翻訳横丁の裏路地

We can do anything we want to do if we stick to it long enough.


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高額な翻訳講座へ投資する前にひと呼吸

昨今、いろいろな媒体で目に触れることが増えてきた「翻訳講座」という名の情報商材販売。その宣伝文句は、翻訳を生業にする人間から見れば「その方法では翻訳者になれないのでは?」「継続的に翻訳で稼げないのでは?」と疑問を持つようなものが多いのです。ただ、初めて「翻訳」という仕事を聞いた方達には、その判断は難しいことでしょう。

概ね、その類の情報商材的翻訳講座は高額な価格設定がされていますので、投資を決断する前に充分な検討をした方が良いです。宣伝文句どおりの結果が得られるのか、期待された成果が出るのかなど、投資額に値する結果が得られないリスクを慎重に判断する必要があります。浮ついた心で決断をして後悔をしないようにしたいものです。

私も若かりし頃、高額な英語学習教材に手を出しそうになったことがあります。そのときの経験を踏まえて考えてみると、そういった情報商材的翻訳講座には、次のような傾向があるのではないでしょうか。

  1. 最初に金額提示をせず、商品(講座受講)によって叶えられる「夢」を思い描かせる話ばかり説明する。
  2. 商品とは関係の無い特典ばかりを強調する。
  3. 高額な商品価格(受講料)が、期間限定や先着限定という名目で破格な低額になり、購入を煽る。
  4. 残数わずかといって、購入を煽る。
  5. 商品(講座)に対して質問しても、タイムリーに返事がない。もしくは無視される。
  6. 商品(講座内容)の優位性をあまり説明しない。説明しても抽象的。
  7. 宣伝文句の実現性を説明しない。

もし、これらのうち、いずれかの傾向が見られる場合は、慎重になった方が良いでしょう。これらは人間の心理を突いた宣伝方法ですが、洗脳を目的としていたり、切迫感を持たせて不安感を煽ることを目的にしていて、購買者が正確な判断を行えない状態に陥れます。

こういうときは、「ひと呼吸」いれましょう

問題のない商品かどうかを判断する際、情報ソースの違う「セカンドオピニオン」を探しましょう。ネット検索でもいいですし、SNS検索でもいいでしょう。その商品名(講座名)や主催企業名をキーワードにして検索すると、立場の違う人たちの評価や意見が読めるかもしれません。また、その道のプロの意見が読めるかもしれません。

大切なのは主催側の情報のみで頭をいっぱいにしないことです。相手は商売でやっているのですから、自分たちに都合の良い情報しか出さないのは当然のこと。例えば「受講者の声」のようなものも、あくまでも主催側が準備した「情報」なのですから、それが真実であるかどうかは判断できません。準備されたシナリオで俳優が演じているだけという可能性も想定した方がいいのです。

ちなみに、こういった「翻訳学校」「翻訳講座」について、昨年末に、一般社団法人 日本翻訳連盟が次のリンクのような注意喚起文書を公開しています。是非、一読されて、御自身の判断にお役立ていただければと思います。

「一般社団法人日本翻訳連盟からのお知らせ」


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#業界実態調査 締切延長 11月27日まで

みなさまのご協力のお陰で、着実に回答数が増加しております。
まことにありがとうございます。

さらに多くの回答を集め、より精度の高い業界調査とするため、アンケート回答締切を11月27日まで延長いたしました。

みなさまの知人の翻訳者さん、通訳者さん、翻訳・通訳会社の関係者の方に、ご協力をお願いしていただけると有り難いです。

引き続き、ご協力をよろしくお願いいたします。

https://www.jtf.jp/tips/report


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業界実態調査にご協力をお願いします

みなさん、こんにちは。齊藤貴昭/Terry Saitoです。

日本翻訳連盟が定期的に業界調査を実施し「翻訳白書」を発行していることを、ご存知の方も多いと思います。

JTF業界調査のホームページ

本年度は、業界調査委員会の委員長を仰せつかりまして準備を進めてまいりましたが、この度、遂に業界調査を開始する運びとなりました。

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話題?のポストエディット

日頃、電話なんてまったくしない自分には珍しく、先日、長電話をした。年単位でお会いしていない翻訳業界のお友達が相手。だから長電話になるのは当然なのだけど、何よりも境遇が似ている相手なので、心の何処かで「同志」のように感じていて、会話が楽しかったのも理由だと思う。

いろいろと話をしているウチに「ポストエディット」(PE)の話題になる。なんと、仕事でPEをやった(やらされた)のだとか。PEの現場がどんな感じなのかを知りたかったのもあり、いろいろと興味深く話を聞いたのだけど、何とも悩ましい。

機械翻訳の出力文を修正する基準が「意味が通じれば手を付けない」だという。巷で良く耳にする基準だけど、話を聞けば聞くほど判断に悩んでいる感じが、言葉の端々に感じられる。だって「意味が通じる」って、あまりに属人的判断基準じゃない? そこで悩んでいても仕事が進まないから、適当なところで割り切って判断するわけだけど、この作業を繰り返していると、やっぱり、言語感覚が狂うだろうなぁと心配になった。

本当は直した方が良いと感じつつ放置して、そんな放置された文章を大量に、しかも繰り返し目にするとどうなるだろう。人間は能力が高過ぎるが故に、直した方が良いという感覚が麻痺してくるのではないかと思うのですよ。きっと、感覚が鈍くなる。言葉の感度が大切な翻訳者を目指す方には絶対に危険だ、と、やはり思うわけです。

もちろん、こういう作業が好きな方もいるのです。そういう方はどんどんやれば良いと思います。ただ、社内でやるならまだしも、フリーランスで委託を受けてやるには、報酬が低すぎますね。仕事として稼げないのでは成り立たない。もはや内職的仕事なんだと思います。

私は、MTPEは、文書種類などの条件が揃えば利用できると考えています。そのレベルの条件であれば、PEに要求されるスキルも然程高くなくて大丈夫だろうと思います。問題は、使う側(特に企業側)が、その辺りの認識を正しく持たずに「単価が低いMTPEセット」という単純な発想で、ありとあらゆる文書にMTPE利用を展開しているところでしょう。もはや、誰でも出来るPEではなく、高い翻訳の知識を必要とする高価かつ工数の掛かるPEになっている。なのに、安い単価のままで回そうとして破綻しているように見えます。

PEをやるやらないは個人の判断ですが、仮に自分が請けるとしたならば、どんな文書が対象で、最終読者は誰で、求められる質はどのレベルかを把握した上で、はたして正しいMTPEの使用条件なのかを判断したいと思います。そして、必要となる工数と支払われる単価から、仕事として適切かを判断して請けたいところです。