翻訳横丁の裏路地

We can do anything we want to do if we stick to it long enough.


昨年の意外な人気記事

昨年(2015年)一年間のアクセス解析をしてみたら、意外な記事のアクセス数が第2位になっていた。(第1位は「翻訳者の時給っていくら? [アンケート結果]」)

それは、なんと!

チェックシートは品質保証にあらず

だった。

この記事は2014年5月に公開したもので、すでに1年半が経過しているが、昨年の中旬頃からジワジワとアクセス数が増加してきた。ひょっとするとISO17100が関係しているのかも?しれない(笑)

チェックシートには大きな誤解があると感じている。特に企業内では、品質保証の一種の安心材料として取り扱われたり、品質の高さをアピールするための宣伝文句に利用されたりしているが、その運用と位置付けが正しく行われているかは、少々疑問がある。

翻訳者に対して、チェックシートに沿ったチェックの実施と、そのエビデンスとしてチェック印を付けたチェックシートの提出を依頼しているケースを昨今耳にするが、チェック項目ごとにチェックマークをつけるスタイルだとすると、チェックシートの位置付けを間違っている可能性がある。理由は、上記記事を読むと分かっていただけると思う。


仕事改善の12の視点

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翻訳にともなう周辺作業を改善して、本来の付加価値である翻訳へもっと時間を投入しましょう…という話は以前よりしていることですが、仕事や作業の改善を具体的なイメージに繋げられない方が多いようです。そこで、私が仕事を行っている中で意識している12のポイント(視点)を以下に示します。翻訳という仕事に関わらず、会社勤めの人にも適用できる考え方だと思いますので、少し裾野を広げた書き方にいたします。

1.その仕事をなくせないか?(目的の棚卸)

自分が行っているすべての業務(仕事、作業)について、「なぜ行っているか?」の理由や目的を自分に説明してみてください。もし、目的を考えるのが難しいようならば、「その仕事をなくせないか?」と自分自身に質問してみてください。そうすると言い訳のごとく理由が頭に浮かぶはずです。ただし注意しなくてはならないのは、「エージェントに指示されたから」とか「上司に言われたから」などの「指示」を理由としてはいけません。純粋に、その仕事や作業を何の目的で行っているかを説明してみてください。

明確に説明できましたか?もし、説明できない仕事があれば、それは「改善の余地がある仕事」となります。あなたが「やらなくてもいい仕事」かもしれません。そういった「目的不明な仕事」をリストアップして、それぞれ目的をはっきりとさせるところから改善に繋げます。

2.目的に合った方法か?

目的がはっきりしている仕事に対しても、その目的を実現するために行っている仕事や作業に要するリソース(時間・お金・人など)が見合っているか?という視点で検討します。考え方としては投資リソース対効果を高めることを意識します。具体的な着目点は、この後に示す項目です。

3.情報の転記作業になっていないか?

転記作業ほど馬鹿げた仕事はありません。人間が介在することで付加価値とならず、むしろ仕事の品質を下げてしまいます。(投資する価値なし)

  • なぜ、その情報がそこに必要なのか?
  • どうして、その情報を転記しているのか?
  • どこの情報をどこへ転記しているのか?
  • やめられないか?
  • 機械的に行う方法はないのか?
  • 少なくとも人間の情報認識に頼らない転記方法に移行できないか?

最終目標は、常に「転記作業なし」です。可能な限り、機械的に情報転記が行われることを視点として、仕事やシステムを見直します。

4.タイミングは最適か?

仕事の流れの中で、その仕事や作業をそのタイミングで行うのがベストであるかを考えます。順序を変えることで作業時間を短縮出来たり、間違いを少なくできたりしないかを意識して、仕事を見渡します。

5.誰がやったら最適か?

ひとり完結の翻訳者の場合、関係なさそうに感じると思いますが、これはエージェントやソースクライアントまでを意識して考えるという意味です。「本来、誰がやるべきか」を意識する良い機会になります。(べき論の確立は交渉で必要な理論武装に繋がる)
翻訳会社の中の人は、部署や担当者を意識します。その仕事や作業をより正確に速く行えるのは誰か?どの部署か?という視点で仕事を分析します。

6.もっと速くできないか?

同じ仕事を常に同じ質で「速く」完結させることを考えたとき、何が障害になっているのか?を考えます。速くできない理由を考え、それらに対して改善を図ります。

7.何かと一緒に行えないか?

他の仕事や作業を行うときに、同時に行うと仕事自体をなくせてしまったり、時間を短縮できたりしないかを考えます。例えば、同じ書面を参照しているのに、わざわざ作業ごとにその書類を取り出していたのを、同時作業にすることで取り出しを1回にするといったアプローチが挙げられます。

8.いつも探し回っていませんか?

情報を探すのに「え~っと?」と、毎回、1から探し回っていませんか?仕事に必要な材料を探すのに、脳内で「考える」ようではダメです。すべてをブックマークしたり、インデックス付けしたりして、即情報へ行きつけるように情報管理を改善しましょう。

9.他の人はどうやってる?

井の中の蛙大海を知らずではないですが、ひとりで考えることには限界があります。私が良く使う言葉に「自分の当たり前は他人の宝」というものがあるのですが、これは逆もまた真なりで、他人が行っている当たり前のことが、自分に新たな気付きを生んだり、大きな仕事の改善に繋がったりする。他の翻訳者さんはどうしているんだろう?と興味を持って聞いてみるのは、とても良い結果を生み出します。翻訳会社の中の人であれば、他の職場でのやり方、他社でのやり方なども参考とすべき情報になります。

10.人間の注意力に頼っていませんか?

「注意してやろう」「気をつけるから大丈夫」なんていう根性論的仕事のやり方はダメです。絶対にミスをしますし、そのミスを取り戻すために多大なリソースを無駄に投入する結果になったり、信頼を失う結果になります。「注意力に依存する仕事」を洗い出してみてください。そしてそれらの仕事に対して、1)注意しなくてもできる仕事にできないか?、2)機械的にチェックできないか?、3)機械を使って人間の注意力を高めたり、負担を低減できないか?(WildLightの発想)を考えて、改善しましょう。

会社の中の人に良く見られるのは、システムのまずさを「運用で逃げる」という対処方法です。「運用」とは人間の意識や能力に依存する対処方法で、絶対にミスが出ます。「運用」という言葉に騙されず、誰がやってもミスが出ない方法になるよう改善しましょう。

11.「確認」をなくせませんか?

「確認」を無くすという意識を持つことが大切です。特に、機械やソフトウェアが出力する情報を人間が確認するという作業を定常的にやっていませんか?もし、そうでしたら、その理由を自分へ説明してみてください。例えば、前工程で人間によるデータ入力(転記作業)が行われており、不確実性を含んでいるために(後工程で)確認作業をしているのであれば、その前工程の作業で「完璧」に完了するように作業改善を行えばいいのです。機械がミスするかもしれないからという理由ならば、機械を完璧に仕上げればいいのです。

「確認」という作業は、一度追加すると問題の本質を見えなくしてしまう性質の悪い作業なので、注意が必要です。上流に汚染源があるのに、大きく広がった下流で浄化するには大きなリソース投入が必要になる。「確認」という作業を耳にしたり目にしたら、すぐに「何を確認しているのか?」「確認していることは、どこで作業されているのか?」「なぜ、そこで確実に完了できないのか?」と考える癖をつけましょう。

12.我慢してやってないか?やりづらくないか?

大切なのは「面倒くさい」と感じる気持ちを大切にすることです。やりづらくて煩雑な作業を繰り返して行っているのに痛みを感じないことに危機感を感じてほしい。人間の適応能力のお陰で不感症に陥っていないか、自分の意識の再点検も必要です。「やりづらい」とか「我慢してやってる」と感じられること自体、とても素晴らしい事です。そう感じたら、どう簡素化するかを考えればいいだけです。

みなさんの仕事を見直す一助になれば幸いです。


年の初めはWildLight

ワードアドインマクロ「WildLight」のセミナーが1月と2月に予定されていますので、ご紹介いたします。今年は何か新しいことに手を付けてみたい・・・ツールに手を出してみたい・・・という方は、お手頃なWildLightから始めてみてはいかがでしょうか?(笑)

  • 2016年1月31日(日) 東京ほんま会主催
    WildLight中級セミナー
    過去、東京ほんま会でWildLight初級セミナーを実施してきました。今回は既にWildLightをお使いの方を対象に、実際に自分たちの抱える問題を解決するために、ワイルドカードやWildLight特殊コマンドを使って辞書を作り、WildLightで処理していくワークショップスタイルで進めていきます。
  • 2016年2月27日(土) サン・フレアアカデミーオープンスクール
    WildLight初級セミナー
    昨年もオープンスクールで「WildLightで効率アップ&品質アップ」というクラスを担当しましたが、今年は単純たるWildLightの使い方教室です。メニューにある機能と準備された辞書ファイルで実現できる機能をデモンストレーションしながら解説します。これからWildLightを使おうと考えている方にぴったりのセミナーです。

なお、WildLightは、拙者の別ブログ「WildLight」で無料でダウンロードできます。


2016年を迎えて

みなさま、あけましておめでとうございます。
本年も懲りずにお付き合いください。

さて、今年も年頭に目標を書き留めておきたいと思います。昨年は本業の変化に伴い、思うような業界活動ができず、かなりフラストレーションを溜め込んだ一年になりました。その反省(反動?)を踏まえ、今年は、やりたいことを極力優先して活動していきたいと思います。また、今年はいろいろな意味で自分にとって「勝負の年」と位置付けていて、昨年に手を付けられなかった陰のミッションも含め、あれこれと動きを速めていきます。

と言うことで、今年は三本柱ではなく、五本柱で目標を立てます。まず、昨年の三本柱は今年も継続とします。そして新たに二本を加えます。

  1. WildLight
    昨年上期にあちこちで紹介する機会を多く持たせていただきましたが、今年も年初に、東京ほんま会サン・フレアアカデミーのオープンスクールでWildLightを紹介する機会を持たせていただきます。今年は、もう少し分かり易く、使い易いツールになるよう、開発とアップグレードへリソース配分を多くして挑もうと考えています。いろいろと盛り込みたい機能ややりたいことが脳内にたまってきているので、今年はメジャーバージョンアップがあるかもしれません。
  2. ツール開発
    VBAとAutoHotKeyを中心としたツール開発が主体になると思います(一説には息子と話が合うようにC#やらC++を使うかもしれないという話もある(笑))。どちらにせよ、ちょっとした作業改善に役立つ小物ツールは、実業務上でも多数作成しているので、一般向けに使用できるものがあれば、公開していくつもりです。
    また、冗談でツイートした身内対象?の「AHK活用検討会」みたいなものを合わせ技でやるかもしれません。
  3. 東京ほんま会
    勉強会のグループとして他に翻訳勉強会「十人十色」も絡んでいますが、「個人翻訳者のための勉強会」というグループの性格から、翻訳会社側にいる私は、今後、主体的に関わらず、頼まれたら協力する程度のスタンスで関わっていくことに方針変更しました。
    したがって、今後はさらに東京ほんま会へ主軸をおいて活動していきます。昨年はいろいろなテーマでセミナーや勉強会が開催され、とても充実したものになったと感じています。今年もメンバーと相談しながら、楽しく役立つセミナーを開催していきたいですね。
  4. 語学学習・翻訳学習
    あえて目標としてあげなくてはならないほど、危機感を感じています。昨年一年を含め、実務に関与することが少なくなったことで、あらゆる能力と知識が低下してきている状況。これではいけないと、勉強に励みます。ここにリソースを一番多く投入しなくてはならないかもしれません。
  5. 陰のミッション
    何をするのか?(笑)・・・公表できないものの、ちょっと遊びも含めた真面目なミッションです。いずれバレちゃうかもしれませんが。

今年は以前のように、翻訳関連イベントへの出現率を上げようと考えていますので、もし見掛けましたら、お気軽に声を掛けてください。また、WildLightを含め、協力できることがありましたら、お気軽にお問い合わせくださいませ。
今年も一年、よろしくお願いいたします。