翻訳横丁の裏路地

We can do anything we want to do if we stick to it long enough.


翻訳業務に携わるすべての人が適正に評価される社会…

先日、「語学力ゼロで8カ国語翻訳できるナゾ」の著者で知られる水野麻子さんにお会いする機会があったのですが、交換させて頂いた名刺の裏に記載されていた一文がとても気に入ったので、ここで紹介させて頂きます。

「翻訳業務に携わるすべての人が適正に評価される社会の創出と、業界全体の底上げを目指します。」

想いは同じ。私も同じ。きっと皆も同じ筈。

それぞれがそれぞれの立場で、業界の底上げに貢献出来ると良いですよね。私も私なりの立場で貢献して行きたいと想いを新たにしました。

広告


翻訳に役立つツール群(十人十色勉強会を経て)

昨日(10月26日)、翻訳勉強会「十人十色」の第二回勉強会に出席してきました。

その中で紹介された各種ツール群を、ここに記録しておきます。自分用の備忘録です。

1) VxGrep

ファイル入手先:DR-X Web Page

PDFやMS Officeのファイル群を束ねて検索を掛ける事が出来るツールです。例えば、用語集や参考資料が複数ファイルで提供された場合、この VxGrep を使って一括検索すると、該当箇所の抽出がスピーディに行えます。VxGrep は VxEditor に同梱されているツールですので、VxEditor をダウンロードして利用する事になります。

2) AutoHotKey

ファイル入手先:AutoHotKey

キー操作やマウス操作の組み合わせをマクロ化したり、それをキーやマウスボタンにアサインしたり、色々な省力化や自動化に利用できるようです。

3) ApSIC

ファイル入手先: ApSIC

これは私もかなり以前にダウンロードしていたものの、全く使っていなかったもの。

4) DYNA

ファイル入手先: だいなファイラー DYNA

キーボード操作のみで作業が出来るファイラーソフト。マウスを触らないので作業効率を上げられます。

5) のどか

ファイル入手先:applet

キー操作の組み合わせを、別キーにアサイメントしたり、アサイメント自身を変更・登録できるソフトのようです。

私が実際に業務に使用しようと考えているのは、VxGrep, AutoHotKey, DYNA です。特に AutoHotKey は色々な作業の自動化・単純化に大きく役立ちそうですし、AutoHotKeyを持たないユーザーへも EXE 方式で供給できるというのは、とても使えます。DYNA は、エクスプローラーでマウス操作をごちゃごちゃしながら作業しているよりスピーディに作業ができそうですので、少し検討をしてみるつもりです。使いこんできたら、使い勝手や使い方の情報、スクリプト情報を公開していこうと思います。


最初から100%を目指すと言う意識

一ヶ月ほど前、私はこんなツイートをしたことがあります。

「製造の現場では当たり前の事ですが、チェックを入れても不良品はすり抜けます。極論、チェックに100人掛けてもすり抜けます。大切なのはミスが出ない仕組みづくりを考える事です。これは翻訳も同じ事が言えます。「後で直せばいい」と言う考えは間違っています。最初から一発OKを目指すべきです。」

これは理想論だよ…と仰る人もいます。そう言った途端に、この話はおしまいです。本当の品質改善なんてできるはずもありません。現実、製造業で「最初から全て一発OK」成し遂げているところはないと思います。但し、極限まで近付ける事は出来ています。

何につけても「研ぎ澄まされる」には、高い次元の目標と意識、意欲があってなされるのですから、そこに自己妥協を持ち込む隙を与えないように努めた方がいいですよね。

以前、スペルは(正確に)覚えよう…と言う主旨のブログ記事を書きました。私は社内翻訳者時代に発音とスペルを関連付け(完全一致ではないが)、タイピングして運動記憶としても身に付けるというやり方をしていました。それは一発で正しいスペルを素早くタイプする事が目的です。

間違ったまま、後で修正と言う考え方は以ての外ですし、スペル確認の為だけに辞書を引く手間も省きたい。正確に覚えちゃうのが早いです。

一文書内に登場するユニークな英単語の数ってどれくらいだと思いますか?その文書の分野と長さにより差が出ますが、以前、データを採った時の記憶では、少ないものは数百から多いものでもニ~四千語くらいだったと思います。専門用語や固有名詞を除くと、使っている単語数は意外と少ない筈です。

これは一例ですが、何事も「最初から全部一発OK」を目指すと、色々と対応する手段を考える事ができるので、先入観に捉われず、果敢にチャレンジする事が大切だと思います。それがいつぞやは「自分流」に繋がって行くのだと思います。

〜〜〜〜〜〜
【おまけ】運動記憶に関して
運動記憶は短期記憶ですが、繰り返し行う事によって長期記憶として定着します。

生産ラインで製品組立を行った経験のある方は分かると思いますが、作業は全て決まった手順で覚えます。それにより一連の作業が運動記憶として定着します。
この記憶の良いところは、同じ作業を効率的かつ正確に繰り返す事ができるようになる事です。加えて重要なのは、異質なもの、異常な動作、感覚を感じ易くなり、問題を検出し易くなります。
先のタイピングの例ですと、ミスタイプした事が自分で認識できるのです。これは、スペルチェッカーで認識されない単語のミスタイプにはとても有効でした。


【告知】翻訳勉強会「十人十色」USTREAM放送

翻訳勉強会「十人十色」の勉強会模様をUSTREAM放送致します。

日時:10月26日(金) 13:30頃〜

USTREAMチャンネル:翻訳勉強会「十人十色」


Streaming live video by Ustream

@hinischani さんからの告知:

今回はITを中心とするベテラン翻訳者とワードマクロの達人のコラボとなります。自分の翻訳方法を公開してお互いに学び合う会です。当日はツイッターやfbからご質問等よろしくおねがいします。今回は「IT海千山千編」で@karamora @SusiePiyoko @nittajunya @terrysaito @transcreative @baldhatter @Yoshi09002 @sagtran が参加します。

PC上での操作がメインとなると思われますが、USTREAM放送の性質上、あまり詳細な画面は識別出来ないと思います。それを予めご了承下さい。雰囲気と音声で想像しながら(笑)ご覧下さると嬉しいです。


円切り単価とは縁切り

先日、翻訳業界の長いお二人の重鎮(笑)と夕食がてら雑談をしていて、「翻訳単価に小数点を使ったものを殆ど知らない」という話しを耳にしました。

原稿の文字数・ワード数で翻訳料を支払う「原稿分量式」。業界調査によれば、翻訳会社の半数以上が既に移行し、今後さらに移行が進んで行くだろうと推測されます。この「原稿分量式」へ移行する上で、単価体系にかなり悩み、結果、小数点第一位を持った単価方式にしました。

市場の翻訳会社のレート体系を調査したり、私の知る翻訳会社経営者や翻訳会社関係者、それに個人翻訳者さん達にインタビューして、単価に小数点を持ったものが殆どないという事実を知っていましたが、それでも小数点を持った単価方式を採用するに至った理由を以下に述べたいと思います。

まず、結論からいうと以下の3点が、その判断の主な理由です。

  1. 1円単位の刻みでは、粗利の振れ幅が大きくなり過ぎる。
  2. それにより、計画された粗利を確保するために、翻訳者のレートが大きく切り下げられる可能性が高くなる。
  3. 将来的に消費税率が変化した場合、1円刻みの単価では対応が難しい。(内税の場合)

これらを回避するためには、小数点を持った単価体系が必要なのです。

【設定レートの面から見てみる】

以下に例を挙げてみます。あくまでも「例」ですので、想定した数字や率に目が釘付けにならないで下さい(笑)

仮に翻訳者さんの単価を、日英翻訳で文字単価9円だとしましょう。そしてエージェントの販売価格を18円とします。つまり、エージェントの粗利を50%で想定します。

では、ここで翻訳者さんの単価を、9円から10円にアップする事を検討したとします。

単価を10円にするという意味は…

  • 仕入れが 11%のアップ
  • 粗利率は、50.0%から44.4%へダウン

という事になり、実に粗利率へのインパクトは、5.6%にもなります。

この「1円刻み単価」では、仮にそのエージェントが粗利率45%以下は認めないなんて社内基準があるとすれば、単価10円のところを9円で抑え込まれる事になる訳です(実際はこんなに四角四面な運用ではない筈ですが、理解し易いようにそう仮定します)。この1円の差は、翻訳者さんの受け取る報酬で見ると、10,000文字の案件であれば、10,000円の収入の差になるわけですから無視できません。

私が一番問題だと考えたのは、翻訳者へ利益を正当に還元する事が不可能になるという点で、故に「1円刻み」単価ではダメだと考えました。もっと細かく刻んだ単価設定ならば、経営的に許される最大値まで単価を上げられるのに、1円刻みではバッサリと切るしかなくなってしまう。

仮に小数点単価にした場合、上の例でいえば、単価 9.9円でレート設定される可能性があるという事です。

【消費税率の取扱いの点から見てみる】

世間では内税式の単価が多いように聞きました。この意味はご存知の通り、以下の通りです。前出の例を基に説明します。(消費税等の部分は切り下げで計算しています)

  • 設定されている単価(含む消費税等) = 9円  その内訳は…
  • 税抜き単価 8.6円 + 消費税等分(5%) 0.4円 = 9円

この段階で、既に小数点を持たないと計算が成り立たない点から考えても分かる通り、(特に内税式の場合)小数点を含む単価設定にしないと、システムとして破綻するということが分かると思います。

消費税率は今後、上昇する訳ですが、例えば8%、10%になった場合、現状設定されている単価がどう変化して行くのかを以下のとおり示してみました。

  • 税抜き単価 8.6円 + 消費税等分(8%) 0.6円 = 9.2円
  • 税抜き単価 8.6円 + 消費税等分(10%) 0.8円 = 9.4円

報酬単価が上がらない前提で話をすれば、消費税率が変わる段階で、小数点単価体系に移行しないと対応ができなくなるという事です。ここでのポイントは、消費税率変更に伴って、税金分の支払いが増えるのだという事つまり、内税単価の場合、単価が上がるのだということを理解しておいてください。

【翻訳者として交渉の材料につかうべし】

  • 1円単位での単価上げ交渉は、エージェント側への経営的インパクトが大きいので、コンマ1円単位での交渉を試みてみる。エージェント側のシステムが対応できるようなら、単価上げを獲得出来るかもしれない。
  • 将来予定される消費税率変更に対応して、小数点単価体系に対応できるエージェントが増えくると想像するので、この交渉手段は使える可能性が高くなるかもしれません。

【消費税率引上げ時に注意して欲しいこと】

それは、単価が内税で設定されているのであれば、上記の通り、単価が税率に伴って設定し直されるということです。

もし、そのエージェントが、消費税率が変わったのに同じ単価で支払いをしてくるような事があれば、それは単価を引き下げているのと同じ意味ですので、徹底的に交渉する必要があります。「いやぁ、うちのシステムが対応してなくて、いまのままで…」なんて不条理な言い訳をしてくるエージェントには、「(そういう事態になる事は万人が予測出来たのに)システム対応をしていないのは企業側の不手際であり、翻訳者側の報酬を減額される理由にはなり得ない」という点を、しっかりと理解した上で交渉して欲しいと思います。対応してないなら、円単位で切り上げろ!という事です。上記の例なら9円から10円にしろ!という事です。

「変化」は得てしてマイナスイメージが伴いますが、「変化」こそチャンスです。論理武装をしっかりして単価上げの材料に使うくらいの意志を持って勉強し、取り組みましょう。