翻訳横丁の裏路地

We can do anything we want to do if we stick to it long enough.


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社内翻訳者の磨きどころ

翻訳コーディネーション業務をしていて、外部へ委託せず、自分で翻訳する案件が時々発生する。

内容の機密性から外部委託を避ける目的の場合もあるが、それ以外に原稿内容の特異性により、翻訳品質を考えて自分で翻訳する場合がある。

企業内で取り扱われる文書分類は多岐に渡るが、一般的な内容と表現で書かれた文書から、その部門でしか理解出来ない専門用語(方言用語?)と字間、行間にその部門の知識を有しないと理解出来ない意味が含まれたものがある。

この後者が社内翻訳の対象となる。

私は社内翻訳者としての経験があり、依頼元の仕事の内容、文書と文章の癖、専門用語などを概ね把握している。従って、日本語として成立しない文章でも、かなり正確に内容を理解する事ができる。

この類の文書は、学問的知識や他社における経験的知識を有していても、本当に求められる翻訳の正解が導き出せない。

ここに、社内翻訳者であるが上での生きる道がある。

兎に角、翻訳依頼される文書(原稿)に書かれている情報を想像力逞しく読み漁り、疑問な事を調べて、徹底的にその文書の性格、目的、関連する業務、部門などを知識として吸収する。そしてその文章の癖を理解する。

要は、徹底的にその会社で取扱う文書のプロになる事、そして、それを的確な翻訳ターゲット言語に翻訳できるようになる事である。

かなりスポット的で狭い領域に特化した知識を取り入れる事になるものの、その依頼元の仕事は確実に自分への仕事となる。

以前、翻訳の質がどの程度ばらつくかを調べる為に、技術的専門知識を有する翻訳者、それに加え類似した職務経験を有する翻訳者でそれぞれ翻訳を依頼して比べた事がある。

前者は、英文が日本文に引っ張られて字面翻訳が多く、意味をなさない英文が多数混在。かなりの手直しをしないと納品出来ないレベル。後者は比較的、上手く理解されているものの大間違いな意訳が介在すると言う結果だった。

翻訳者の翻訳力の実力差もあると思うが、日本語原文を理解すると言う点で考えると、その差は明らかなようだ。経験に勝るものはないと言う事か?

社内翻訳者と言う環境は、現場とその実際を経験できる環境にあると言う事。

将来、その職場を離れフリーランス翻訳者になったり、別の会社へ移ってしまえば、二度と経験する事が出来ない。

今、置かれている環境を愛しみ、将来、より多くの翻訳案件をこなせる(仕事を取れる)翻訳者になれるよう日々、情報と知識吸収すると言う心掛けが大切だと思う。

・徹底的に特化せよ
・目の前は宝の山。今のうちに盗めるものは全て盗んで自分の知識と経験にするべし