皆さんが既にご存知の通り、消費税が4月から増税となります。
詳しくは、国税庁ホームページにある「消費税法改正等のお知らせ」(平成25年11月)を読んで頂きたいのですが、消費税率、地方消費税率がそれぞれ平成26年4月に 6.3%+1.7%=8.0%、来年平成27年10月に 7.8%+2.3%=10.0% に増税となります。
そうです、8%への増税まであと1ヶ月。業界最大手(株)翻訳センターが外税方式へ移行したように、ちゃんとした翻訳会社からは増税対応について徐々に連絡が入り始めているようです。
個人翻訳者の方々が翻訳会社から報酬を受ける上で、単価に消費税等が含まれる内税式か、消費税等が別に計算される外税式かで対応は変わってきます。外税式の方は消費税の増税分が正しく転嫁されて支払いがなされる筈ですが、問題となってくるのは「内税方式」の単価で報酬を受けている翻訳者です。
以前書いた「円切り単価とは縁切り」の中の「消費税率の取扱いの点から見てみる」と「消費税率引上げ時に注意して欲しい事」で書いた通り、内税式単価は「翻訳作業への報酬(A)」と「消費税等(B)」で構成されているわけですから、
- 「内税方式継続」:外税に移行する事なく内税方式を継続する翻訳会社は、「消費税等(B)」の増税分を転嫁した新単価を設定して翻訳者へ通知すべき
- 「外税方式へ移行」:もしくは消費税率を別計算する外税方式への移行を決定した翻訳会社は、外税方式の新単価を設定して翻訳者へ通知すべき
という事になります。
ただ、エージェントにも色々な考え方を持ったところがあり、この消費税増税のタイミングで単価に対して色々な怪しい対応をするエージェントが登場する可能性もあります。しっかりと理論武装して毅然とした態度でエージェントと交渉したいものです。また、なかには消費税を翻訳者へ支払っていないとんでもないエージェントもあるようです。これについては、後ほど別途述べたいと思います。
まず想像できるのは・・・内税方式なのに4月以降もしれ〜っと同じ単価で翻訳依頼/支払いを行ってくるような翻訳会社です。これは消費税増税の適正な転嫁がされていない訳ですから、法律違反になります。もしくは、これは増税分のレートカットと同じ意味です。単価下げです。事前交渉もなく単価下げをするようなエージェントは信頼できませんから、取引継続は考えた方が良さそうです。
消費税増税まであと一ヶ月程度というこの段階で、消費税増税対応について全く連絡がない翻訳会社にはタイミングを見て問い合わせる方がいいでしょう。知らぬ顔をして4月へ突入するような誠意ないエージェントを早めに炙り出すことができるかもしれません。
「内税継続」「外税方式移行」ともに注意しておく点は以下のようなものでしょうか。
内税方式継続の場合:
- 消費税増税分の増額がなされた単価が設定される事。
例)
現単価 10円 = 報酬 9.52380952 + 消費税等分(5%) 0.47619048
新単価 = 報酬 9.52380952 + 消費税等分(8%) 0.76190476
= 10.2857143 => 10.29円
※小数点2桁までの単価設定をする場合
ざっくりとこんな感じでしょうか。どう考えても消費税率が変更になるたびに、こんな煩雑な計算をするのは面倒ですし、翻訳会社と翻訳者間で毎回合意を取るなどという作業もやってられませんから、素直に考えれば「外税方式」に移行した方が両者にとって幸せだと思います。(特に翻訳会社の立場で考えても、その方が楽)
外税方式移行の場合:
- 税抜きの単価設定がされ、端数が切り上げられている事。
例)
現単価 10円 = 報酬 9.52380952 + 消費税等分(5%) 0.47619048
税抜き単価 = 報酬 9.52380952 = 9.53円 (端数切上げ)
※小数点2桁までの単価設定をする場合
外税の場合、一旦単価が決定すれば、消費税率変更されても単純に計算されて支払いされる事になります。例えば 、単価 9.53 円と消費税等8% 0.76円 の合計が支払われる事になります。実際の支払い計算は、以下のような感じでしょうか。
支払い例)
単価 9.53円/文字、消費税率 8%、原稿文字数 3,654文字
翻訳作業報酬 = 3,654 x 9.53 = 34,822.62 => 34,823円 (切上げ)
消費税額 = 34,823 x 8% = 2,785円
支払い総額 = 37,608円
さて、ここまでは消費税が内税にせよ、外税にせよ、支払われている事を前提として書きましたが、なかには消費税を支払っていないと言うとんでも翻訳会社も存在するようです。
消費税の支払い要求を
消費税を翻訳者に支払いをしていない翻訳会社の言い分は、「課税期間の基準期間における課税売上高が1,000万円以下の事業者は、納税の義務が免除される」という納税義務の免除を楯にして、翻訳者の多くがこの対象となり、消費税を納めなくていいのだから消費税分は支払わない…という理屈のようです。ですが、国税庁の「納税義務の免除」の記述を読むと分かるように、この免除を受けているのは「翻訳者」であって「翻訳会社」ではありません。消費税の支払いをしていない翻訳会社は、本来は翻訳者が納税義務を免除される消費税をピンハネして自分達の収入にしていると言う事になります。
もし、取引のある翻訳会社が消費税の支払いをしていないのであれば、この機会に支払いを要求しましょう。
以上、私の理解の範囲で記事を書きましたが、間違いや追加がありましたら是非教えて下さい。正しい理解を共有して、消費税増税にともなう妙な対応をするエージェントとしっかりと対峙できる準備を助けたいのです。
なお、消費税増税に伴う理論武装をする上で、我らBuckeyeさんのブログ記事が大変分かり易く勉強になりますから、じっくりと読んで理解しておく事をお勧めします。(以下、Buckeyeさんのブログ記事リンク)
JETRO(日本貿易振興機構)のリンク
Facebookで流れていた情報ですが、海外クライアントを多く持つ翻訳会社が「消費税を支払わない」とか「消費税増税を転嫁できない」という連絡をしてきたようです。これに対して JETRO の以下のリンクが紹介されていましたので、転載しておきます。この翻訳会社は消費税の還付を受けられる筈で、ひょっとすると還付を受けた上で翻訳者への支払いを渋り、自分達の懐に入れているのかもしれませんね。