翻訳横丁の裏路地

We can do anything we want to do if we stick to it long enough.

ミスを出さない工夫

2件のコメント

翻訳者の皆さんは翻訳ミスを流出させないために、日々色々な工夫をし、関所を設けて食い止めようと努力されていると思います。

どんな仕事もそうですが、ミスが見つかると「チェックを入れる」(関所を設ける)という対策が当たり前のように取られます。でも、そのミスを出さない対策までちゃんと取られているか?と言うと、どうでしょうか?

翻訳におけるミスも、「やっちゃった」あとから網をかけて捕まえる事には真面目に取り組んでいるものの、「ミスしない」ための対策は意外と蔑ろにされているのではないかと思います。

ひとつの例として、誰でも知っている「スペルチェック」。人間がタイピングという入力動作の中で犯してしまうミスが原因で発生する「スペルミス」ですが、そのミスを発生後に検出するのがスペルチェッカーですね。

今や精度も高く、スペルチェッカーを掛けて修正しておけば問題が流出することもないでしょう。

でもね。考えて欲しいのです。ミスが出る、即ち不良が生まれるのです。生まれたものを見つけて駆除してるのが現状。これで良いでしょうか? 生まれた不良には常に流出の危険性があります。もし、仕事のフローをスキップしてしまったらどうしますか? 途端に流出です。フローだって守られない危険性があるのです。色々な複合的な要因で流出していまう危険性が常にあるのです。

ならば…

最初からミスしない

それが究極のミス対策ですね。

では、皆さん、今日からタイプミスしないで下さい。

「そんなの、ムリ!」と仰る声が聞こえてきそうです。はい、それは良く理解できます。では、「可能な限りタイプミスを減らして下さい」と言えばできそうな気がしてきませんか?

ミス撲滅はこの考え方が出発点です。目標は「スペルミスゼロ」、実施する事は「スペルミスを減らす」効果のある事。

あなたはスペルミスをしない為に何してる?

まず、以下のような質問を自問自答してみて下さい。

  1. 無くそうという意思を持っているか?
  2. 無くそうと意識して作業しているか?

「間違いは出るよ、人間だもの [みつを]」と最初から諦めていないでしょうか? 「どうせ、なくせないんだし、後のチェックで見つけて直せば同じぢゃん」と考えていないでしょうか? そんな事をチラッとでも考えてる人がいるならば、大馬鹿もんです。「ミスを出しても後でチェックして直せばいい」という考え方と「最初から出さない」という考え方では、アプローチも本人の能力伸長も大きく差がでます。

とにかく「ミスをしない」という事を大前提で物事を考える癖をつけましょう。その上で、ミスの出ない工夫をする。そして後工程のチェックを保険と考える。

さて、例に取り上げたスペルミスを、タイピングしている時に間違えない、もしくは間違えた瞬間に気付き、訂正できるようにするには何をしたらいいでしょう?

スペルミスの原因は、大きく分けると以下の2つではないかと思います。

  • 動作の間違い:例)タイプする指が隣のキーに触れて意図しない文字が入力された。キーを押す順番が反対になった…等。(本人意図と肉体動作のズレ)
  • 記憶の間違い:例)スペルに自信が無く、取りあえず入力した。(後で直せばいいや…という思考)

参考になるかどうか分かりませんが、私が社内翻訳をやっていた頃に取った方法をご紹介します。

  • 発音とスペルを関連付けて記憶する。(脳内記憶を助ける)
    完全にイコールにはなりませんが、発音からスペルが再生できるように記憶しました。
  • スペルとキーを打つ指の動作を関連付けて記憶する。(動作記憶と関連付ける)
    文字の並びと指の動きのシーケンスをセットにして記憶するように心がけました。

これは何を意図にしてやったかと言うと、発音とスペルを結びつける事でスペルの記憶定着を助け、そして、スペルをキー操作の組合せとセットで記憶する事で、スペルが動作記憶に定着する事を狙っています。これにより、発音→正しいスペル→動作メモリーに記憶されたキー入力シーケンスと、記憶の連鎖が起こり、スペルミスが発生し辛い入力ができるようになりました。単語全部を覚えるのか?という疑問が生まれるでしょうが、通常使い慣れない単語は誰だって辞書などを参照してスペルを確認する筈です。すなわち、そういう単語はミスを起こしづらい。一番危ないのは記憶に頼って入力している単語群なのです。それらの数はかなり限られているので、充分記憶できると思います。長い単語は発音記憶でスペルを再生し、短い単語で手癖のようにタイプしてしまうものは動作記憶で再生する。この2つの記憶が相互に作用してスペルミスを防止しているのだと考えています。この方法を継続した事で、私はかなり長文の英訳を行っても、スペルミスが多くて2~3単語程度しか紛れ込まなくなりました(当時)。

この手法は、とにかく正しいスペルを覚える事を意識していましたから、あいまいなものはすぐに辞書で調べ、発音を確認し、発音しながらスペルをゆっくりタイピングしながら覚える。手癖のようにタイプできるようになるまで、登場するたびに同じ作業を行って覚える…そんな感じです。ミスはどのように意識されるのか? それは、発音とのズレで認識されたり、記憶された動作記憶と違う動作をした時に違和感として感じられるのです。動作記憶については、繰り返しのトレーニングが必要なのですが、毎日翻訳をしていれば自然と鍛えられます。大切なのは「意識してやる」と言う事です。そう、最初の設問にあった「無くそうという意思を持っているか?」「無くそうと意識して作業しているか?」です。意識をして行う事が大切なんですね。

さて、例にスペルミスを取り上げましたが、その他の翻訳ミスについても考え方は全く同じだと思います。「無くそうという意思を持ち、無くそうと意識して作業する」という強い意志を持ち、その上で、出来うる対策を考えて実施するという事が大切だと思います。これは、玄人、職人になる過程と似ていると私は思います。だらだらと「とりあえず」みたいな意識に元に、切れ味の鋭い精神など生まれる訳がありません。そこにプロの意識が生まれないのと同じだと思います。

我々は翻訳のプロとして、玄人らしい仕事の考え方、アプローチで、ミスを出さない事を目標に仕事をしていきたいものだと思います。

作成者: Terry Saito

某社翻訳部門の中の人です。 詳細は、以下のURLよりどうぞ。 https://terrysaito.com/about/

ミスを出さない工夫」への2件のフィードバック

  1. 私も常々「ミスをしない最善の方法は、『ミスをしないぞ』意識を持つ」ことではないかと思っていましたので、こちらの記事には共感しました。人間、誰でも、自分以外のもの(ヒトやプログラム)などに何かを任せると、その「何か」に対する意識は疎かになってしまいますよね。かといって、私のように、入力時に注意し、アナログに視点を変えて何度も見直すというやり方も、最善とは言えないような気がして、まだまだ試行錯誤中です。

    • Moriiさん、コメントをありがとうございます。

      仰る通り、何かに任せるとそれに依存する気持ちを生み、その結果、意識面で手抜きが発生するのですよね。

      凡ミスは注意してれば防げるが、注意してても流出する。そういう性質のものですよね。この言葉の本質は、人が注意を怠らない事が前提にあり、それでも流出するものはツール類で引っ掛ける…と言うことだと考えています。

      私が間違ってるよ!と言いたいのは、ツール類を導入する事で人間が安心してしまって、手抜きをしてしまう事。ツール導入の意味を勘違いしてますよね。
      人間側は何も変わらず、継続して気を引き締め、その上で、自分の能力不足をツールに任せる…そういう考え方が大切だなぁと考えています。