標準工数管理を導入したきっかけは、翻訳品質を保証する上で必ず確保しなくてはならない時間を算出し、納期設定の根拠にするためです。翻訳時間や翻訳チェック時間は、経験則である程度の確度で見積もれますが、多くは属人的な見積判断で根拠としづらい面がありました。
そういった品質保証的背景から、標準工数を定義する上で、特に翻訳チェックは、チェックすべき項目が正しく定義されている必要があります。また、翻訳や翻訳チェックに必要となる時間は、それを決定する因子が多いため、なかなか定義できないものですが、それらの条件を固定した場合には定義できるものだと考えています。。
今回、ベテランの産業翻訳者数名のデータと私の経験値をベースに翻訳と翻訳チェックの基準時間を定義しました。この数値は大きく実状から離れていないと思いますので、一般に適用可能だと思います。工数管理上で大切なのは、人の特性と案件の特性を余裕率と難度係数で管理するところで、経験値が蓄積してくれば、精度の良い見積もりが可能となります。
なお、算出された工数は、翻訳品質を担保する上で必要な時間という位置付けで運用します。工数を割り込むような納期は設定してはならないということです。
この辺りの話は、今年の翻訳祭の10分ミニ講演の中でも触れるつもりです。