Twitter にて Baldhatter さんに依頼され「翻訳者の時給」を調べるべく、例の如くアンケートを実施しました。
[アンケート] 貴方の平均的な「単価×時間当りの処理量」を教えて下さい
総投票数は62。時給換算で3,000円〜3,500円を中心にして分布しているようです。
時給を知りたいとする背景のひとつには、実のところ、勤め人のような労働時間で働いたら、どれくらいの年収になるのか?と言う、一つの指標として、翻訳と言う仕事の現状を知る事が出来る点にあります。(税金は含まれてるのか含まれていないのか分かりませんが…)
厚生労働省の資料を見ると、平均年間労働時間は、平成20年度で1,813時間。但し、これにはパートタイマーが含まれています。それを除外した一般労働者は、1,996時間。これは、一日8時間労働したとして年間250日働く事になります。週休二日に一週間の休暇程度の余裕度でしょうか?
この1,996時間を使って逆算すると…
時給3,000円 = 5,988,000円
時給3,500円 = 6,986,000円
このレンジが、翻訳者の年収として中心にくると思われます。
ご自身の時給から、仮に一般と同程度の労働時間で働いたら年収は幾らになるのか?を知る上で、単純化して「時給×2,000(時間)」で計算するといいでしょう。
翻訳と言っても、色々な分野があり、それによって単価も違ってきます。分野別に見るとどうなのか?が気になりますが、今回のアンケートでは分かりません。
「翻訳で食べていく」には、どの程度の時給にしなくてはならないのか?
そこで、一般的な年代別の年収を知りたい訳ですが、国税庁が出している平成22年度「民間給与実態統計調査結果」を見ると、どうも年収額がしっくりきません。これは全てをひっくるめた数字だからと思われます。企業規模で分類された数字がないかを探してみたら、「大卒男、民間平均給与」を示しているホームページを見つけました。データが少々古いものの、1000人を超える企業の年収が分かります。
40代以上を見ると年収900万〜1000万円。これを逆算すると、時給5000円程度という事になります。
以前行った「フリーランス翻訳者の年収アンケート」の分布と比率が違うのが何故か?が気になりますが、これは年間の労働時間が上記の2000時間に満たない方、つまり兼業の方も含まれたデータである事が1つの原因だと思われます。
このデータは、今後もたまに見直し、加筆をしようかと思います。
【2020年8月19日加筆】
Buckeyeさんが、8年前のこの記事を題材にブログで考察を記事にされたのをきっかけに、久し振りに読み返してみました。
時給を求める上で行ったアンケートの質問が「単価×時間当たりの処理量」であったことから、回答者は単位時間当たりの翻訳量を単純に回答したはずで、そこには翻訳周辺作業(事前準備、調べもの、翻訳チェック、事務処理など)の時間はまったく含まれていません。
つまり、このアンケート結果をもって「時給」とするのは間違いです。私の本記事は、この時給値をそのまま使って年収を計算していますので、不適切です。
では、どれくらいが実態なのかですが、これは個人差があることですので、アンケートを採るなどしてデータを集めないとわからないでしょう。
ちなみに、私個人の翻訳者経験からくる感覚でいえば、翻訳に費やす時間は全作業時間の5割程度、もしくはそれより下回る印象です。
強引にこの(個人的感覚による)時間比率(50%)で計算すると、時給の中心値は、1,500〜1,750円ということになります。また、仮定として利用した労働時間 2,000時間で乗ずると、年収は 300万〜350万円となり、別記事「フリーランス翻訳者の年収アンケート結果」とほぼ符合することになります。ちなみに、日本翻訳連盟が発行している2017年度の翻訳白書とも合います。
なお、年間労働時間2,000時間は厚労省の資料に基づいていますが、さまざまな業種が含まれた平均値で、1日8時間労働で250日働くイメージになります。ただ、私個人のイメージからは懸け離れて大きい数字です。現在、大手企業の規定内労働時間は年間1,800時間くらいではないでしょうか。これに有給休暇が加わるので、実質的には1,650時間〜1,800時間のレンジ。
仮に年間売上高1,000万円を目指すとして「単価×時間当たりの処理量」を乱暴に計算すれば、12,000円程度必要です。単位時間当たりの処理量から必要単価が、現在の単価から必要な処理速度が逆算できますね。
以上、本記事がミスリードする危険性がありましたので、加筆しておきます。