翻訳横丁の裏路地

We can do anything we want to do if we stick to it long enough.


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昨日の会議通訳を経て

昨日、突然依頼された米国企業との電話会議に通訳のサポートと言う立場で立ち会ってきた。

担当された通訳者さんは、他のある特定依頼元の通訳のみを担当されていて、技術分野も違うのだが、技術的な話には及ばないと言う前提でお願いした。

私としても、通訳者さんの通訳業務を初めから最後まで見るのは初めてだったので、とても興味深かった。

その通訳を通し、私の経験則と照らし合わせて感じた、こうすべきだな、こうした方がいいな?と思った事をまとめておく。

通訳は、人の語る言葉を、単に別言語に変換すると言う単純なものではない。

スピーチなり、プレゼンなり、会議なり、何がしかのイベントのコミュニケーションの一部として、そのイベントの機能を失わず、むしろそれを高めるべく通訳は機能する必要があると思う。

昨日感じた失敗例も上げ、羅列してみたい。

・会議前に会議に関する打合せがあるが(なければ要求する)、その場で会議に関する情報入手は勿論だが、どういうタイミングで通訳に入るかを確認しておく。
・またそれを会議出席者に事前通知して貰う。
・会議進行は誰がするのかを確認する。

概ね電話会議での通訳は逐次通訳となるが、どういうタイミングで通訳するかが、会議の進行に大きく影響する。

通訳慣れしているクライアントなら、彼らから通訳の入るタイミングを指定してくる事があるが、概ね、そう言う事を余りご存知ないクライアントが多いので、通訳側から積極的に確認した方がいいと思う。

昨日のケースでは、同通の勢いで、語り手が話している途中から通訳をされていたので、語り手の思考を遮断してしまっている事と、話の途中で相手側が話に食いつき、不要な質疑応答が発生し、会議の進行が行ったり来たりして、クライアントの思惑に沿わない進行に陥ってしまっていた。

会議における語り手の話す長さは、スピーチのような特別なコメント出しを行っている場合を除き、さほど長いものはないので、全てを話して貰い、意図確認して通訳しても遅くはない。
また、その語り手が話している途中で、他の会議出席者と議論になり、相手方に伝える内容が変わる事があるので、この通訳する間合いが会議進行にとって大切になる。

ただ、会議相手によってこの辺のアプローチは変わってくるので、やはり事前確認が欠かせない。

交渉戦略を気にしなくてはならない相手なのか、ざっくばらんに話せる相手なのかで遣り方は変わる。

・ミュートはされますか?どなたがされますか?

これは会議の開催元が気にすべき事で通訳者の責任範疇ではないと思うが、敢えて確認をしてあげる事は、プラスαの付加価値となるだろう。

昨日は全くミュートなし。こちらの話は相手に筒抜け。おまけに相手にはカタコトながら日本語を話してる方もいると言うのに、なんて自由なんだ!と感じた。

通訳は完璧なる言語変換機に徹すればいいと言う考え方もあるのかもしれない。ただ、人の介在するコミュニケーションの場に立つ通訳であるがこそ、担える役割もある筈。

言語変換を超えたコミュニケーションの通訳者、各種イベントの引き立て役と言う一歩踏み込んだ意識で、通訳と言う仕事を捉え、精進する事が大切なのではないか?と昨日の経験から思いました。それがまた、自身の差別化にも繋がるでしょう。