翻訳横丁の裏路地

We can do anything we want to do if we stick to it long enough.


ケアレスミスをなめてはいけない

ブログ「医薬翻訳ラボ」さんが、ブログ主さんへの私のツイッターレスポンスを記事にして下さったので、これを機会に翻訳者のケアレスミスについて少し書いておきます。

翻訳におけるケアレスミス(ポカミス/凡ミス)の話は、過去のWildLightのセミナーでも軽く説明していますし、ブログ記事として以下のものを書いています。

翻訳におけるケアレスミスの内容や対策に関しては、上記の過去記事を参照にして頂きたいのですが、一体、ケアレスミスは、どのようにエージェントやクライアント/顧客に受け止められるでしょうか?

ケアレスミスは、翻訳の素人でも指摘できる明白なミスです。例え、翻訳ターゲット言語が分からなくても、数字や記号の転記ミスはハッキリと指摘できます。もし仮に、貴方が、貴方の知らない言語への翻訳を翻訳者へ依頼したとして、納品された翻訳物に多くの数字や単位の間違いが発見されたら、貴方はこの翻訳物の品質についてどう感じるでしょうか? 「果たして正しく翻訳されているのだろうか?」そんな風に感じるのではないでしょうか?きっと、その翻訳物全てが信用できないと感じる筈です。また、容易に指摘できる問題にも関わらず、「何故見逃したのか?」、「ひょっとしてチェックしてないんじゃないの?」と、翻訳者を信用できなくなり、「この翻訳者はダメだ」と判断する事でしょう。

翻訳という仕事は、最終読者が分かり易い訳文を作り出す事だけを指している訳ではなく、それに絡んで発生するケアレスミスも含んだものだという意識を、翻訳者さんは持つ必要があります。翻訳技術を磨くのと同様に、ケアレスミスを無くす事にも努力する必要があると言う事です。エージェントであれ、ソークラであれ、顧客へ納品する翻訳物は、翻訳者が行った仕事の最終商品です。その翻訳品で翻訳者の仕事が評価され判断されます。「翻訳をした」だけでは仕事として不完全なのです。「翻訳が正しい」事を保証すると同時に、翻訳文にまつわるケアレスミスがない事も保証する事が、仕事として要求されています。

ツイートにも書きましたが、翻訳と言う仕事は、言葉の些細なニュアンスの違いなどを考えながら言葉や表現の選択をし、それを検証し、そして判断して訳文へ反映する、そんな緻密な作業を繰り返し行っているわけですが、ケアレスミスのような誰でも見つけられる問題さえも見逃してしまう翻訳者が、果たして良い翻訳をできるのだろうか?というのが、私のいつも考えている事なのです。なので、私はトライアル訳文にケアレスミスを見つけた段階で、それ以上の評価は行わない事にしています。分量にしてたった1~2枚の翻訳物なのにケアレスミスをしてしまう、また、ミスしたものを平気で納品してくる。これは翻訳のプロの仕事ではありません。

あなたは、どのようにケアレスミスを保証していますか?

このあたりの話は、12月18日に開催されるJTF翻訳セミナーの中で、より深くお話しするつもりです。

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たかがトライアル、されど…

トライアル(試訳)は、翻訳者にとって避けては通れないものではないでしょうか。エージェント相手でもソークラ相手でも、多くの場合、トライアルを課せられるのが実状だと思います。トライアルにパスする事で翻訳会社へ登録されたり、仕事を依頼されたりする訳ですが、一体、このトライアルにパスする基準は何なのでしょうか?

翻訳者さんの話しを聞いていると、この辺りの考え方に誤解があるように感じる事が多いです。トライアルの合否が「翻訳の善し悪し」だけで決定していると考えている方が多い。実際には「翻訳の質」がある基準レベルを満足していれば、それ以外の要素が判定に影響する事になります。そのトライアルの合否判定項目と基準は、トライアルを課している翻訳会社/ソークラがそれぞれ独自の考えで決めています。また、その項目の優先度や基準も案件によって変わるのです。

例として、業務力というものを見るケースもあります。指示した内容と違う事をすれば、翻訳以前の問題ですから、その時点で不合格判定するわけです。メールでのやり取りの仕方や内容から業務力を判断しているケースもあります。とびっきり翻訳の質が高いわけでもない限り、業務を進める上で手間の掛かる人よりは、飲み込みが良く、社会人としての常識を持った人と仕事をしたいと考えるのは、自然の事だと思います。

某SNSで話題になったのですが、「できるだけ早く」「なるはや」で依頼されるトライアルは、依頼している側が「急いでいる」事が明白ですよね。機動力がありフットワークの良い翻訳者を直ぐ欲しいという意思が読み取れます。この場合のトライアルの基準には、当然、ある基準の翻訳の質が求められるのと同時に、どれだけ早く正確な対応ができるか?という事も判断の基準になっています。また、こういうケースの場合、早い者勝ちの可能性もあります。条件に合う翻訳者が見つかれば、そのトライアルは終了という事です。後から出されたトライアルは評価される事もなく、不合格となるわけです。

つまり、トライアルの合否基準は、翻訳のみならず、色々な条件から成り立っていると言う事です。

じゃ、どうすればトライアルに合格するのか?

当然ながら最初に来るのは「翻訳」です。翻訳がダメでは、どんなに他の条件が合致しても合格するわけがありませんね。翻訳の技術を磨く事は、翻訳者にとっては永遠のテーマです。では、翻訳以外は?と考えると、それはそのトライアルがどういう条件で課されているのかを読み取る事です。何を判断されているのかを読み取る事だと思います。そして、それに合った対応をする。これは想像力勝負のところもありますが、経験を積むと段々と分かってくるところもあるでしょう。自分がその条件に合わせられないのなら、潔く諦めるなど、自分なりの判断基準も決めておく事が必要だと思います。

翻訳会社や案件で翻訳の基準も合否条件も違う。そんな性質のトライアルですから、不合格だからと言って気落ちする必要はありません。あなたの翻訳がその翻訳会社の基準に合わなかっただけ、もしくは条件が合わなかっただけなのですから。大切なのは、そのトライアルは何を条件としていたかを考え、それに対して自分は正しく対応できただろうか?という事を謙虚に反省する事だと思います。また、翻訳でマズかった事がなかったかを再見直しして、次のトライアルへの対策を立てる事だと思います。


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AutoHotKey というツール

最近、通翻クラスターの間で「AutoHotKey」がにわかにブームになりつつあるので、簡単にご紹介します。

AutoHotKey は、Windows上で行うキー操作、マウス操作を、スクリプトを書く事によって自動化できるフリーウェアツールです。以下のURLからダウンロードできます。

http://www.autohotkey.com

私のAutoHotKeyの主たる使い方は、EDIシステムにまつわる作業の自動化です。最近は、ウェブベースのシステム(EDI)が徐々に増え、ブラウザを使ってシステムにアクセスし、データを入力したり、検索したり、必要なファイルをダウンロードしたりする事が非常に多くなってきました。ただ、こういったウェブシステムの弱点は、それら一連の作業を自動化できない事にあります。この AutoHotKeyはWindows上で動作しているアプリケーション窓を指定し、その画面の指定された座標位置でマウスをクリックしたり、文字列を入力したりといった動作を自動でさせる事が出来る為、例えば、メールで連絡がきた注文番号を範囲指定し、指定したキーを押す事でEDIシステムへアクセスし、自動でログインし、そして指定した注文番号で検索を掛けて注文書を自動で印刷する…という一連の流れを自動化する事ができるのです。ただ、こういう使い方は翻訳者さんには余り必要がありませんよね。

それ以外の私の使い方は、余り多くはありませんが、ここでは2つご紹介します。

; ━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━
; ● Control + Alt + M to open Macro folder
; ――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――
^!m::Run D:\Dropbox\script\Macro

上記スクリプトは、指定されたフォルダーをエクスプローラで開くだけのスクリプトです。CTRL+ALT+M を押すと動作します。

仕事では、個々の翻訳案件を入れた親フォルダーを指定し、業務ファイルへ即アクセスできるようにしています。実際、業務で頻繁に使用するフォルダー、例えば、用語集フォルダー、マクロフォルダー、管理業務フォルダーなどをそれぞれに指定して起動できるようにしています。仕事のやり方をしっかりとルール化すると、もっと色々な事ができるようになります。例えば、翻訳案件ごとにユニークな番号を使って管理し、その番号で案件管理フォルダーを作るような場合は、案件番号を範囲指定して、指定されたキーを押せば、その案件フォルダーが開く…というような芸当も可能になります。

; ━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━
; ● 範囲指定された文字列をウェブ辞書で開く
; ――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――
; ↓ここのdを自分の使いたいキーに変えて下さい。 例) ^!f:: で CTRL+ALT+F
^!d::
Backup = %clipboard%
clipboard =
Send ^c
ClipWait, 1
if Errorlevel
{
MsgBox, 調べたい単語を範囲指定してから実行して下さい。
return
}
Run http://www.onelook.com/?w=%clipboard% ; OneLook
Sleep 200
; ~~以下のサイトを使用する場合は、行先頭の;を削除して下さい。
;Run https://www.google.com/#q=%clipboard% ; Google
;Sleep 200
;Run https://www.google.com/search?tbm=pts&q=%clipboard% ; Google Patent
;Sleep 200
;Run https://www.google.com/search?tbm=bks&q=%clipboard% ; Google Book
;Sleep 200
clipboard = %Backup%
return

このスクリプトは、範囲指定した文字列をウェブ辞書で検索するだけのものです。例えば、調べたい英単語があったら、それを範囲指定して CTRL+ALT+D を押すと OneLookで検索がされます。スクリプトには Google, Google Patent, Google Book のリンクも入れてありますので、必要に応じて文先頭の「;」を削除して使って下さい。同時に複数のサイトを検索する事も可能です。その場合、「Sleep 200」を生かして下さい。多少の待ち時間を入れてやらないと、開かないサイトも出るようです。

これらのスクリプトを、Google Drive で一般公開しておきます。以下のリンクをクリックしてダウンロードしてお使い下さい。

TerryTemplateScript

今、翻訳クラスターの間では、AutoHotKeyの辞書検索への応用が非常に注目されていますが、一方では翻訳にまつわる面倒な周辺作業へ応用する事で、業務の簡素化/自動化を行う事もできます。事実、私の仕事では、このユーティリティソフトのお陰で、事務作業効率がかなり向上しました。そう言う視点での活用も、今後考えて行きたいですね。


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JTFセミナーに登壇します

まだ、四ヶ月も先の話ですが、既に日本翻訳連盟ホームページの翻訳セミナーのコーナーに掲載されましたので、取り敢えず、拙者のブログでも告知しておきます。

以下の日時で、JTF翻訳セミナーに登壇させて頂きます。

日時:12月18日(木) 14:00〜16:40
タイトル:あなたの翻訳は大丈夫? ~翻訳者による品質保証を考える~(仮称)

具体的なセミナー内容は、まだ検討中です。この夏期休暇を利用して、細かく検討して行こうと考えています。

ターゲットは翻訳者さんをメインに考えています。個人で翻訳をやっていると、自分が本来保証すべき翻訳の品質って具体的になんだろう?と系列立てて考える機会はなかなかないものだと思います。私のエージェントとしての視点も絡め、どのような品質保証を意識し、実践したらいいのか?…そんな話を軸に色々と具体的な話が出来たらいいかな?と考えているところです。その手段として、拙作のWildLightも少しだけ触れる事になると思います。

とにかく、参加頂く皆さんに少しでも持って帰って貰えるものを増やすべく、あれこれ検討しようと考えています。乞うご期待!

また、事前に翻訳者さんにアンケートを採り、その情報も活用してセミナーを組み立てようと考えています。このブログで募集する予定ですので、みなさん、ご協力を宜しくお願いします。

では、開催時期が近づきましたら、また告知します。


翻訳の日本回帰

最近、何社かの翻訳会社の方とお話しする機会があり、話題は自然と単価、と言うか業界の状況についての話しになるのだが、その中で感じているのは「日本回帰」。

コスト下げを狙って新興国の翻訳会社と手を組み、例えば中国の翻訳会社や翻訳者が翻訳を行う事で、翻訳コストを抑えようとする動きが業界的に加速しているのだが、最近では「翻訳の質」と「機密情報流出」の問題から、そういった新興国の翻訳会社、もしくは翻訳者へ翻訳を依頼する事を嫌うクライアントが出始めているようだ。

この世界も、多分、最終的には二極化すると思われるが、コスト、コスト…ばかりではないクライアントの存在を知る事ができたのは嬉しい限り。

クライアントは、翻訳を依頼する翻訳会社には、1)新興国の翻訳会社と提携しているのか?、2)依頼する翻訳は、そう言った提携翻訳会社で行うのか?、3)その場合の品質保証はどのようにやっているのか?、4)情報漏洩/情報セキュリティの対策はどのようになっているのか?…程度は、確認しておいた方が良いと思う。