翻訳横丁の裏路地

We can do anything we want to do if we stick to it long enough.


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AIで消滅する翻訳という職業

今朝、Forbes Japan の「ChatGPTが消滅させる?「年俸1千万超」含む7つの職業」という記事を目にしました。

機械翻訳やAIの登場で消滅する職業のひとつとして必ず登場する「翻訳」ですが、この記事にも4番目に「翻訳者」として取り上げられています。

AIで翻訳という職業は消滅する。
本当にそうなのだろうか?

SNSを見ていると「翻訳は無くなる」「いや、翻訳は残る」という、立場の違うもの同士が前提も明らかにしないで意見交換(?)しているのを見掛けますが、私は両者の主張はどちらも正しいと感じています。

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翻訳者かプログラマーか

長らく何も書いていないブログですが、久しぶりに、何か書いてみたいと思います。

そうですね、最近、ときどき頭の片隅にあって、時間があると思い返して考えていることがあるので、それを書いてみます。もちろん、私の浅はかな考えに基づくものですので、一笑に付していただければありがたいです。

それはそれは遠い昔のお話。仕事で大量の日本語文書を英文に、大量の英文書を日本語に書き換えなくてはならなくなったとき、プログラミングに覚えのある人間なら「単語の置換」をプログラムでやってしまえと自然に発想するでしょう。私も同じ発想で、辞書ファイルを参照して用語置換するプログラムを書き上げて使い始めたわけです。

プログラムの出力を利用して完成文を作り上げていくわけですが、作業を繰り返していくうちに人間というものは欲が出始め、品詞に関係なく、なんでもかんでも置換しようと工夫を始めるわけです。辞書を工夫したり、プログラムのアルゴリズムをいじったり、まぁ、プログラマーとしては楽しいひとときなわけですが、副詞だろうが形容詞だろうが、時には動詞まで何とかしようと試み始める。この辺りまで行くと、手段の目的化状態になりつつある。

出力を完成文に整える作業の中で、はたと気付くわけです。プログラムの出力が「邪魔くさい」と、完成文に行き着く思考の中で役に立っていないと、むしろ邪魔をして目障りだと気付くわけです。ここに気付くかどうかが翻訳者かプログラマーかの別れ道になるのでしょうか。結論として、解釈に揺れがない固有名詞以外は、置換しても思考の邪魔になるだけだと自ら学ぶわけです。

もし、気付かなかったら?

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高額な翻訳講座へ投資する前にひと呼吸

昨今、いろいろな媒体で目に触れることが増えてきた「翻訳講座」という名の情報商材販売。その宣伝文句は、翻訳を生業にする人間から見れば「その方法では翻訳者になれないのでは?」「継続的に翻訳で稼げないのでは?」と疑問を持つようなものが多いのです。ただ、初めて「翻訳」という仕事を聞いた方達には、その判断は難しいことでしょう。

概ね、その類の情報商材的翻訳講座は高額な価格設定がされていますので、投資を決断する前に充分な検討をした方が良いです。宣伝文句どおりの結果が得られるのか、期待された成果が出るのかなど、投資額に値する結果が得られないリスクを慎重に判断する必要があります。浮ついた心で決断をして後悔をしないようにしたいものです。

私も若かりし頃、高額な英語学習教材に手を出しそうになったことがあります。そのときの経験を踏まえて考えてみると、そういった情報商材的翻訳講座には、次のような傾向があるのではないでしょうか。

  1. 最初に金額提示をせず、商品(講座受講)によって叶えられる「夢」を思い描かせる話ばかり説明する。
  2. 商品とは関係の無い特典ばかりを強調する。
  3. 高額な商品価格(受講料)が、期間限定や先着限定という名目で破格な低額になり、購入を煽る。
  4. 残数わずかといって、購入を煽る。
  5. 商品(講座)に対して質問しても、タイムリーに返事がない。もしくは無視される。
  6. 商品(講座内容)の優位性をあまり説明しない。説明しても抽象的。
  7. 宣伝文句の実現性を説明しない。

もし、これらのうち、いずれかの傾向が見られる場合は、慎重になった方が良いでしょう。これらは人間の心理を突いた宣伝方法ですが、洗脳を目的としていたり、切迫感を持たせて不安感を煽ることを目的にしていて、購買者が正確な判断を行えない状態に陥れます。

こういうときは、「ひと呼吸」いれましょう

問題のない商品かどうかを判断する際、情報ソースの違う「セカンドオピニオン」を探しましょう。ネット検索でもいいですし、SNS検索でもいいでしょう。その商品名(講座名)や主催企業名をキーワードにして検索すると、立場の違う人たちの評価や意見が読めるかもしれません。また、その道のプロの意見が読めるかもしれません。

大切なのは主催側の情報のみで頭をいっぱいにしないことです。相手は商売でやっているのですから、自分たちに都合の良い情報しか出さないのは当然のこと。例えば「受講者の声」のようなものも、あくまでも主催側が準備した「情報」なのですから、それが真実であるかどうかは判断できません。準備されたシナリオで俳優が演じているだけという可能性も想定した方がいいのです。

ちなみに、こういった「翻訳学校」「翻訳講座」について、昨年末に、一般社団法人 日本翻訳連盟が次のリンクのような注意喚起文書を公開しています。是非、一読されて、御自身の判断にお役立ていただければと思います。

「一般社団法人日本翻訳連盟からのお知らせ」