翻訳横丁の裏路地

We can do anything we want to do if we stick to it long enough.


翻訳フォーラムシンポジウム UST放送あります。 #FHON2012

本日6月15日に、翻訳フォーラムシンポジウム「翻訳者の頭ん中 翻訳中の思考プロセス」が開催されます。

非常にありがたい事に、その模様がUstream放送にて配信され、Twitterでも実況中継されます。

プログラム内容を見ると、見逃せない内容ばかりですので、是非、ご視聴下さい。
ちなみに、私がUstream放送を担当させて戴きます。

★翻訳フォーラム シンポジウム「翻訳者の頭ん中 翻訳中の思考プロセス」
日時:6/15 13:00-18:00(JST)
ツイッター中継:@FHONYAKU
ハッシュタグ:#FHON2012
Ustreamライブ: http://www.ustream.tv/channel/honyakuforum


JTFセミナー「2秒×1000回=30分のなぞ」を聴講してきました。

5月25日に行われた日本翻訳連盟(JTF)主催の翻訳セミナー「2秒×1000回=30分のなぞ ~翻訳業務でのWordマクロ活用とWordのチューニング方法~」を聴講してきました。少し遅くなりましたが、感想を書きたいと思います。

講師は、Microsoft MVP for Word を受賞された新田順也さんです。

私の今年のテーマの一つが「マクロ」による翻訳業務、および翻訳完成品のチェック作業の効率アップ/精度アップで、独学ながら Excel VBAや Word VBA を勉強しているところなのですが、まさしく、その目的にピッタリなセミナーがJTFのホームページでアナウンスされたので、即座に申し込みをしました。

今回、セミナーを受講して思ったのは、マクロは実際のデモを見る事が一番大切。特にその効能を理解していない相手を説得するには、物凄く効果的な方法です。

セミナーではマクロのデモンストレーションが主で、話されたマクロの話は、新田さんのブログ「みんなのワードマクロ」を読むと、セミナーの内容に加え、更に深い情報を得る事が出来るので、そちらをご参照頂ければと思います。

セミナーを通じて感じたのは、新田さんのマクロに対する思い入れ、仕事に対する思い入れ、マクロを道具としてどう使いこなし、翻訳という仕事に活用しているのか…そういった想いを強く感じる事ができました。

心に残った言葉は以下のもの:
・Wordを支配する。
・ワードマクロは翻訳はしない。
・マクロは業務支援のツールである。
・使い方次第では翻訳者の能力を引き出してくれる。

全くの同感だ…と思いながら話を聞いていました。翻訳者が仕事をする上で、その原稿や翻訳物はほとんどの場合、Microsoft Office を使って作られているのが現状です。

仕事の玄人であるなら、道具を使いこなす事が職人への道だと言うのは、世界が違っても言える事ではないか?と思うので、Microsoft Office製品を使いこなす事は、意識して努める事なのだと思います。

そして職人は、道具を自分の使い易いように改善する…それがまさしくマクロなのだと感じました。

新田さんの言葉の端々に感じたのは、一貫して「マクロは道具である」と言うメッセージです。「手段を目的にする」「道具に使われる」と言った言葉がありますが、そうなってはいけないぞ!と言う警告だと思います。

マクロの設計思想にも、その考えは反映されているようで「主導権をWordに渡さない」と言う考え方には、とても新鮮さを感じました。

マクロはエクセル、ワード、パワーポイントに実装されているので、使い方によっては、我々の翻訳作業を強力に支援し、周辺作業を大幅に簡素化してくれる可能性があります。

新田さんが仰っていた通り「繰り返し作業、面倒な作業」をマクロに肩代りさせる事で、小さい無駄な時間の改善が、結果的に大きな時間的余裕を生み出す事になります。

翻訳者の付加価値は、「翻訳」する事です。それに付随する周辺作業時間は極論言えば無駄な時間ですから、それらを自動化により、極限まで減らす事によって、本来、費やすべき翻訳の時間を増やし、翻訳者としての付加価値を上げる…と言うアプローチは、とても正しい事だと思います。

マクロは「作業を自動化」してくれる訳ですが、それは作業を「スピードアップ」してくれるだけではなく、毎回「正確に」行ってくれる所がポイントで、品質改善にも繋がるという認識も持って、マクロ利用に積極的になるべきだと思います。

マクロがよく分からないと言う方は、一度、新田さんのマクロ講座を受講されて、そのさり気ない便利さに触れ、幸せな翻訳ライフに踏み込まれると良いと思います。

最後に、当セミナー開催前に採ったアンケート結果を話されていましたので、そのデータを以下に記述しておきます。

アンケート数 59
Q:ワードマクロ使った事あるか?
未経験 27
利用 1/4
作成 1/4

Q:TRADOSなどの翻訳支援ツールを使っているか?
1/3

セミナー参加者に無償で、マクロ(アドイン)が提供された。マクロが50点ばかり入ってる。

ずらずらとデモンストレーションして下さった機能は以下のもの:
テキスト貼り付け
ワードから英辞郎検索
1ページの行数調整
ページの余白調整
全角半角置換
半角全角置換
上付き変換
コメントの書き出し機能
フォルダー内のファイル名一覧
JTFスタイルガイドの適用


本日!! JATセミナー「今日から翻訳生産性をターボブースト!」

本日21日14時より、渋谷フォーラム8にて、日本翻訳者協会(JAT)主催のセミナーが行われます。

タイトル:今日から翻訳生産性をターボブースト!
講演者:山本ゆうじさん
詳細は、JATホームページをご覧下さい。

事前登録なしで参加出来ます。JAT会員無料。非会員 1,000円。今日、時間がある方は参加されてみては如何でしょうか?

なお、今回のセミナーは初めての試みとして Ustream 放送でライブ配信がされます(但し、JAT会員のみを対象としたパスワード制限された放送になります。パスワードはJAT MLで既に連絡されています)。地方在住のJAT会員には嬉しい試みだと思います。今日は技術支援(になるかどうか分からないけれど)で私も現地入り致します。

現地で見掛けたらお気軽にお声掛け下さい。

USTREAM放送:



Free desktop streaming application by Ustream


東北博の誤訳問題を斬ってみる

「東北博」ホームページの誤訳が報道(参照:朝日新聞サイト)されて以来、 Twitter 上の翻訳関係者の間で、この話題で賑わっています。報道によれば、「東北博」ホームページの外国語ホームページに多くの誤訳が見つかり、13日に修復の為にサイトが閉鎖されたとの事。(東北博覧会の英語サイト)

(具体的な誤訳例(出典):朝日新聞デジタル)

今回の誤訳問題の本当の原因背景は分かりません。少なくとも、問題の東北博の他言語ホームページ上に「This page is translated using machine translation. Please note that the content may not be 100% accurate.」と表記がある事から、機械翻訳を利用した翻訳物であるという事は間違いないです。また、以下に引用した記事を読むと、その機械翻訳品がそのまま最終翻訳品として使用され、当事者達のチェック・修正もされないまま公開された事が問題のようです。

翻訳業務は、HP運営を担う業者が東京都内の専門業者に再委託した。日本語版を作成すると、自動翻訳される仕組みになっていて、東北特有の固有名詞が辞書機能に無かったのが原因だという。外国語版のHPには「機械翻訳のため、100%正確でない」と断り書きを添えていたが、観光庁も業者も翻訳結果を確認していなかった。観光庁観光地域振興課は「自動翻訳の誤りを見つけるボランティアを募り、総力戦で翻訳ミスを修正し、4月下旬には外国語版を再開したい」と話している。(河北新報 4月14日(土)6時10分配信より引用)

この記事から分かる事は以下のような事です。

  • 「観光庁−HP運営業者−翻訳会社」という図式で、仕事がなされている。
  • 日本語版を自動翻訳している。つまり、機械翻訳の結果がそのままHPに表示される。
  • 地方特有な固有名詞が辞書になく、適切な訳が出力されない。
  • 依頼元の観光庁もHP運営業者、翻訳業者のどれも、翻訳結果を確認していない。

また、他の記事等を読み進めると、以下のような事も書かれています。

  • 翻訳会社が、実行委員会に固有名詞の一覧表の提示を申し入れたが、受け入れて貰えなかった。(ソース)

今回の問題は、秋田県など外部からの指摘で発覚したようですが、この事は、ホームページの最終使用者(読者)による指摘であると考えるならば、市場に受け入れられない翻訳仕様であったという事が言えます。では、この最終仕様を決める責任を持つのは誰か?というと、発注者です。今回の事態の責任という点だけを見ると、発注者の責任だと言えるのではないかと考えています。

ただ、考えなくてはならないのは、概ね発注者は「翻訳」という商品の性質も性格も理解しない場合が多いのです。「翻訳」というものを一般の人々が正しく認識できていない事が大きく関係している訳ですが、とかく言葉の「置換」であるという誤認識をされているケースが多い。そういう認識の元で最終仕様を考えた場合、どうなるでしょう?「固有名詞の一覧表の提示を受け入れて貰えなかった」という点から考えても、発注者はそこに重要性を感じておらず、一体、一覧表がないと最終翻訳物へどのような影響を及ぼすのかを認識していないのが分かります。

我々、翻訳業界側の人間として考えたとき、何よりも問題なのは翻訳会社ではないかと思うのです。「翻訳」を職業とし「翻訳のプロ」「言葉のプロ」として仕事をしている翻訳会社側が、何故、プロとして、海外に対して情報発信するホームページにふさわしい翻訳となるよう最終仕様を、発注者側に提案しなかったのだろうか?説得しなかったのだろうか?と疑問に思うのです。確かに、発注者側に押し切られる事もあります。でも、そのまま仕事を請けてしまう事によるリスクを考えたのでしょうか?ましてや、このケースは多くの人の目に触れるホームページです。いくら「機械翻訳なので100%正しくない」という但し書きを付けたとしても、市場が受け入れなければ、その責を問われるのはやむを得ないでしょう。昨今は、道義的責任も企業は問われます。そう考えていくと、発注者にそのままで良いと押し切られて「はい、そうですか、では、その仕様でやります」という判断にはならない…しては、ならないと私は思うのです。その辺りの判断を、一体、この請け負った翻訳会社はどうしたのだろうと非常に興味があります。

私はこのケース、翻訳会社側の責任も結構大きいと思うのです。

それから気になるのは、当事者が「発注者」「HP運営業者」「翻訳会社」と3者いる訳ですが、誰も最終翻訳物の確認をしていない点です。仕事として誠にお粗末です。私は昨年、JTF主催の翻訳祭で講演した際、「クライアントさんよ、翻訳会社を良きパートナーとして捉え、相談して共に良い翻訳物を作って行こうという姿勢で取り組んで下さいよ」という趣旨のメッセージ出しをしました。この背景は、まさしく上記したクライアントの認識している最終仕様を、我々翻訳のプロの意見やアドバイスを吸い上げて、最終読者(最終使用者)の満足する翻訳仕様に可能な限り近づけるために、我々をもっと積極的に使ってくれ!という意図があったからです。

今回のケースを見ると、どうも、この3者間ではそのようなコミュニケーションが取れておらず、3者とも自己完結型の仕事に終始しているのではないかと勘ぐってしまいます。

さて、ここで「機械翻訳」について、私が考えている事を書きたいと思います。

「機械翻訳」という言葉の印象は、報道等を見ていると、世間に誤解を与えているような印象が拭えません。そこで、ちょっと極論で言いますが、一般の方々に正しく理解頂きたいと思うのは、機械翻訳物は「中間完成品」だという事です。技術が進歩しているとは言え、まだまだ100%ではなく、訳間違いもあるのです。機械翻訳の後、各種のチェックと修正を経て、初めて販売できる最終翻訳品が完成します。

機械翻訳した中間完成物を最終翻訳物として利用するケースも増えてきているものの、その場合は、例えば読者が限定される社内文書であるとか、ニュースなどの即時性を求められる情報、とりあえず意味の把握に使用する文書など、その使用領域は限定されると考えています。限定読者や情報の一次的伝達という目的において機械翻訳物をそのまま利用する事ができるでしょう。

今回のケースは、観光促進を目的としたホームページの翻訳ですが、さて、その目的に機械翻訳品は正しい選択なのか?概ね「No」と判断する人が殆どだと思います。つまり、機械翻訳物は目的に適していません。やはり、機械翻訳という特性を正しく理解し、その上で適用できる文書分野、情報分野を吟味した上で「機械翻訳物」のそのままの使用可否を判断するのが大切だと思います。

最後に、この翻訳は無償で翻訳業者が請け負ったそうです。被災地復興の手助けになればという思いからだったのでしょう。まさか、そんな事はないとは思いますが「無料だから質が悪くてもいい」という意識が働いていない事だけは祈りたい。一般論として「無料、もしくは通常より低価格だから品質は悪くてもいい」は大間違い。価格に関係なく、質の悪いものを世に出すのは、その翻訳者、翻訳会社にとって命取りになります。

翻訳の手直しもボランディアを募ってやると記事には書いていますが、私の伝手で得た情報ですと、有償で翻訳者に修正作業をさせようとしているようです。ただ、その費用を観光庁が負担するのか、その翻訳会社が泣くのかは分かりません。

関連リンク:


GlossaryMatch (置換機能付き用語集シート)

先日、ある方からネット上で見つけたと言うエクセルマクロを頂きました。それは、エクセルの用語集からワード文書の文字列を自動置換するというものでした。

それをベースに更にあちこちネットを探って色々なスクリプトを学習し、自分用に作り直してみました(笑)。ある程度使えるものになりましたので、公開したいと思います。

GlossaryMatch

翻訳者さん達へのインタビューを通して分かったのは、エージェントから提供される用語集にエクセルが多い事、エクセルの方が使い勝手が良いと言う意見が多かった事です。加えて、自分が使っている用語集もエクセルで管理しているという事も考えて、少し使える形にしておくのは皆さんの利益になるのでは?と思い、無い知恵を絞って作ってみました。

あくまでも自分使用前提なので、皆さんの環境では使えないものかもしれません。また、Visual Basic なぞ、全然知りませんので、バグだらけかもしれませんから、AsIs前提でお使い下さい。(詳細は readmeシート を参照の事)

【特徴】

  • シート項目は好きなだけ増やせる。
  • シートの数も好きなだけ増やせる。(辞書系列でファイルを分け、細分類でシートを分けると言った使い方ができる)
  • マクロがバージョンアップになったら、シートを新しいエクセルファイルへコピー・移動をするだけで良い。
  • 原語でソート(並び替え)できる。
  • ワードファイルの本文、ヘッダー、フッターの置換が個別に、もしくは一括してできる。
  • 複数のワードファイルを一気に置換作業できる。
  • 原語を上書きしてしまう「完全置換」と、原語と併記する「併記置換」の2つのモードを持っている。
  • 井口耕二さん作 SimplyTerms 互換のテキスト型辞書ファイルを出力できる(筈w)。
  • Word版 GlossaryMatch 用辞書ファイル(TAB付テキストファイル)を出力できるようにした。

【使用例】

  • 単純たる用語集として使用し、ソート機能だけを使う。
  • 会社名、組織名といった固有名詞のみを用語集登録し、ワードファイル翻訳原稿にあるそれらの固有名詞を一括完全変換して、翻訳の準備原稿を作る。
  • もしくは、専門用語や企業方言用語を併記変換し、翻訳用の参考資料として使用する(提供する)。

自分の使用の中で改善・修正したものは、今後、同様に公開していきます。