

今週、某SNSで久し振りの消費税転嫁の話題を読み、その方の翻訳会社に対するスタンスに軽い疑問を感じつつ生活をしていました。昨夜、通翻クラスタの担々麺倶楽部会合(笑)から帰る電車の中で偶然聞いたトミーラジオ(仮称)で、翻訳会社から翻訳者へのフィードバックの話しがされて、それについて考えていたら、先の疑問が再び頭に浮かんだので記事にしておこうと思います。

それは、翻訳者も「翻訳会社を選ぶ」ことにもう少し真剣であっていいのではないか?ということです。言い方を変えれば、取引先評価をちゃんとやって、取引することを決める、取引を停止する、取引を継続するなどの判断と対応を「ビジネス的意識」でちゃんとやるべきだと思うのです。

その評価の対象となるものは、いろいろあるでしょう。例えば、支払いが漏れること無く期日までに行われるか、翻訳依頼時に単価と納期を明確にして指示しているか、発注書を事前に送付してくるか、振込手数料を翻訳会社が負担しているか、消費税を正しく転嫁しているか、法律や規則に違反していないか、道義的に問題ない経営をしているか、コーディネーターの対応はどうか、翻訳の瑕疵を正しく理解したクレームをしてくるか、必要な情報は問い合わせる事無く提供してくるか、質問をすればタイムリーに返事をくれるか…などなど、挙げればキリがありませんが、そういった指標と基準を自分なりに持った上で、翻訳会社の対応を注意深く見て判断し、行動すべきだと思います。

昨年、日本翻訳連盟が行った業界調査が「翻訳白書」として発表されていますが、会社規模が年間売上1000万〜3000万のレンジにある翻訳会社が増加していたと記憶しています。これはある意味、業界慣れしていない翻訳会社がぞろぞろと増えているのではないかと想像するのです。つまり、業界のコモンセンスが崩れ、極端にいうと、思いもよらない姿勢/論理で翻訳者さんへ対応しているところが増えているのではないかと懸念しているのです。

それ故に、翻訳者さんの側も、しっかりと考えて、調べて、学んで、そして翻訳会社を見極める目を持って「翻訳会社を選別」して欲しいと思うのです。

トミラジで話題になったフィードバックの話しは、世間的にフィードバックをしてくれる翻訳会社が少ないね、でも、ちゃんとフィードバックしなくちゃいけないよねという話しだったのですが、それを聞いていて私が考えたのは、「フィードバックをする・しない」だけをとっても、その翻訳会社の姿勢が判断できるということです。また、フィードバックをしてくれる翻訳会社の場合、そのフィードバックの内容を「翻訳会社の評価」の材料に使えると思うのです。(というか、評価材料に使ってやる!くらいの意識でいて欲しい)

時々聞くのは、頓珍漢なフィードバックで対応に苦慮している翻訳者さんの話しです。「翻訳会社」という看板を掲げている以上、翻訳会社は翻訳のプロであるべきです。そのプロが恥も感じずに上から目線で頓珍漢な翻訳の指摘をしてきたとしたら、あなたならどう考えますか?「この翻訳会社は本当に翻訳のことを理解しているのだろうか?」もっと言えば「この翻訳会社は正しく翻訳の価値を評価できないのでは?」「私の翻訳は正しく評価されているの?」と思いませんか?勿論、判断をするということは基準があってのことです。ご自身の判断の基準が間違っている可能性もあります。だから、その擦り合わせが大切なのです。そのプロセスの中で「上から目線」とか「基準の押しつけ」はあってはならないと思うのです。

自分の翻訳が正しく評価され、それに見合った適正な単価で支払いがされ、世間的にも業界的にも正義を持った経営がされている、そして共に必要とされるパートナーとして仕事ができる、そんな翻訳会社を取引先としてより多く持つために、翻訳会社を見極める目を育む意識、翻訳会社を選別する意識に少し注意してみて欲しいなぁと思います。


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消費税価格転嫁等総合相談センターへ相談した

先週の土曜日から、当ブログで「4月から貴方の翻訳単価と消費税の取り扱いはどうなった?」と言うアンケートを開始して1週間が経過しました。

現在までの結果を見ていると、気になる回答が出ています。

  • 消費税は支払えないと言われた。
  • 内税のままで、内税単価はそのままだった。

Twitter やSNSの翻訳者さんの書き込みを見ていても、「翻訳会社から(あなたは)免税業者だから消費税は支払わないと言われた」とか、「翻訳会社から、クライアントからの値下げ圧力が激しく、増税分を転嫁できないと言われた」など、翻訳会社からとんでもない回答がされている事が分かってきました。

こういう話をされた時、「免税業者には消費税を払わなくてもいいの?」という疑問を自己解決できず、そこで交渉を諦めてしまう場合が多いのではないでしょうか? また、然るべき公的機関が出しているそういう情報を探す事にも苦労している部分もありそうです。

「いったい、どっちなの?」 そう悩んだら、然るべき窓口に聞いてみると良いと思うのです。幸いにも、今回の増税に対応するために消費税転嫁対策特別措置法という法整備をし、相談窓口を多く作ってくれているのですから、使わない手はないです。

と言う事で、早速、私が皆様の代わりとなって(笑)、上記2点の問題について、消費税価格転嫁等総合相談センターへ相談してみました。質問と回答はメールで行われました。ここでメールの内容をそのまま載せる訳にはいきませんので、多少、文言を変更し、回答は主旨のみを記します。

【質問内容】

  1. 翻訳会社から「貴方は免税事業者なので、消費税は支払わない」と言われた。
  2. 単価は内税で運用しているが、消費税増税分の取扱について翻訳会社に問合せたところ、「単価に変更はない」と言われた。

これらの翻訳会社(親事業者)の発言は正しいか?という質問をしました。

【得られた回答】以下、消費税価格転嫁等総合相談センターの回答主旨

  1. 免税事業者への発注であっても消費税は支払う必要あり。よって翻訳会社の言っている事は誤りである。
  2. 「単価に変更がない」の意が、内税の場合で支払う金額が3月分と4月分が同じであれば、「買いたたき」 の恐れあり。外税の場合、4月分から8%にて支払わないと「減額」の恐れありである。

つまり、どちらも違法と判断されるという事です。

回答メールには、どちらのケースにしても公正取引委員会取引企画課(TEL 03-3581-5471)に相談して欲しいと書かれていました。
リーフレット(消費税転嫁対策特別措置法が施行されました)

消費税価格転嫁等総合相談センターのメール問合せは非常に対応が速く驚きました。質問を送ってから3時間も掛からずに返事メールがきました。とても丁寧な文面でした。翻訳会社からの連絡メールを読み、疑問に感じるようならば、この相談センターへ相談してみるがいいのではないかと感じました。その質問と回答をSNSなどでみんなにシェアしてくれると、とても助かりますね。

以上、ご参考です。

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消費税価格転嫁等総合相談センター
http://www.tenkasoudan.go.jp/

 

 


2件のコメント

消費税増税:大丈夫か?こんな翻訳会社

昨日、Twitterで「内税による翻訳単価だが、翻訳会社から4月以降も単価はそのままだと言われた」と言うツイートが流れた。その理由は「クライアントからの価格下げに対応するため」だと言う。

さて、こんな翻訳会社は、企業としてどうなんでしょうか?

中小企業庁ホームページに「消費税価格転嫁等対策」というページがあります。
このページの末尾に、「中小企業・小規模事業者のための消費税の転嫁万全対策マニュアル」が公開されていますので、フリーランス翻訳者の方は、ダウンロードして一読する事を強くお勧めします。

このマニュアルで特に読んで頂きたいのは、ページ16〜24です。フリーランス翻訳者は、この中で言われている「特定供給事業者」に該当します。
先のツイートで登場した翻訳会社は「特定事業者」となる訳ですが、ページ20の「重要」に書かれている「例えば、平成26年4月1日の消費税率引上げに際して、本体価格が100円の商品について、消費税率引上げ後の対価を105円のまま据え置く場合などです。」に該当する事になり、「買いたたき」になる筈です。また、上記の翻訳会社が述べたと言う理由が「買いたたき」とならない「合理的な理由」には該当しないでしょう。つまり違法であると判断される事になります。

外税方式を用いる事を申し入れたら、翻訳会社は拒めない?

このマニュアルのページ21には、もっと面白い事が書いてあります。
「本体価格での交渉の拒否」のところですが、特定供給事業者(翻訳者)が消費税を含まない価格を用いる事を申し入れた場合、特定事業者(翻訳会社)はそれを拒めないとあります。これは、すなわち、翻訳者側から外税式を用いる事を申し入れた場合、翻訳会社はそれを拒めないという事になります。
ページ22の「重要」がまた大切なところです。翻訳者が本体価格と消費税額を別々に記載した見積書などを提示した場合、本体価格での価格交渉を希望する意図ありと判断され、消費税を含まない本体価格を用いる申出をしているのと同等に見なされるようです。請求書を本体価格と消費税を別々に書いて出すだけでも申し入れた事になるという事ですね。

取り敢えず、以上。後でまた加筆、修正致します。