昨日(11月29日)開催された日本翻訳連盟主催の翻訳祭に参加してきました。
今回は初めてトラック1・セッション3の枠にて講演を担当させて頂き、非常に思い出深い翻訳祭となりました。
私は、朝からずっとトラック1に張り付いて聴講しました。
トラック1のセッション
- セッション1:新しい標準日本語スタイルガイド(翻訳用)を目指して
- セッション2:効率的な翻訳発注は幻想なのか
- セッション3:品質に満足ですか
- セッション4:機械翻訳とポストエディット実務2011
セッション1:新しい標準日本語スタイルガイド(翻訳用)を目指して
以前、講演をされたお三方に、スタイルガイドについて色々とご質問を頂いた事があるのですが、私の仕事において、スタイルガイドなるものを必要とした事がなく、回答に困った事があったのです。
その時からスタイルガイドに関する情報を入手し勉強していたので、今回はこのセッションは必ず聞いておこうと決めていました。
私の仕事の場合、和訳自体が然程多くなく、また、IT分野のようにスタイルガイドの使用を前提とされている翻訳も皆無なので、じゃ、一体、何か使うエリアはないのか?と疑問に思っていたのです。講演を聴くと何かヒントが得られるかもしれないという期待もありました。
細かな話は抜いて、講演から頂いたヒントは、用語集やTMへのスタイルガイド適用が有益そうだという事です。どう運用するかは、これから考えていこうと考えています。
セッション2:効率的な翻訳発注は幻想なのか
講演者の牧野さんと彼の会社の位置づけが、私と私の会社と非常に似ているため、その内容にはとても興味を持っていました。
「翻訳会社は単なるベンダーなのか、パートナーなのか?」
これは、まさしく私も問い掛けたいメッセージです。
翻訳会社の選定の話は頷きながら聴きました。新しい翻訳会社への発注は「ギャンブル要素がつきまとう」には完全同意。既存の翻訳会社への発注でも、時々ありますから。
品質保証部の話に関しては、納品物の品質評価の基準が技術検証に重きを置いている印象で、私のところとは少し違うかなという感想を持ちました。
総じて、私の講演内容と被るところも多く、共感を持ちながら聴講いたしました。
セッション4:機械翻訳とポストエディット実務2011
機械翻訳の現状と、ポストエディットとは何なのかを知りたくて聴講しました。翻訳会社の人間であれば、機械翻訳の動向を無視する訳にはいきません。
講演の内容を聞き初めて直ぐに感じたのは、機械翻訳+ポストエディットで求めている翻訳の質は、私が求めているものとかなり食い違っているという事です。
私の期待は、通常の翻訳品と同等品質を達成する手段として、ポストエディットするものと勝手に解釈していました。しかし、そうではなくて、翻訳したもので読者が意味を把握できる度合いの差を、ライトエディットとフルエディットで使い分け、時間とコスト、それに翻訳の質のバランスを取る・・・というアプローチである事を知りました。
つまり、内容が理解できるか否かがポイントで、速報性を重要視される文書や情報を、読者へ意味を伝える為の翻訳手法だと思われます。
なので、私が期待しているものとは明らかに違う世界の話だと認識した途端、自分の講演疲れがどっと出て、途中から頭に入っていません(笑)
なんだかマニアックな質疑応答がされているのだけは印象として持っています。
さて、私の講演について少しだけお話しておきます。
セッション3:品質に満足ですか
このセッション3の枠は、翻訳祭がアナウンスされた時点では「企画中」となっておりました。なかなか講演を受けて頂ける方が決まらず、苦慮されていたと伝え聞いています。この枠での講演の打診を頂いたのが10月末。社内に説明して、上の了解を貰いお受けしたのですが、クライアント対象という点がテーマ選定や講演内容を考える上で、とても難しかったです。
まずはプログラム掲載の問題もあり、テーマと概略決めを迫られる訳ですが、そんなに簡単に決まる訳もなく、取り合えず自分の得意分野である品質をネタにしておけば潰しが利くだろうという安易な判断でテーマを決めた訳です。それがさらに内容・ストーリー決めを苦しめる結果になりました。
内容的に果たして皆さんのお役に立てたでしょうか?それがとても気になります。
柄にもなく、やはり緊張しました。口の中はカラカラで舌がひっついて呂律が回らない(笑)。醜態を晒したかもしれませんね。
講演後、何名かの方にご挨拶を頂き、感想を伺い、それなりにお役に立てたのだと感じる事が出来たので良かったです。
1つだけ、使用した資料の中から私が作った「翻訳の顧客満足度クローバー」をこちらに公開しておきます。
翻訳の顧客満足度クローバー

「顧客満足度=品質」か?の問いに対する私なり答えとして、これを使いました。
何よりも大切な頭になるのは、やはり「品質」。そして大切なのは「納期」と「価格」。それらを良い「サービス」と「信頼性」で支える事によって、顧客の満足を得ていく…という話をさせて頂きました。
このクローバーは翻訳のみならず、どんな業界でも同じく適用出来る筈です。QCDが重要だけれども、それを支えるサービスや信頼性が崩れると支えられなくなる。
そういう意図を表したくて、クローバーにしてみたのです。
ご自由にお使い下さい。