翻訳横丁の裏路地

We can do anything we want to do if we stick to it long enough.


コメントする

【十人十色】翻訳者さんの質問に答えてみる

10月1〜2日に翻訳勉強会「十人十色」の広島・大阪遠征が行われました。この遠征に先立って、参加される翻訳者さんから質問を受け付け、それに対して会場で回答するというセッションが持たれたようです。

私もエージェントの立場で回答をして、今回遠征された井口さんへ託しましたが、紹介されたかどうかは不明です。ここに私の回答内容と補足説明を記したいと思います。

1)翻訳スピードが遅い

  • スピードが遅いので分量がこなせず、収入アップが難しい。
  • 専門として絞れる分野がないため、来る案件の半分以上が新しい案件となり、ゼロから調査が必要で非常に時間がかかる。

1. 収入=翻訳速度×単価×稼働時間

収入をアップするには、速度を上げるか単価を上げるか稼働時間を長くするかの三通りしかないのでしょうね。速度を上げられないのであれば単価(品質)を上げる。それもダメなら馬車馬のように長時間働くしかないでしょう。

自分が目標とすべき単価と速度は、自分が目標とする年収をまず考え、それから自分の年齢や体力、集中の持続力などの特性や条件を考慮して年間の稼働日数を考え、一ヶ月の稼働日数を考え、一日の稼働時間を考えて、それらに基づいて逆算して単価と速度を見積もる、そんな流れになるのでしょう。

どちらにしても、単価を上げ、(品質を落とさずに)翻訳速度を上げる事が、単位時間当りの収入をアップすることになります。

速度アップのポイント:

  • 人間がやらなくて良い事は、機械にやらせる。
  • ツールを使う。
  • ちゃんとした道具を揃える。(コンピュータ、ソフトウェア、辞書など)
  • いろいろな作業を時間制限を設けて集中して行う(だらだらやらない) → 訓練になる
  • 知識の蓄積をする。直ぐに取り出せるようにしておく。(用語の蓄積、訳の蓄積)

品質保証の効率と精度アップ:

  • ツールに人間の手助けをさせる。

2. 時間投資という考え方

自分の時間を仕事に投資しているという意識を常に持つ。その上で、効率的かつ効果的な時間投資を日頃から考える。無駄な投資になっていないかを考える。時間に対する意識が変われば、違ったやり方を考え出そうとするものですね。

3. 専門性の創出

スペシャリストであるべきかジェネラリストであるべきかは、取扱言語でも考え方は変わるようです。

翻訳者数が多い英語のような言語の場合、スペシャリストを目指し、希少言語の場合は、ジェネラリストを目指す。要は、自分が提供できる翻訳分野の需要をどう束ねるかでアプローチは変わるでしょう。専門分野は、自分が持っている知識のエリアや、強く興味を持つエリアから勉強して、徐々に隣接分野に拡げていき、コツコツと積み上げていくしかないと思います。

4. 調査力の向上

  • 突然、行き当たりばったりに調査を始めていないか?
  • 毎回、戦略を立ててから調査する。
  • その繰り返しが、効率的で正確な調査手法の構築に役立つ。
  • 調査に使用する情報ソースを日頃から増やす努力をする。

2)最近突然、仕事の依頼がほとんどゼロになってしまった(翻訳歴5年以上)クライアント様から特にクレームがあったわけでもなくパッタリ。

【ポイント】

  1. 1社もしくは限られた翻訳会社/クライアントへの依存体質からの脱却する。
  2. 「クレームのない」事が本当に問題がないことではない。
  • 日頃から取引先を増やす活動をする。→単価アップへもつながる。
  • 「クレームがない」から仕事がきているのか、「仕事の質は並だけども、仕事量が多くて溢れている」から仕事がきているのか、はたまたほかの理由なのかは判断が難しい。「連絡が無いのは良い知らせ」ではない。

エージェントとの関係にもよりますが、クレームがある場合というのはかなり酷い状態だと考えた方がいいと思います。ですので、連絡がないから「品質が良い」とか「満足して貰えている」と短絡的に解釈しない方が良いと思います。

3) 時間管理がうまくできていない。机に向かっている時間は長いものの、集中できない時間が長い。また、 毎日どれぐらい処理できて、全体の内どの程度進んでいるか、進捗管理のよい方法が見つからない。

【ポイント】

  1. 作業ログを付ける。ここに紹介されているWorkTimerを使ってみる。
    https://terrysaito.com/2013/06/06/作業時間計測ツールのすすめ/
  2. 進捗管理用のエクセルシートを作るなどして、管理する。
  3. 将来案件の予測、見積のベースデータとなる。

 4) 自分の翻訳がこれで正しいのか、どうすればもっと分かりやすい表現になったのかを指導してもらうことがなく、常に不安

【ポイント】

  1. 添削のある通信講座、セミナーを数多く受講する。
  2. 独り善がりな翻訳をしない。
  3. 一時的に投資をして、自分の翻訳を他者(例えば翻訳会社)にチェックしてもらう。

比較対象がないと善し悪しが判断できませんから、自分の翻訳を第三者がチェックしてくれる機会を持つしか方法はないように思います。

5)専門分野をどのように絞るか、あるいは増やしていくか、悩んでいる

【ポイント】

  1. 多角化の考え方は、既に持つ知識を活用できる近い分野を選んで学習する。
  2. 自分が好きで好きでたまらないこと(趣味だろうが何でもいい)へ絞る、または、広げていく。

6) 体調管理(肩こりなども含め)とモチベーション・集中力の維持に悩んでいる

【ポイント】

  1. 適度な運動を一日に一回は組み入れる。
  2. フリーランス翻訳者にとって「運動」は、仕事として見なして、必ず運動する。
  3. 仕事をする環境を見直す。身体に優しい体制で仕事ができるか、机やいすの高さ、キーボードの種類、モニターの高さや角度、室内の照明の明るさなど。
  4. 52/17ルールを導入してみる。
    http://99u.com/workbook/38813/use-the-5217-rule-to-maximize-productivity

こんなところかな〜?


コメントする

【聴講】英文読解力強化セミナー ~誤読をなくし、誤訳を防ぐ~

2015年9月19日にサンフレアーアカデミーで開催された深井裕美子先生の「英文読解力強化セミナー~誤読をなくし、誤訳を防ぐ~」を聴講してきました。このセミナーは人気シリーズのようで、私が聴講させていただいたのは、追加開催の回でした。(今後も追加開催されることを期待します。)

セミナーの最初は、過去に翻訳フォーラムや別の機会でも拝見したことがあるCMビデオでウォーミングアップ。私が目にするのは3回目ですが、そのたびに私の頭に浮かぶ訳は同じで、そして最後に辞書の解釈から「それはない」という結論を聞き「とほほ」となるの繰り返し。今回は休み時間にちょうど私のところへ先生が来てくれたので、思い切って自分の考えを話してみました。ネタバレになるといけないので、詳しくは書けませんが、辞書による解釈という視点ではなく、「訳」がどういうシチュエーションで使われるかという視点で私の考えには抜けがあったのです。もちろん、そこを意識しなかったわけではなく、ちゃんと意識はしたけれども、自分の取った判断が不適切だったということが理解できました。翻訳はリスクマネジメントだと私は以前から言っているのですが、その部分で大ポカをやっていたわけです。次回からは絶対に違った訳文が頭に浮かぶ自信があります(笑)

このセミナーは、こんな気付きが怒涛のように押し寄せるセミナーです。事前課題が2点出され、当日、提出。その課題を元に先生と生徒の間で訳文に対する考え方のキャッチボールをします。その過程を通じて、どのような視点で何を調べ、どこまでの深度で原文(この場合英文)を読み解き、理解をする(べきな)のかを学べます。受講する側の姿勢として大切なのは、自分が提出した訳文に帰結した理由、例えば原文の時代背景、時間、著者の視点、表現、単語、空間、関係性、対象読者、読者の視点などなど、どこまでの要素を読み取って意識し、何を調べ、その情報からどう判断して原文を解釈し、その訳文にたどり着いたのかを強く意識して、先生の話を聞くことだと思います。

私が聴講して感じたこのセミナーの目的は、「翻訳者として翻訳の玄人になる」ための知恵付けをしてくれているものだと思います。もちろん、英文を正しく読むことを目的としているけれども、本来の目的はもっと高いところにあって、例えば、以下のようなことでしょう。

  • 翻訳者は、翻訳のプロフェッショナルとして、自分の訳文に責任を持ちなさい。
  • そのためには、自分の訳文について、他人(顧客など)へ理路整然と説明ができ、場合によっては説得できなくてはなりません。

セミナーでは、いろいろな具体的手法も提示されましたが、それらは実際にセミナーを受けて学んだ方が身に付くと思いますので、ここには書きません。

この種のセミナーを受講した後に耳にする話に「分野の違い」があります。自分たちがやっている技術翻訳とか医療・医薬翻訳など産業翻訳系で取り扱う文書と、セミナー課題の分野の違いを指しているわけですが、そこで「だから、全然関係ない」と判断されるようだと、それは大間違いです。

私が思ったのは、自分が取り扱う分野の文書を理解し翻訳する上で、必要となる知識や調べものは、経験則から「この辺までやれば顧客期待通り」という線引きを脳内でしていて、日々の繰り返しの中で無意識に定着してしまっているのではないかと思うのです。この見えない「線引き」が、翻訳者をダメにしてしまう恐ろしさを持っていると思うのです。このセミナーは、その無意識に根付いてしまった「線引き」に気付かせてくれると同時に、その先にある「やるべきこと」を思い出させてくれます。

セミナーを終えて帰宅する電車の中でつくづく思ったのは、日々の翻訳に「慣れ」を感じてしまっていたら、例えば半年に1度はこういうセミナーを受講して、硬くなった頭を元に戻してやる必要があるなぁと思いました。

条件反射やら脊髄反射やら、そんな翻訳作業になっているなぁと感じる方は、ぜひ、受講されることをお勧めします。


コメントする

テリラジ「翻訳者の真実」録音公開

2015年9月20日テリラジで放送した特別番組「翻訳者の真実」の録音を、 YouTube の翻訳横丁の裏路地チャンネルへ登録いたしました。

聞き逃した方は、ぜひお聴きください。


コメントする

値引き

値引きをしたことはありますか? どういうシチュエーションで? どれくらい? そして「なぜ」?

「値引き」の考え方にはいろいろあるでしょうが、私はこんな風に考えています。

値引き額(数字)の意味をどう捉えるかで、考え方は変わってくると思うのですが、多分、普通の感覚としては、これから稼ぎ出す報酬を減らすことだから、もともとないものを減らすだけのことでしょ?と思うのではないでしょうか? でも、そう考えてしまうと値引きという行為が受動的なものになってしまうように思うのです。

値引きする金額の元手は何か?を考えると、ボンヤリした値引きという行為がくっきりとしてくるのですが、それをイメージするために例として、報酬を受け取り、そこから幾ばくかをお金を返すことを値引き行為としてイメージしてみましょう。翻訳物を納品するときに、値引きとして現金を添えて納めるというイメージです。

そんなイメージをしてみると、「値引き」って、気軽な感じで安易にホイホイとできる行為には感じられなくなります。値引きって、お客様(翻訳会社含む)にお金を払っているのと同じなんです。払う側の視点で考えると、得た報酬から幾ばくかのお金を使っていることと同じですね。

さて、何にお金を使っているのか?

そこを考えないとダメだと思うんです。「値引きとは投資である」と私は常々言っているのですが、何を目的とした投資なのか、どういう投資対効果を期待しているのか?を考える必要があると思います。そういう検討があった上で、値引きすべきか否かを判断することになります。

顧客から値引きを迫られたら、その投資は何を目的とし、どういうリターンを期待するのかを考え、拒否するのか受け容れるのか、はたまたリターンを増やすために相手と条件をさらに交渉するのか、そんなことを判断することになります。つまり、ハッキリしない理由(感覚)で値引きに応じるなんて、やってはならないことです。ちゃんと目的と効果を理解した上で判断しましょう。

時々、「知人だから」「友達だから」という理由で値引きをする話を聞きますが、ビジネスとして割り切って受けないことです。ビシネスでやっている以上、私情は持ち込まず、ちゃんと評価して判断しましょう。

 

 

気軽な気持ちで値引きに応じないこと。値引きする目的と理由を自分の中で明確にして、値引きに応じること。

 


コメントする

【速報】JTF翻訳祭詳細が発表になる

今年で25周年となる日本翻訳連盟のJTF翻訳祭の詳細プログラムが発表になりました。

25周年記念JTF翻訳祭プログラム

今年のプログラムは25周年に相応しい内容のセッションが準備されているようです。

特に注目は、映画の字幕翻訳で有名な戸田奈津子さんが講演されることです。映像翻訳に携わる方には見逃せない翻訳祭となりそうです。

また、今年の翻訳祭には久し振りに私も、セッション2 パネルディスカッションB「曲がり角を抜けて、ベテランへ」でパネリストとして登壇させていただきます。