翻訳横丁の裏路地

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参考資料という厄介なもの

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昨年の翻訳祭セッションでも少し触れた「参考資料」の取り扱いについて。

クライアントや翻訳会社から、ポンと渡されて、その量も紙一枚のものから、本か?と思うほどの大量のものまで、内容も分量もさまざま。時には翻訳原稿にまったく関係のないものが混ざっていたりすることもあります。

挙げ句には、納品した翻訳物に対して「参考資料に合ってない」と怒られたり、「参考資料なんだから、そのまま写すなよ」とクレームを貰ったり、一体、どうして欲しいの?と憤慨した方も多いのではないでしょうか。

参考資料を受け取った翻訳会社(や翻訳者)が、まずすべきことは、受け取った資料が「翻訳指示」なのか単純なる「参考情報」なのかを明確にすることです。そもそも「参考資料」という言葉、特に「参考」という言葉にみんなが惑わされ、資料の位置付けを定義して合意しないまま翻訳作業に入っているところが問題です。

参考資料には概ね以下の3つの目的を持って提供されていると思います。

  1. 用語集
  2. 表現、スタイルガイド
  3. 単純に情報としての資料(原稿の補完)

1と2であれば「参考」ではなく「作業指示」です。資料から拾い上げて(必ず)訳文へ反映させなくてはなりません。もし3の目的であれば、読み込んで原稿の取り扱う分野に関して知識を深めたり、原稿内容に不明点が出れば、参照して原稿解釈をより正確に行うなどして、誤訳しないように努めることになります。

ポイントは、参考資料の内容が翻訳物の評価の基準に使われるのかどうかです。

  • 参考資料を受け取ったら、その目的を提供元に確認する。

一部のクライアントや翻訳会社には、参考資料の位置付けが曖昧なことを逆手にとって、無闇矢鱈に参考資料を送りつけるところもあります。参考資料を渡しておけば、業務指示の手間は省けるし、自分達の責任をある程度回避できると考えているようです。「参考資料に合ってない」「参考資料は参考だから合わせる必要は無い」といった玉虫色の交渉材料に使えてしまうわけです。

 

少なくとも翻訳会社は、クライアントから参考資料を受け取った際、その位置付けを明確にする必要があるでしょう。顧客に対する最終的な品質責任は翻訳会社にあるのですし、翻訳者へ明確な指示をして正しく使用してもらうためには避けては通れないプロセスだと思います。

作成者: Terry Saito

二足の草鞋を履く実務翻訳者です。某社で翻訳コーディネーター、社内翻訳者をやっていました。 詳細は、以下のURLよりどうぞ。 https://terrysaito.com/about/

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