翻訳会社とのやりとりの中で、相手の話にほだされて、情け心から無理な案件を引き受けてしまう方の話をよく耳にします。「信頼関係を築くため」とか「関係悪化を心配して」とか、いろいろと後付けの理由を聞きますが、どれも結局は自分に対する甘えにしか私には聞こえません。
打診時に提示された条件が、問い合わせの度にどんどん厳しくなっているのに「お客さんが~」とか「他に頼める翻訳者さんがいなくて~」とか泣き付かれて、情にほだされて仕事を請けてしまう。こんな話を聞いていると、相手は悪徳セールスに似た交渉術を使っているなぁと感じるのですが、その術にしっかりと引っかかっているように見えます。
●仕事を請ける条件を自分なりに決めていますか?●
例えば文書分野、技術分野、分量と納期。そういうパラメーターで自分が仕事を請ける条件を決めているでしょうか?この条件を超えて仕事を請けると、例えば品質を担保できなくなるとか、体調を崩して数日仕事ができなくなるとか、そういう限界点のことです。(もちろん、ある程度のマージンは持つのですが)
仕事を請ける条件を明確に自分の中に決めておけば、相手の話術や交渉術に乗せられて、その場の気分で無理な仕事を請けることは少なくなるはずです。
無理は必ずどこかに現れます。それが翻訳なのか別のものなのかは分かりませんが、それにより顧客の信頼を失う可能性もあるわけです。「相手のため」と思っていることが「仇」になりかねないのです。まさに「情けが仇」です。
プロというものは、自己管理ができなくてはなりません。心理的なものもそうです。また仕事の交渉ができなくてはなりません。自分の最高出力を阻害する要因をしっかりと認識して、それが達成できないならば潔く仕事を断る、そういう意識が必要だと思います。