翻訳横丁の裏路地

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たかがトライアル、されど…

トライアル(試訳)は、翻訳者にとって避けては通れないものではないでしょうか。エージェント相手でもソークラ相手でも、多くの場合、トライアルを課せられるのが実状だと思います。トライアルにパスすることで翻訳会社へ登録されたり、仕事を依頼されたりする訳ですが、一体、このトライアルにパスする基準は何なのでしょうか?

翻訳者さんの話しを聞いていると、この辺りの考え方に誤解があるように感じることが多いです。トライアルの合否が「翻訳の善し悪し」だけで決定していると考えている方が多い。実際には「翻訳の質」がある基準レベルを満足していれば、それ以外の要素が判定に影響することになります。そのトライアルの合否判定項目と基準は、トライアルを課している翻訳会社/ソークラがそれぞれ独自の考えで決めています。また、その項目の優先度や基準も案件によって変わるのです。

例として、業務力というものを見るケースもあります。指示した内容と違うことをすれば、翻訳以前の問題ですから、その時点で不合格判定するわけです。メールでのやり取りの仕方や内容から業務力を判断しているケースもあります。とびっきり翻訳の質が高いわけでもない限り、業務を進める上で手間の掛かる人よりは、飲み込みが良く、社会人としての常識を持った人と仕事をしたいと考えるのは、自然のことだと思います。

某SNSで話題になったのですが、「できるだけ早く」「なるはや」で依頼されるトライアルは、依頼している側が「急いでいる」ことが明白ですよね。機動力がありフットワークの良い翻訳者を直ぐ欲しいという意思が読み取れます。この場合のトライアルの基準には、当然、ある基準の翻訳の質が求められるのと同時に、どれだけ早く正確な対応ができるか?ということも判断の基準になっています。また、こういうケースの場合、早い者勝ちの可能性もあります。条件に合う翻訳者が見つかれば、そのトライアルは終了ということです。後から出されたトライアルは評価されることもなく、不合格となるわけです。

つまり、トライアルの合否基準は、翻訳のみならず、色々な条件から成り立っていると言うことです。

じゃ、どうすればトライアルに合格するのか?

当然ながら最初に来るのは「翻訳」です。翻訳がダメでは、どんなに他の条件が合致しても合格するわけがありませんね。翻訳の技術を磨くことは、翻訳者にとっては永遠のテーマです。では、翻訳以外は?と考えると、それはそのトライアルがどういう条件で課されているのかを読み取ることです。何を判断されているのかを読み取ることだと思います。そして、それに合った対応をする。これは想像力勝負のところもありますが、経験を積むと段々と分かってくるところもあるでしょう。自分がその条件に合わせられないのなら、潔く諦めるなど、自分なりの判断基準も決めておくことが必要だと思います。

翻訳会社や案件で翻訳の基準も合否条件も違う。そんな性質のトライアルですから、不合格だからと言って気落ちする必要はありません。あなたの翻訳がその翻訳会社の基準に合わなかっただけ、もしくは条件が合わなかっただけなのですから。大切なのは、そのトライアルは何を条件としていたかを考え、それに対して自分は正しく対応できただろうか?ということを謙虚に反省することだと思います。また、翻訳でマズかったことがなかったかを再見直しして、次のトライアルへの対策を立てることだと思います。