翻訳横丁の裏路地

We can do anything we want to do if we stick to it long enough.


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JTF翻訳ジャーナル No.272 2014年7月/8月号公開

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日本翻訳連盟の「JTF翻訳ジャーナル」7/8月号が公開されました。

私のコーナー「翻訳横丁の表通り」

今号の私のコーナー「翻訳横丁の表通り」は、実務翻訳者 中野真紀さんに「こだわりのない翻訳者のこだわり」というタイトルで執筆頂きました。

今号のお勧め記事

2014 年度J T F 定時社員総会基調講演「日本の翻訳産業の実態 ~第4回翻訳業界調査結果報告~」の報告記事が掲載されています。調査結果のアウトラインが分かると思います。

無料でお読み頂けますので、皆さん、是非、お気軽にアクセスしてお読み下さい。

JTF翻訳ジャーナルWeb


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翻訳会社は質の高い翻訳者を使うと損するのか?

確か先月の事だが、ある方のブログを拝読していて標題のようなコメントを読んだ。

質の高い翻訳者へ支払う翻訳料は高額であり、クライアントへの売価が固定されている条件下では、そういった質の高い翻訳者へ仕事を委託すると利益を圧迫するため、自ずと単価の低い、質の低い翻訳者へ依頼する事になる…と言うのが、そのコメント趣旨だったように思う。多分、一般的にはこういう認識の方が多いのだろうと思うので、それは少し違うよ…という事をお話ししたい。

上記のコメントは「翻訳料+利益=売価」という非常に単純な認識で言及されていると思う。

最終的な翻訳売価には、オーバーヘッドなど色々なコストが乗っかっているのはご存知の通り。ただ、ここでは翻訳の質と翻訳売価の関連性が主題なので、翻訳の質で影響を受けるであろうコストだけを考えてみたい。まともな翻訳会社であれば翻訳工程として、翻訳者が行う一次翻訳の後に、チェック、リライトの工程を持っていると思う。チェッカーや校正者によって行われるこれら作業は、概ね掛ける時間によってコストが決まる。また、その時間の長さは一次翻訳の質によって大きく違う事になる。

翻訳料+後工程コスト+利益=売価

こういう単純化した式で考えると良いと思う。つまり、良い品質の翻訳品であれば後工程コストが小さくなり、質の悪い翻訳品であれば後工程コストが大きくなる。レートの高いインハウスのチェッカーや校正者を使っている場合では、(質の高い)高額翻訳者と(質の低い)低額翻訳者の一次翻訳コスト差を、後工程コストが簡単に逆転する事になるだろう。

つまり、単価の高い翻訳者に頼まないで単価の低い翻訳者へ頼めば利益が増えるので、単価の低い翻訳者ばかりへ依頼する…なんて事にはならない。まともな翻訳会社はそんな事を考えないし、やらない。チェックもリライトも「修正・訂正」作業であり、一次翻訳の基本的な質を覆せない。そこまで酷ければ訳し直しとなり、一次翻訳のコストだけで倍掛かってしまう。一次翻訳の質が非常に大切なので、品質のいい翻訳者さんへ依頼する方が総合的に見ても「得」。

「質」の話しは以前から何度も言及しているように、判断する「基準」が大切で、そこに認識の違いがあるから問題となる。「酷い質の翻訳が納品された」のであれば、翻訳会社と基準の確認と調整をするべきだと思う。その上で継続して質の悪い翻訳品が納品されるようであれば、その翻訳会社との取引は止めるべき。世の中の翻訳会社が全て同じであり、同じ質のものを提供していると考えているようであれば、それは明らかに「幻想」だと思う。自分達の求める質やコストで翻訳サービスを提供する翻訳会社を探し出す事が大切だ。

 


1件のコメント

翻訳会社を選別するという意識

今週、某SNSで久し振りの消費税転嫁の話題を読み、その方の翻訳会社に対するスタンスに軽い疑問を感じつつ生活をしていました。昨夜、通翻クラスタの担々麺倶楽部会合(笑)から帰る電車の中で偶然聞いたトミーラジオ(仮称)で、翻訳会社から翻訳者へのフィードバックの話しがされて、それについて考えていたら、先の疑問が再び頭に浮かんだので記事にしておこうと思います。

それは、翻訳者も「翻訳会社を選ぶ」ことにもう少し真剣であっていいのではないか?ということです。言い方を変えれば、取引先評価をちゃんとやって、取引することを決める、取引を停止する、取引を継続するなどの判断と対応を「ビジネス的意識」でちゃんとやるべきだと思うのです。

その評価の対象となるものは、いろいろあるでしょう。例えば、支払いが漏れること無く期日までに行われるか、翻訳依頼時に単価と納期を明確にして指示しているか、発注書を事前に送付してくるか、振込手数料を翻訳会社が負担しているか、消費税を正しく転嫁しているか、法律や規則に違反していないか、道義的に問題ない経営をしているか、コーディネーターの対応はどうか、翻訳の瑕疵を正しく理解したクレームをしてくるか、必要な情報は問い合わせる事無く提供してくるか、質問をすればタイムリーに返事をくれるか…などなど、挙げればキリがありませんが、そういった指標と基準を自分なりに持った上で、翻訳会社の対応を注意深く見て判断し、行動すべきだと思います。

昨年、日本翻訳連盟が行った業界調査が「翻訳白書」として発表されていますが、会社規模が年間売上1000万〜3000万のレンジにある翻訳会社が増加していたと記憶しています。これはある意味、業界慣れしていない翻訳会社がぞろぞろと増えているのではないかと想像するのです。つまり、業界のコモンセンスが崩れ、極端にいうと、思いもよらない姿勢/論理で翻訳者さんへ対応しているところが増えているのではないかと懸念しているのです。

それ故に、翻訳者さんの側も、しっかりと考えて、調べて、学んで、そして翻訳会社を見極める目を持って「翻訳会社を選別」して欲しいと思うのです。

トミラジで話題になったフィードバックの話しは、世間的にフィードバックをしてくれる翻訳会社が少ないね、でも、ちゃんとフィードバックしなくちゃいけないよねという話しだったのですが、それを聞いていて私が考えたのは、「フィードバックをする・しない」だけをとっても、その翻訳会社の姿勢が判断できるということです。また、フィードバックをしてくれる翻訳会社の場合、そのフィードバックの内容を「翻訳会社の評価」の材料に使えると思うのです。(というか、評価材料に使ってやる!くらいの意識でいて欲しい)

時々聞くのは、頓珍漢なフィードバックで対応に苦慮している翻訳者さんの話しです。「翻訳会社」という看板を掲げている以上、翻訳会社は翻訳のプロであるべきです。そのプロが恥も感じずに上から目線で頓珍漢な翻訳の指摘をしてきたとしたら、あなたならどう考えますか?「この翻訳会社は本当に翻訳のことを理解しているのだろうか?」もっと言えば「この翻訳会社は正しく翻訳の価値を評価できないのでは?」「私の翻訳は正しく評価されているの?」と思いませんか?勿論、判断をするということは基準があってのことです。ご自身の判断の基準が間違っている可能性もあります。だから、その擦り合わせが大切なのです。そのプロセスの中で「上から目線」とか「基準の押しつけ」はあってはならないと思うのです。

自分の翻訳が正しく評価され、それに見合った適正な単価で支払いがされ、世間的にも業界的にも正義を持った経営がされている、そして共に必要とされるパートナーとして仕事ができる、そんな翻訳会社を取引先としてより多く持つために、翻訳会社を見極める目を育む意識、翻訳会社を選別する意識に少し注意してみて欲しいなぁと思います。


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7月20日にSKITで大阪へ

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7月20日に開催される関西通翻勉強会「SKIT」に参加させて頂きます。

予定されているプログラムは以下の通り。

  1. 井口耕二さん:「翻訳業界と翻訳者の将来について」
  2. Terry Saito :「翻訳のポカミス対策 〜WildLight の活用〜」

今回の勉強会には、井口耕二さんが参加され「翻訳業界と翻訳者の将来について」のお話をされます。これは、日本翻訳連盟(JTF)が昨年実施された業界調査の内容を、井口さんが翻訳者視点に立って独自の分析をされた結果を元に、業界/翻訳者の現状を明らかにし、将来への方向性を提案される話しになるのでしょう。具体的には、JTF基調講演やIJETで講演された内容に、その後の分析で分かった新たな分析結果も付加されてお話しされるだろうと思われるので、非常に期待をしています。

私が大阪行きを決意したのも、この話を聴きたいのが半分以上あります。

そして「ついでに(笑)」私も少しお話をする時間を頂くことになりました。

今、私の中でホットなネタである「翻訳のポカミス」についてです。エージェントと言う立場で数多くの訳文に触れ、多くの「翻訳ミス」を目にしてきた経験から、それらの特徴と傾向、それらに対する対策の方向性などのお話をするつもりです。そして、翻訳ミス検出へ拙作のワードアドインマクロ「WildLight」をどう活用するかをデモを交えてご紹介します。

夜の部も予定されているそうです。

関西地区の皆様と久し振りにお会いできるのを楽しみにしています。


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#IJET25 基調講演:村岡恵理さんを聴いてきました

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6月21日から二日間、東京ビックサイトで開催されたIJET25。初日の基調講演だけ聴講してきましたので、簡単にご報告します。

基調講演は「村岡花子〜『赤毛のアン』翻訳に託した未来への希望」で、講演者は村岡花子さんのお孫さんである村岡恵理さん。ご存知の通り、NHK連続テレビ小説「花子とアン」の原案となった「アンのゆりかご〜村岡花子の生涯」の著者でもあります。

この日はなんと、村岡花子さんの121回目の生誕日と言うことでとても意味深い講演になったと思います。語り口柔らかく、とてもお話しが上手で、NHK連続ドラマの話題、そして著書の流れに沿って村岡花子さんの翻訳家としての人生をお話しされました。

「アンのゆりかご」を読まれた方には、話の内容がより良く分かって面白かったと思います。本にないエピソードも聴けて少し得をした気分でした。

以下に、私の記憶に残った話を羅列致します(いつもの通り(笑))

ドラマのお話し
・東洋英和女学校の出身者の方から「ドラマの花子さんの実家が貧し過ぎる。顔が黒過ぎる。恵理さんはOKしたのかしら?」との連絡を貰ったそう。
・この先のドラマの縦の線を強調する為の「ここ」なんだと思って「ま、いっか」と思ってるとお話しされていました。
・辞書を漬物石に使っている場面があったが「そんな事は絶対にありません」と否定されていました。
・花子さんはとても本を大切にする方で「本はとても大事だから、跨いではいけない、本を開いたまま伏せてはいけない」と娘さんに躾をされていたそうで、恵理さんも同じ教育を母親から受けたそうです。
・ドラマでは花子さんがとても酒癖が悪く描かれているが、花子さんは全くお酒を飲まない方だったそうです。
・多分、これは甲州ワインのPRなのかな?、甲府のPRかな?と仰っていました。

質疑応答
Q:ドラマの中で、ともさかりえさんが演じる富山先生が「My hair is turning gray. That is a long story.」の訳を「私の髪は灰色に変わってきました。それは長い物語です。」と話した後、花子さんが自分の訳を「私は白髪が増えてきました。話せば長いのよ。」と発表されましたが、私は翻訳者として花子さんの訳の方が良い、流石だなと思ったのですが、あれは実話に基づいたものですか?
A:あれはNHKの制作の方にはよるものですので、NHKの制作の方を褒めてあげて下さい(笑)