この記事は過去の記事の焼き直しです。
私も昔、社内翻訳者の端くれをやっていた。同時に社内翻訳者の管理や教育をする立場にもあったのだが、そこでの経験と、現在の仕事を通じて感じている「社内翻訳者」として翻訳に携わる上での心構えと注意点を書いてみたい。
社内翻訳者と言っても、その業務を担当しているのは、概ね正社員であったり、契約社員であったり、派遣社員なのがほとんどだろう。
正社員の場合、本人の意思(翻訳を仕事にしたいか否か)に関係なく、翻訳という業務を担当させられている場合が多いと思うのでここでは除外したい。
少なくとも、翻訳を自らの仕事と位置付けて、翻訳の仕事を取りに行った契約社員や派遣社員の方々を想定して書いてみたい。
翻訳という仕事の取っ掛かりとして、社内翻訳からスタートする人が多いと思うが、従事期間中に学ぶべき事はかなり多いと思う。
まず、考え方として、常に意識しておいて欲しい事があります。
それは「時間」と「環境」です。
社内翻訳者はフリーランス翻訳者と違い、「時間」を売って報酬を受けているのです。だから、負荷の増減(翻訳量の増減)で所得が変わらない。
つまり、果たすべき責務をこなしている限り、余った時間にもお金が支払われるという、誠に有難い「環境」なのです(笑)。おまけに習得したい翻訳の知識や英語の教材は、職場の中にゴロゴロしているという超恵まれた「環境」。
翻訳を勉強するにはうってつけのこの「環境」を積極的に使ってやる!という意識を持ちましょう。
その為には、勤務時間内に自己研鑽の為の時間を捻出できるよう、時間を積極的にマネージしましょう。
ダメですよ、企業に使われているんだから…という意識では。
金銭的報酬のみならず、得られるものを増やして奪い取る…逆に利用してやる!くらいの意識で取り組みましょう。
そういう意識を持って取り組めば、やるべき事、やれる事が見えてくると思います。
- まずは翻訳という作業を覚える。やり方や流儀を覚える。
- 目に触れる未知の言葉は徹底的に調べてものにする。単純な日本語との意味の連結ではなく、ニュアンスを掴む。
- 目に触れる文書の種類を理解し、それぞれの文書の流儀、翻訳のお作法、アプローチを身に付ける。
- 使用するソフトウエアの使い方をマスターする
- 自分用の用語集や辞書を作る
この環境でしか得られないもの…を考えてみて下さい。
生きた文書と言葉、それぞれの文書の流儀と翻訳のお作法、それらを文書化する時のツールとその使い方。文書に書かれた情報の知織化…
より多く触れ、身に付け、蓄積する。渇きを感じる程、そういう情報に敏感に反応して、自分の中に取り込んでしまいましょう。
ただ、問題点もあるのです。
それは、その企業で使われている文書と言葉が、グローバルスタンダードとイコールではない場合が多いという事です。極端な場合だと、その企業・職場でしか通用しない表現や単語(企業方言)、やり方が多く存在するような職場です。よって、注意点は、常に世間的、一般的にどうなのか?という意識を働かせて、情報を取り入れる事です。
仕事が終わったら、プライベートでは仕事で扱っている分野の英文をウェブや雑誌を使って読み、グローバルスタンダードとの知識のアジャストメントをする事が大切と思います。