翻訳横丁の裏路地

We can do anything we want to do if we stick to it long enough.


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企業内で Microsoft Wordの教育を

日々受領する翻訳案件。原稿のファイル形式にはいろいろなものがありますね。マイクロソフトオフィス製品がメインになりますが、ワード、エクセル、パワーポイント、そしてときどきPDFやHTMLなども原稿ファイルとして提供されることがあります。

そういった原稿を眺めていると、ワードで作成した方が遙かに効率的で、その後の文書管理や改訂もやりやすいだろうと思うものに出会います。例えば、翻訳者さんの間でときどき話題になるのは、エクセルシートを方眼紙のようにレイアウトして作成された文書や、パワーポイントを使って作成された文書などです。エクセルを使って規程書や仕様書を作成したものをよく見ますが、1頁が1シートになっていて、おまけに1文章が数セルにボキボキ折られて入力されている。文章の修正や追加が入れば、そのセル内の文字列を修正して行の長さを目視で合わせながら、セル間で文字をカットアンドペースト。さらに、章でも移動になるものなら、その章を他のシートへ移動して1頁の長さを揃えるために他の部分をさらに移動して、そしてさらに…といった具合に複数シートが修正の対象となったりします。また、画像を入れたいからと、わざわざパワーポイントを使って文書作成されているクライアントもいます。すべての文章がテキストボックスに入っているわけで、これも改訂が入ると大変更が必要となり、どちらも作成や改訂に「やたらと工数の掛かる」文書になります。

ワードで作成した方が効率的であるにも関わらず、エクセルやパワーポイントを使用して文書作成してしまう理由には以下のようなものがあるのでしょう。

  1. 昔のワープロ世代はワードが使いづらく感じていて、つい、エクセルやパワーポイントを使ってしまう。(最初から学ぶ気持ちがない。もう歳だし、新しいことが頭に入らないもん)
  2. ワードの使い方を知らない。学ばない。(学ぶべきものという意識もない。)
  3. スペースやタブ、そして文字を打ち込めば、とりあえず見た目は文書になるから、他の機能を知る必要がない。だから、ワードを学ぼうという気持ちにならない。(取りあえず使えてるからいいぢゃん)
  4. ワードを学ぶ機会が無い。(学ぶ必要性は認識してるけど、その機会がない。)
  5. 文書作成にルールがない。(何をやったって自由だ。好きなやり方でやる。)
  6. ライティングの教育がない。(別に行の途中で改行したってOKでしょ?)

もし、ワードの基本的な機能を知っていれば、こういった「やたら工数の掛かる」ファイル形式を選んで文書作成することもなく、ワードで作成されるのではないかと思うのです。

あるお客さんとこの件で議論をしたことがあります。将来、文書改訂があることを分かっている文書や、翻訳が必要となる文書ならば、目的に合わないエクセルやパワーポイントの使用は避けて、ワードによる文書作成がされるよう社内教育された方が良いですよとアドバイスしました。しかし、お話を伺ってみれば、企業内にマイクロソフト製品の研修制度を持っていても、エクセルやパワーポイントの研修はあってもワードの研修は無いのだそうです。このことは逆に捉えれば、企業内で文書作成や文書管理に掛かる工数(費用)を認識しておらず、また、そのことの重要性を認識していないということになります。結構、根の深い問題なのかもしれないと感じました。

企業内で文書を作成・管理する部門の方にお願いしたい。文書作成する全社員にワードの研修も是非受けさせて欲しい。もしくは受講できるワード研修を提供して欲しい。文書作成の工数が削減されるだろうし、改訂などによる管理工数も削減することでしょう。さらに翻訳に掛かる費用も安くなるはずです。是非、ご検討を。

 

[関連記事] エクセルを文書作成に使うな


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SimplyTermsセミナー受講報告

今日、翻訳フォーラム・レッスンシリーズ第5弾「翻訳に活かすSimplyTerms」を受講してきました。

SimplyTermsは、産業翻訳者である井口耕二さんが開発された翻訳支援ツールで、私も本業で利用させていただいていました。なぜ過去形で書いたかというと、現在は拙作WildLight単独、もしくはTradosとWildLightの組合せで運用しているからです。私の場合、翻訳チェックに主眼を置いたツール運用を検討していて、以前はSimplyTermsを利用して、エクセルやパワーポイントファイルからテキストを抜き、ワードへ持ち込んで(当時、まだxlsやpptからテキスト抜きができなかった)WildLightでチェックをするというスタイルを取っていました。

今回、このセミナーを受講したのには3つの理由があります。1)SimplyTermsの主要機能をちゃんと把握したかった(ヘルプをちゃんと読めという話もある)。2)開発者である井口さんが行うSimplyTermsセミナーは、滅多に受講できないこと。3)WildLightへ適用できるアイデアの収集目的。内容は期待通りのセミナーでした。

[共感したこと]

  • 「人が頭を使わない作業は、コンピュータにやらせる。」という考え方は、翻訳に限ったことではなく、間接業務の業務改善に適用すべき考え方で、とても共感しました。
  • 例え1ステップの改善でもマクロを作って省力化されていました。「たった1ステップと捉えるかもしれないが、それが繰り返されれば1000ステップ、1万ステップと大きな違いになる」というお話しは、大いに共感です。
  • SimplyTermsは、井口さんが自分で使うために開発されたツールで、ある程度の形になったので、ならばみんなに使って貰おうと公開されたそうです。本当にありがたいことです。

SimplyTermsというツールの説明でありながら、実際のところは翻訳のフローに従って、どう翻訳という仕事の効率をあげているかをお話しされているように感じました。些細なことでも、必要となる工数とのバランスを考えて、マクロを使って改善をされている。この姿勢がとても大切で、総合的に見るとQCDの面で大きな違いを生むことになっているのだろうと思いました。

[SimplyTermsとWildLightの開発思想の違い]

  • SimplyTermsの使い方とその機能の詳細を聞いている中で気がついたのは、SimplyTermsは、翻訳者が翻訳作業を進める中で発生するいろいろな作業を、如何に効率的に行うかを考えて開発されているということです。まさしく、翻訳をするための支援ツールなわけです。
  • 一方のWildLightは、翻訳チェックをする上で如何に人間の検出力を補助するかをスタートポイントに開発したツールであるため、その考え方の違いが細部に現れていて、とても興味深かったです。

ツールの使い分けは、こういった思想の違いもヒントになるかもしれませんね。

今回、SimplyTermsに盛り込まれた細かな工夫やその考え方を詳しく聞けたのは、とても有益でした。お話しを聞いているうちに、自分のツールへ盛り込む機能のアイデアをいろいろと思いつきました。ノート3頁もメモを取ったのは久し振りです。本業でSimplyTermsを活用するイメージできたので、早速使いたいと思います。また、学んだことや気付いたアイデアを元に、拙作のツールの機能アップと改善を行っていきたいと考えています。


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ディスカウントしてください

翻訳者さんへ仕事を依頼する際、毎回、ディスカウントを要求する翻訳会社があるそうだ。

これ、どういう意味に捉えるべきでしょうね?

双方の合意に基づいて設定された単価があるにも関わらず、毎回値下げを要求するというのは、実質的な単価下げと同じです。

慢性的にディスカウントを要求する翻訳会社は、翻訳者の仕事の質などまったく無視だということでしょう。「あなたの仕事を評価なんかしません」ということではないでしょうか?どんなに良い品質の翻訳を納めようとも、フットワークよく対応しようとも、それらの仕事は価値が無く、値引きに値すると言ってるのでしょう。

そういう翻訳会社の頭の中は「あわよくば安く仕入れてやろう」という考えで一杯なのでしょう。頼まれると断れない、気の弱い翻訳者を食いものにしようという魂胆なのかもしれません。もし、翻訳会社の経営者が部下に対して、毎回のディスカウント要求を指示しているとしたら、なんともお粗末な理念を持った経営者だろう?ということになります。そんな会社と継続的に取引するのは、避けた方がいいでしょう。

昔、以下のような記事を書きました。

相手との関係やプロジェクトによって対応が変わることもありますが、そういうったものが無いのであれば、むやみやたらに値引きするものではありません。値引き要求に対して妥当性のある説明もなく、頻繁にディスカウントを要求する翻訳会社は、何かがおかしいのです。そういう値引き要求に安易に乗らず、きっぱりと拒否しましょう。その対応によっては、継続した取引は考え直した方がいいでしょう。