和文英訳の総翻訳標準工数:
翻訳者が行う「翻訳」と「翻訳チェック」。これらを合わせた「総翻訳標準工数」を算出してみる。
総翻訳基準時間 = 翻訳基準時間 48RU + 翻訳チェック基準時間 30RU = 78RU
通常行う案件をいつもの環境で翻訳しチェックする場合の総翻訳標準工数を求めるために、余裕率を標準的な40%、そして難度係数を通常的な1で計算すると、以下のようになる。
78RU × ( 1 + 0.4 ) × 1 = 110RU
総翻訳標準工数:110RU/原文1文字
RUだと分かりづらいと思うので、秒数に直してみると6.6秒/原文1文字ということになる。これは即ち、ちゃんとした翻訳チェックも含めた翻訳作業速度が、時速545文字、1日8時間稼働して4,364文字ということになる。
もちろん、個人の経験、知識、翻訳環境や使用するツールなどによって翻訳とチェックに必要となる時間は変化するため、自分なりの余裕率を見つけ出す必要がある。なお、翻訳チェック作業と翻訳作業は分けて行われており、また必要な翻訳チェックがすべて行われることを前提とした工数計算になっている。なお、翻訳時間と翻訳チェック時間の比は、経験的におよそ6:4~7:3である。
総翻訳標準工数の運用:
翻訳者の場合、実翻訳案件を行う中で「余裕率」と、案件分野や難易度により違う「難度係数」のデータを積み上げ、実感に合う標準工数が導き出される初期値の「余裕率」「難度係数」を決める。その後は実業務と比較しながら補正を行って管理する。
翻訳(とチェック)に必要な正確な工数を導き出すことに使用できる。これは翻訳品質を保証する上で許容できない限界納期を把握することにも使えるため、翻訳発注者の提示する設定納期の是非が判断できる。また、余裕率は、自分の翻訳能力の伸長度を測るパラメータとしても利用できる。
翻訳会社においては、翻訳者毎に余裕率を管理し、同じく案件種類や分野、内容による難度係数を管理する。それらに基づいて、翻訳品質を保証可能な翻訳工数を算出し納期決定することに使える。また無謀な短納期を要求するクライアントに対して、説得材料として使える可能性がある。