NHK「プロフェッショナル〜仕事の流儀〜」に、辞書編纂者の飯間浩明さんが出演されていて、その中で出てきた言葉が「整正美化」。
飯間浩明さんが、放送後にこんなツイートをされています。
「整正美化」ということばが「プロフェッショナル」に出てきました。70年代に推進する動きもあったと述べましたが、ルーツはさらに古く、60年代以前に国鉄秋田局の輸送長が「雪解けの後始末をするため」に整正美化運動を始めたと言います。その後の経過は不案内ですが、一般語にはなっていませんね。https://twitter.com/IIMA_Hiroaki/status/1006383013775564801
どうも、国鉄の工場現場で使われていた言葉らしいですね。整理整頓だけでなく、作業も美しく行おうという標語らしく、この言葉と説明を聞けば、工場経験者ならより深く言葉の意図を理解できると思います。
整正を日本国語大辞典で調べると、こんな意味がありました。
せい‐せい【整正】
〘名〙 (形動) 正しく整えること。正しく整っていること。また、そのさま。正整。
*上木自由之論(1873)〈小幡篤次郎訳〉「衆力を一致し、軍律を整正する力なきは」
(出典:日本国語大辞典)
正しく整えるのは設備、装置、什器だけではなく、行動や動きなど所作も含めるというのが、整正美化という言葉を生んだ人の意図なのでしょう。
なんとも、良い言葉だと思います。
動きを美しく整える。職人の動きが美しく見えるのは、研ぎ澄まされ、無駄が削り取られた効率的かつ合理的な動作になっているからです。動作の美しさには、ちゃんとした理由があるのです。
私も動作を美しくすること、流れるような動作にすることを意識して仕事をしていましたし、今でも翻訳の仕事の中で、それを意識しています。
え?デスクワーク(死語)には関係ないだろうって?
いえいえ、そんなことはありませんよ。整正美化の考え方は、ものの考え方にも使えるのです。多くの方は無意識のうちにやっているはず。如何に思考の流れを整えて美しくするか。
指先、爪先にまで神経の行き届いた動作と思考。ものごとを突き詰めて、玄人になることに通ずる言葉だと思いますね。