翻訳横丁の裏路地

We can do anything we want to do if we stick to it long enough.


コメントする

翻訳屋と寿司屋

25年ほど前、当時、たまに利用していた寿司屋で、久し振りの贅沢にとカウンターに座り、寿司を食べていた。

馴染みの客らしいおっさんと「シャコなんざ、ゴミみたいなもので、ここらじゃ食べないよ」なんて、少々気に障ることを言われつつ雑談をしていたら、若い女性客が入ってきた。

お持ち帰りで寿司を二人前注文して、彼女は少し高くなった座敷席の端に腰掛け、寿司ができあがるのを待っていた。当時はまだ回転寿司がそれほど普及しておらず、近所にはなかったと記憶しているので、寿司というとこうして寿司屋に買いに行くか出前を取るくらいしかなかった。

しばらくして、出来上がった寿司折りふたつを持って、店主が彼女の元へ、そして、値段を告げた途端、彼女の表情が曇る。

「思ってたより遥かに高い」

そう思ったのだろう。顔にそう書いてあった。かなりしぶしぶとした感じでお金を払い、その女性は店を出て行った。そして店主がぼそりと言う。

「あれでもかなり値引きしたんだけどねぇ」

そう、店主は彼女が来店した瞬間から、きっと寿司屋の寿司の値段を知らないで来ていると判断していた様子。なんともやりきれないという感じの店主を見て、気の毒に思ったのを覚えている。

私が翻訳を「売る」立場になってから、この記憶を時々思い出すことがある。

初めて海外と取引をするようになり、文書の翻訳が必要になったとか、海外からお客さんが来るので、掲示物を翻訳したいとか、いろいろな理由から初めて翻訳サービスを利用する顧客にも、同様の反応が見られるからだ。

世間的な翻訳に対する印象は、言語に精通した人間なら「ちゃちゃっと」できるくらいの印象で、そんなに費用と日数が掛かるものとは思っていないのが実状なのだろう。

見積を出すと音信不通になる顧客はきっと、他の安価な翻訳サービスを探し、そこに仕事を依頼するのだろう。これは決して間違ったことではない。顧客のニーズとマッチしたサービスなのだから当然の選択だと思う。

私が思うのは「果たして私(たち)は、回転寿司と明確に差別化できる翻訳サービスを提供できているだろうか?」ということ。もし仮にそういった回転寿司サービスが、ある程度「高い翻訳品質」を提供できるようになっても、「勝負できる『何か』を持っているだろうか?」ということ。

機械翻訳にせよ、ウェブ翻訳にせよ、この先の将来において、どう技術的に進歩し、変化する顧客のニーズを獲得して市場を独占していくかは、生理的好き嫌いに終始することなく真面目に捉え、この先の自分の身の置き場所を考えることは大切だなと常々感じている。


コメントする

品格

電話の応対やメールの文面、そういったものから相手の品格、ひいてはその個人が所属する組織の品格が判断されてしまう。

自分が電話したり、メールした相手の反応から、そんなことを感じたことはありませんか?

お客様にしろ取引先にしろ、全てが大切なビジネスパートナー。初めての問い合わせ相手だって、将来の潜在的顧客かもしれないのですから、相手の身になった丁寧な対応をするのは大切でしょう。

組織で考えると、対外的な窓口となる人材の選択には特に注意が必要でしょうし、然るべき教育を継続的に行う必要がありますね。

みなさんは大丈夫ですか?(自責の念に駆られつつ・・・)


コメントする

JTF翻訳ジャーナル No.282 / 2016年 3月/4月号公開


JTFジャーナルWeb

日本翻訳連盟の「JTFジャーナル」 3/4月号が公開されました。

今号の特集記事「機械翻訳の国家戦略」は、なかなか読み応えがあります。また、ミニアンケートの結果も現状を知るのに役立つでしょう。

高橋聡さんのコーナー「フリースタイル、翻訳ライフ」では、我ら翻訳勉強会「十人十色」の井口富美子さんが寄稿されています。

無料でお読みいただけますので、どうぞ、お気軽にダウンロードしてお読みください。


コメントする

翻訳発注は年度末を避けるべし

年度末が近づくと、あちらこちらで道路工事の光景を見かけるようになります。予算を使い切るための追い込み工事なのかどうかは不明ですが、翻訳業界も同様に年度末になると繁忙期に入ります。

私の感覚では、通常は翻訳会社に登録される翻訳者のうち、トップ5~10%くらいで翻訳案件は回っているのではないかと思うのですが、この繁忙期になると、日頃依頼を掛けないような翻訳者に仕事を依頼するようになるようです。

そうすると何が起きるのか?

それでなくても品質のばらつきが大きい翻訳会社の翻訳品質が、さらに大幅に振れるようになります。呆れるような品質の翻訳物が平気で納品されてくるようです。つまり、翻訳依頼することが分かっているのであれば、2~3月の年度末や長期連休前の翻訳繁忙期を避けて計画した方がいいということになります。

そもそも繁忙期には、いろいろなことにしわ寄せがいきます。翻訳会社は稼ぎ時だから無理をして受注を取り付けようとしますし、翻訳者へは無理な納期で仕事を依頼しようとします。そして社内へも無理を強いて短納期対応していくわけです。遅くとも3月末日の納品・検収が必須で納期延長できない案件ばかりなのに、(残った予算額を使い切ろうと)意外と大きな案件が多い状況になりますから、その負荷は相当なものでしょう。

納期短縮で一番影響を受けるものは何か?
それは間違いなく「品質」です。

納期短縮へ対応するためには稼働時間を延ばすか、「翻訳をする時間」「チェックをする時間」を短くするくらいしか対応方法はないでしょう。多くは稼働時間を延ばして対応されるのでしょうが、例えば自分の体力と精神力を超えた無理な仕事の受け方をすると、それは疲労につながり、集中力へ影響を与え、そして翻訳の品質へ影響を与えます。翻訳会社の中では無理な時間外労働で同様の状況になるでしょうし、時にチェックの間引きをするなどの対応をしているケースもあるでしょう。少なくとも、この時期に納品される翻訳物の質を見ていると、通常時とは違い「何かを手抜きしている、どこかに無理している」と判断せざるを得ない翻訳物を多く目にしますから、この推測は間違っていないでしょう。

翻訳を依頼するクライアント企業は、質の良い翻訳物が欲しいなら、計画性を持って依頼をすることを心掛けた方がいいです。さもないと、同じお金を払うのに、質の低い翻訳物を手にすることになるでしょう。


コメントする

SFAオープンスクール終了

  2月27日にサン・フレアアカデミーで開催されたオープンスクールで「WildLight初級セミナー」を行いました。昨年より参加者が減ることなく、21名もの方に出席いただきました。ありがとうございました。

今回は昨年の反省を踏まえ、WildLightの説明に集中する形を取りましたので、何に使えるか?をイメージし易かったのではないかと思います。

WildLightは、基本的に「検索」「置換」「コメント付け」「ワイルドカード」「特殊コマンド」の五つを上手く構成して、ワードに自動で仕事をさせるツールです。それらをどう組み合わせて「自分のしたい処理をさせるか」「どういう考えに基づいて、その処理結果のスタイルを決めるか?」は、中上級コースになります。(東京ほんま会が主に取り扱います。)

セミナーでは、WildLightの開発動機を「汎用性の高い翻訳チェックツールが欲しかった」からだとお話ししました。しかし、何故、検索・置換機能で実現しようと考えたかは説明していません。ツール開発の前に、翻訳者の能力伸長を殺さず「翻訳者がひとり完結で行える翻訳チェック」の「精度」と「質」を向上させるには、どのような方法が良いか?を検討し、その結果から「Easy to Notice」という方法に決定しました。WildLightは、その考えを具現化する方法として開発に着手し、その結果、検索・置換機能を選択したのです。

ツールにはそれぞれ、特性があります。得手不得手があります。また、そのツールがそういうスタイルになった理由が必ずあります。そういったものをちゃんと理解して、自分の目的に合ったツールを使いたいものです。