「翻訳チェック」や「WildLight」のセミナーで「対訳表によるチェックの効果は絶大」とお話ししています。訳抜けや用語適用のチェックなどが容易になり、単位時間あたりのミスの検出力が向上するからですが、それ以外の例として、対訳表作成時のアライメント作業やその後の数チェックにて、何故か誤訳が検出できるのです。
今までその理由をうまく説明できていなかったものの、セミナーを聞いて対訳表チェックを導入した方達から、私が説明したとおりの効果が得られたというフィードバックを貰っているので、その効果は間違いないだろうと考えていました。
その後、なぜ誤訳が検出できるのかの理由を理解するために、アライメント作業を行いながら自分の頭の中で起きていることを注意深く分析したり、いろいろと調べるうちに分かってきたことは、対訳表のアライメント作業を何度も繰り返し経験することで、速読術が身に付き、誤訳を感覚的に認識できるようになっているようだということです。実際、私は原文と訳文をぼんやりと視野に捉えながら見比べ、キーとなる文字や記号、単語、そして文を比較しているようなので、視読に近いことをやっているのだと思います。
ミスはなるべく上流工程で検出するのが望ましいです。前工程でチェックすることで後工程を含めた複数工程でミスを検出することに繋がり、ミス流出防止に有利だからです。よって、すべてでなくても誤訳をアライメント作業で検出できることは、最終的な品質保証の観点からも有効です。
ひとつ、考え方を変えたことがあります。アライメント作業を容易にするために「数チェック辞書」を適用して数字、数詞に色付けしてからアライメントを行うと良いという話をしてきましたが、「誤訳を検出する」ことを目的のひとつとして加えると、この方法はあまり都合が良くありません。私の実験ではアライメント作業時の誤訳検出力が落ちます。原因は、色による単純照合に依存したアライメント作業になるためです。(単純照合が速読の邪魔をします。)
従って、精神的負担が増えるものの、ミス検出の関所を増やすという意味で、数チェック辞書は適用せずにアライメント作業する方が良いと現在は考えています。最初は作業速度が低下しますが、繰り返してアライメント作業を行ううちに速読能力があがり、作業速度とミス検出力が向上します。